少年期[504]ギャンブル依存症
「結構儲けたな」
「そうね。これだけの稼ぎ、Aランクの冒険者でもダンジョンに潜らなきゃ得られないんじゃないかしら?」
ダンジョンには確かに夢があるので、一回の冒険でゼルート達が今日稼いでしまう程の金額を稼げるかもしれない。
ただ、それでも命の危険はあるし消費する道具の補充等を考えればカジノで儲ける方がよっぽど楽だろう。
「確かにこう……ドキドキ感はあるな。良い意味でのドキドキ感」
「そうね、それは否定しないわ。でも、随分と冷静だったわね」
「ん? だって別に焦るような状況でも無いだろ」
「そうだけど、一回負ければそれを取り返そうと思ってしまうのが一般的よ」
アレナは今でこそゼルートのお陰で冷静さを保てているが、一度まだゼルートと出会う前にカジノに行ったときは冷静さを保てず、結局持ち金が半分になってしまった苦い経験がある。
その時は一度失ってしまったチップを一度で取り返そうとし、手痛い失敗をしてしまった。
それはカジノでは誰もが通る道なのだが、ゼルートがそこを通ることは無かった。
「あぁ……まぁ、確かにそれは解らなくもない感覚だ。でも、俺達は今日ここに遊びに来てるんだ。金儲けの為に来てる訳じゃ無い」
そう言いながらもラームの能力を使ってちゃっかり儲ける準備はしていた。
だが、それでも今日カジノには遊びに来たという思いはある。
(確かにあんまり金に余裕が無い状態で来て、一回で大きく負けちゃったら次で挽回しようと思ってしまうだろうな。俺だって今ほど大金を持ってなかったら正直分らない)
それに、ゼルートに負けた分のチップを取り返したいという思いが完全に無い訳では無く、少額ではあるが数回ほどターンを重ねて取り返そうと考えていた。
その結果、ラームのお陰もあって無事十二分な利益を出すことに成功。
「確かに、これだけ大量のチップがあったら焦る必要はないわね。でも、偶にそこそこ大金を賭けていたわよね。何か狙いでもあったの?」
確率高めの賭けではあるが、それでも何度か大金を賭けたゼルート。
だが、それはゼルートにとって危ない橋を渡る行為では無い。
「そういう時こそ、ラームが集めてくれたあれの効果が出てるのかどうかしっかり解るだろ」
「なるほどね。ゼルートが大金を賭けた時は全て勝っていたものね。私の時も同じだったし。しっかりと集めた分の効果は発揮されていたと証明された」
「そういう訳だ。まっ、他のギャンブラー達には少々悪い事をしたけど、ルーレットなんだから賭け方によってはそこまで影響は無い……よな?」
「ん~~……まぁ、ゼルートの様な勝率が高い賭け方をしていればそこまで負けることは無いだろうし……そんなに影響は無い筈よ」
「そりゃ良かった。ここにいる客は裕福層ばかりだから、あんまり変なイチャモンを付けられたくない。後々面倒な事になるかもしれないし」
だが、ゼルートはディーラーとイカサマを阻止する為の従業員とのやり取りを見ており、ラームの力がバレていない事は分かっている。
なので例え他人に難癖を付けられようと、証明できる者はいない。
そもそもな話、ここに通っている富裕層な大半はゼルートと同じ遊びがメイン。
ギャンブルで稼ごうと思っている者は殆どいない。
ただ、高位の権力を持つ者。もしくはその権力を持つ子供がギャンブル依存症になっている例が無い訳では無い。
「それなら、もうギャンブルはここまでにする?」
「ばーーーか、まだ始まったばかりだろ。がっつり楽しむぞ!!!」
「やっぱりそうよね」
心の中ではもう十分に儲けたのだし、現金に換金して帰っても良いだろうという気持ちが半分ぐらいあるが、やっぱりもう半分は気楽にギャンブルを行える喜びがアレナにはあった。
そして二人が次に選んだギャンブルはトランプを使ったゲーム。
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