少年期[501]勝ち過ぎるなよ

目的のカジノへとやって来たゼルート達はその光景に圧倒されながらも、中へと入って行く。

いつもならここで警備をしている兵士や雇われ冒険者に止められるかもしれないが、カジノに入るに相応しい格好をしている事にプラスして、少々強面な人間態のゲイルがいることで入店にストップをかけられること無く中へと入れた。


「……なんか、カジノの中に入ってもちょいちょい見られてるな」


街中でいつもの冒険者服で行動している時と比べればガン見される割合は少ないが、それでもチラチラとゼルート達の方を見てくる客は多い。


「やっぱりみんなが美形だからか?」


「ふふ、そう言ってくれるのは嬉しいけど、褒めたって何も出て来ないわよ。そうね……一緒にいる組み合わせが珍しいんじゃないの?」


「・・・・・・つまりどういう事だ?」


アレナは周囲の客を見渡し、自分の考えが正しいかどうか確認しながらゼルートに自分達がチラチラと見られている原因を話す。


「まずは見た目が子供であるゼルートが一番先頭を歩いている」


「別に見た目だけじゃなくて中身も子供なんだが」


「普通の子供はもう少し可愛げがあるわよ。それで私は二十手前のそこそこ容姿の良い女性」


ここで普通の女性と言わないところにゼルートは好感を持てるなと感じた。


(アレナレベルの美人が普通だったら世の中どれだけ美人な人が多いんだって話だ)


前世ではアレナレベルの美女はめったにおらず、それこそ直ぐにネットで騒がれるほどにレベルが高い容姿を持つ。


「そして狼の獣人で年齢は十代半ばの美女であるルウナ」


「……そうストレートに言われると少し恥ずかしいな」


「それにラルという十代前半の美少女」


「……少しルウナさんの気持ちが解かります」


アレナからストレートに美女、美少女と言われた二人は少し照れてしまう。

それに対してゼルートは二人の気持ちに物凄く共感できた。


(そうなんだよなぁ~。お世辞抜きの褒め言葉は確かに嬉しいくはあるんだが、アレナみたいに正面からストレートで言われると少し恥ずかしくなる)


過去に数度体験したことがあるゼルートはウンウンと頷きながら二人の気持ちに同意する。


「そして少々強面だけで十分に女性の目を惹き寄せる容姿を持つゲイル」


「あまりそういう自覚は無いのだが……そういう見た目でしょうか?」


「……うん、見事なまでにイケメンに分類される容姿の高さだ」


「ゼルートの言う通りよ。だから多くの人が凝視こそしなくてもチラチラと見てしまうのよ」


「なるほど、納得出来た。んじゃ、必要な軍資金を換金するか」


現金をチップに交換出来る場所へと向かい、ゼルートはそこで一人金貨十枚分ずつチップに交換する。

その見た目によらない太っ腹さに店員は少々面食らいながらも好感をすませ、ゼルートのケースとチップを渡す。


『ラーム、体を五つに分けられるか?』


『それは出来るけど、体を分裂させたら出来ることが減っちゃうよ』


『別にこれから戦う訳じゃ無いんだからそこまで手段は求めないよ。ただ……の能力が使えれば良いんだ。……を集めて欲しくてね』


『……なるほど! 何となく分かった!! それぐらいなら大丈夫だよ!!!』


『おっ、マジでか。それなら早速頼むよ』


『了解!!! 任せといて!!!!』


ゼルートから指示を預かったラームは体を五つに分裂させ、他四人の肩に乗った。

そしてゼルートは四人に顔を近づけるように合図を送り、小声で忠告する。


「出禁になったらつまらないから、あんまり勝ちすぎるなよ」


「……ゼルート、イカサマは普通にバレるわよ。というか、そんな器用な事も出来ないのだけど」


「そんな事はしないって。まっ、卑怯な手ではあるかもしれないけど。とりあえず、全員ギャンブルを楽しんでくれ。別に消えても大して痛くない金額だからな」


「ゼルートからすればそう思えるのでしょうね。お言葉に甘えて遊ばせてもらうわ」


金貨十枚分のチップ。

カジノのゲームを楽しむには十分な金額が準備できており、五人はそれぞれカジノを楽しみ始めた。

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