少年期[491]その名が与える恐怖
「はぁーーー……もういいや、そこまで無様な姿を見たらなんか気が済んだ。これ以上イジメるのも可哀そうだしな」
公衆面でのお漏らし。
貴族が屈辱と感じる場面は他にもあるだろうが、お漏らしはその中でもトップクラスに入る屈辱。
そんな姿を見たゼルートの怒気や殺気は自然と収まっていく。
「おい、そこの護衛の兵士さん達……俺はゼルート・ゲインルートって名前だ。聞き覚えのある奴はいるか」
ゼルートの問いに全ての兵士達が首を縦に振る。
Bランクの冒険者達や列に並んでいる者達もゼルートの名に聞き覚えがある。
だが、貴族やそれを守る兵士、騎士達は別の意味でゼルートの名に恐怖していた。
まだ五歳という年齢ながら、王都パーティーで変則的な三対一という決闘で自信の両親が持つ全てを賭け、おおよそ貴族たちが予想出来ない勝ち方で勝利を収めた子供。
その話は今でも語り継がれており、頭の良い貴族はよっぽどの理由が無い限りはゼルートやその家族に手を出そうとは考えられない。
そしてこの場にいる貴族達はゼルートの現時点での最高功績である悪獣を単独で討伐したという話も、嫌でも信じなければならなくなった。
「今回はまぁ・・・・・・あれだ。別に俺に言われた言葉って訳じゃ無いから、あんまり俺が口を挟むのは良く無いんだろう。でもなぁ……誰にだって耳に入ってはダメな禁句があるんだよ」
怒気と殺気は確かに消えていた。
だが、見えない何かが兵士達の方にのる。
今ここで目を逸らしてはいけない。
そう思わせるほどの圧がゼルートから溢れている。
「それを良く考えて、そこのガキに言い聞かせろ。そろでもそいつが言う事を聞かないなら、お前らの雇い主の報告しろ。こいつのせいでゼルート・ゲインルートと敵対しそうになりましたってな」
「「「「「「は、はい!!!! かしこまりました!!!!」」」」」」
まだ貴族の中にはゼルートを大したことは無い冒険者だと下に見ている者は多いが、それでもこの場にいる貴族だけはもう今日の光景が一生頭から離れなくなる。
「勝手に割り込んで悪かった」
「いいっていいって、気にすんな。寧ろスカッとしたからこっちとしては割り込んできてくれて大歓迎だったよ。まっ、でもあれだ……あんまり無茶だけはしない方が良いぜ」
頭を下げて謝って来たゼルートにBランクの冒険者は全く気にしてない、寧ろ嬉しかったと返す。
面倒ごとを自分達に変わって始末してくれたゼルートに対して感謝の言葉しかなかった。
だが、だからこそゼルートの生き方に少し危うさを感じ、気休め程度だが助言をする。
貴族に逆らった冒険者の殆どが碌な目に合わない。
ゼルートが普通という枠の言葉に収まる者では無いと分かっているが、それでも心配してしまう程の強気な態度。
権力があるからこそ、自分達冒険者と比べて出来ることが多い。
それを伝えたい冒険者達だったが、それはゼルートも良く解っていた。
「あぁ、覚えておくよ。基本的には話し合いで解決するつもりだ」
そう言いながら元の場所に戻っていくゼルートに冒険者達はある種の憧れを感じる。
(あれだな、自分の言葉を曲げることなく絶対に貫き通して生きていくっていう思い……いや、執念か。そんなものが感じられた。そんな強気な態度する、あいつにとっては普通なんだろうな)
相手が誰であろうと自分の考えを貫き通す。
それは絶大な力を持つゼルートだからこそ貫ける考えであった。
「おかえりなさい。もしかしたら手を出すかと思ったけど、そうならなくて安心したわ」
「なら、俺も少しは大人になったって事だな。でもゲイルがいなかったらもう少し粘ったかもな」
「それは無いかと。ゼルートさんが怒気や殺気を発すれば、どちらにしろ相手は屈していたかと思われます」
ゲイルとしてはゼルートに頼られたことは嬉しかったが、正直自分はいなくても良かったのではと思っていた。
「……ゲイルの言う通り、ゼルートの圧に耐えられる者はそうそういないだろう。これから一人で対処出来るんじゃないか?」
「何言ってるんだよ。一番は平和的に解決することだろ。そんなの出してたらちょっと脅迫に近いだろ」
ルウナの言う事も解からなくは無いが、少しだけ考えが穏やかになってきたゼルートとしては、話し合いで解決するのが一番という結論だ。
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