少年期[487]冒険の時間が減る
「ふぅーーーー、順調に……順調過ぎるほどに良いペースね」
「そうだな。ゼルートの規格外の魔力のお陰だ」
「褒めたって何も出ないぞ」
ゼルートはただ魔力を消費してトラックのタイヤを動かすだけでは無く、光魔法のライトを使って日が落ちてきても問題無く進み続けた。
そのお陰で今はゴージャルの一つ手前の街で宿に泊まることが出来た。
「別にそういう意とは無いわよ。でも、道ですれ違った人は皆驚いていたわ」
「そりゃそうだろうな。土魔法であんな移動をしてるのは今のところ俺だけだろうし」
ある程度努力を積めば誰にでも出来る移動方法だが、魔力の残量や魔力回復のポーションの保有量を考えればそう簡単にトラックによる移動方法を取れないパーティーが多い。
しかし、道中ですれ違ったBランクの魔法専門の冒険者は運良く土魔法を習得しており、ゼルートから少しの指導を受けた。
Bランクまで上り詰めた魔法専門の冒険者ということもあって魔力の保有量も多く、数時間ほどは問題無く走っていても問題無い。
運転方法の感覚もゼルートから教わり、その冒険者は完全に土魔法により生み出したトラックを乗りこなせるようになった。
ただ、勿論ゼルートは無料で教えた訳では無く、きっちりと授業料は頂いていた。
ゼルートが現在滞在している街はゴージャルの近くという事もあってかなり栄えている。
そんな街の中でも中の上程度の宿に泊まっており、魔法専門の冒険者から貰った授業料はその宿泊費に消えた。
「魔力の保有量はそう簡単に増やせる物では無いからねぇ~~~・・・・・・ゼルート、あなた錬金術だってそこそこ出来るんだからもしかして、あのトラックの魔道具バージョンとか造れるんじゃないの?」
「・・・・・・まぁ、無理では無いな」
自動車の開発。
前世の世界で動いていた自動車の様な複雑な造りでは無く、もっと単純な作業で造れる。
しかし、短時間で造れる物では無くそもそも、街中ではまず使い道は無い。
それなら街と街を行き来する為に使う? それが一番の使い道だろう。
だが街の外に出れば当然の様に自分達を襲う敵が存在する。
そんな相手に対しても有効な自動車を作るとなれば……当然使用する素材やランクの高い鉱石や魔物の素材が必要になってくる。
(色々と手間と材料費を考えれば……安い奴でも金貨何十枚……いや、とりあえず白金貨一枚? とりあえずそれぐらい値上げをしないとアホみたいに依頼が来そうだ)
元々自動車という乗り物の知識を多少は知っておかなければ欠陥品が生まれてしまう。
「目立つことに関してはもうあんまり気にしないけど、俺の冒険の時間を奪われるのは勘弁だ」
「あのような乗り物を造れると知られれば、貴族や商人から制作依頼が殺到するのは当然で規模が大きいクランからも制作依頼があるかもしれないな」
「そういう事だ。片手間で造れる物じゃない。必要なパーツも要望によってはそう簡単に集まらないだろうしな」
材料を用意してくれるなら時間はそこまで掛からないが、材料までこちらで用意するとなるとそれ相応の時間が掛かり、自分の自由時間が大幅に削られてしまう。
「そもそもな話、別に金に困ってる訳じゃ無いんだ。依頼を受けて金を稼いで、倒した魔物の素材や魔石を売って金を稼いで、盗賊をぶっ潰して金を稼ぐ。基本的にはそれで十分だ」
「一つ目と二つ目は合ってるのだけど、三つ目は……それは依頼に入る案件じゃないの?」
「でも、俺達って昇格試験以来、ギルドを通して盗賊団を倒したことあったっけ?」
「・・・・・・そうね。確かに依頼として受けたことは無かったわ」
盗賊団を討伐した後、ゼルート達は最寄りの街で討伐の報告をしているが、それでもギルドから依頼を受けて盗賊団を討伐したことは無い。
「やっぱり依頼を受けてから盗賊を討伐した方が良いのか?」
ルウナからの質問にアレナは当然とばかり頷く。
「そやそうよ。その方がギルドから評価されて信頼にも繋がる。まぁ……その辺りを私達のリーダーは重視してないから問題無いといえばそうかもしれないけど」
「別に毎回報告はしてるんだからそれで良いだろ? 盗賊団の討伐依頼って基本的には複数のパーティーで討伐するんだから儲けが減るじゃん。それを考えるとやっぱり俺達だけで討伐する方が良いだろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます