少年期[503]速攻で慣れた初心者
「結構あれだな、考えて賭ければ当たるもんだな」
「そうね。十五回目にして既に慣れているあなたを見ると少し心配よ」
ルーレットを始めてからまだ十五回。
しかしどこにチップを置けば何倍になって返ってくると覚えたゼルートはなんとなくこう賭ければ良いだろうと分かり、その結果は十二勝三敗。
圧倒的な利益を得ている。
少々テーブルのメンツは変わっているが、それでもゼルートが始めるより前からその責に座っている者もいる。
だが、それでもゼルートと比べて勝率は悪い。
同じゼルートと同じ回数賭けたアレナは十一勝四敗。
ゼルートに一勝及ばないものの、十分な利益を獲得している。
「はっはっは、兄ちゃん中々儲けてるじゃないか」
「偶々ですよ。ビギナーズラックってやつでしょう」
「そうかもしれないねぇ~な。ただ、それでも十分に稼げてるぞ。まだ賭ける気か?」
「はい。まだ始まって三十分も経ってないんで、もう少し遊ぼうかと思います」
ゼルートに話しかけて来た三十代半ばの男は明らかにカジノで遊び慣れている雰囲気を放っている。
そんな男はゼルートとアレナがルーレットに加わる前から席についており、二人の勝ちっぷりを見ていた。
(ただの美人なねーちゃんを連れたボンボンかと思っていたが、素人ぽかったのは最初の数回で十回目以降から明らかに雰囲気が変わった。というか、マジでちょっと勝ち過ぎじゃないか?)
二人の勝率はあり得なくはないのだが、それでも少し不正を疑ってしまうくらいには儲けている。
だが、それもそのはず。
二人の肩にはラームの本体と分裂体が肩に乗っており、複数人からその人が持つ運を奪っていた。
一つのテーブルに同じ者が居座り続けることは無く、何人か入れ替わりで参加している。
ラームはその者達からも運を奪い、ゼルートとアレナの勝利に貢献していた。
「なんとなく遊び方も解ってきましたし」
ゼロのマスに玉が乗る確率を除けば六分の五で勝利する方法で賭け、まともや勝利する。
「うし、また勝ったぜ」
「私もよ。どうやら今日は中々ついている様ね」
アレナはゼルートより勝率が低い三分の二の割合で勝つ方法で賭けたが、赤の二十一のマスに玉が乗り、見事勝利。
こうして二人の資金は既に四倍近くまで膨れ上がっていた。
「さて、次はどこに賭けようかな?」
ゲームに参加している者達もゼルートとアレナの勝率が高い事に薄々気づき始めている。
だが、遊び人としてのプライド(笑)としてルーレットで他人のマスに後から追うように置くのは許せない。
なので本当に偶々自分の考えが重なる時のみしか他者がゼルートやアレナの置く位置とチップが重なることは無い。
ディーラーである者は二人がズルをしているのではと疑い、イカサマやぶりの為にカジノ内を見張っている職員に目を向けるが、職員から返ってきた返事はノーだった。
それもその筈であり、ラームは多くの力を身に付けているが、それでも元は自分の力を良く理解していなかったので強者から身を隠すのに特化していた。
なので自分の姿や力を隠すのは容易な作業。
二人は基本的に赤や黒、三分の一、それ以外の賭け方をしているが、ゼロのマスにチップを置くことは無かった。
それ故に二人がゲームをしている間に玉がゼロに落ちた時は賭けたチップが全額没収される。
しかしその前に散々勝っていた二人がその一回で無理に勝ちに行こうとすることは無く、冷静にまずは失った分のチップを取り返していく。
そして二人がルーレットを始めてから約五十分、その間にそのテーブルでは何人もの人間が入れ替わりしたが、二人の勝率が九十パーセント切ることは無かった。
「ん~~~……これでラストにするか」
「あらそう? それなら私もこれがラストね」
ゼルートはお得意の六分の五の勝率方法で攻め、アレナは縦横の三エリアを二つずつ埋めて勝負。
そしてその結果……玉が落ちたマスが赤の一。
「ふーーーーっ、ラストで勝てたのは気分が良いな」
「そうね。次のゲームに行きましょう」
「そうだな。今日一日はギャンブル尽くしだ」
結果的に圧勝した二人はご機嫌な様子で席から離れ、次のゲームへと移る。
二人がテーブルから離れた事で、プレイヤー達とディーラーは謎の安心感を得た。
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