少年期[478]好きな異性のタイプは?
クイーンエレクトビーの解体を終え、街に戻る時の道中にロークはルウナに知りたかった内容を訊いた。
「あ、あの……ルウナさんの好きな異性のタイプって、どんな方ですか?」
「ん? 好きな異性のタイプか?」
ロークの問いが耳に入ったジーナとエリエットは元々ロークの思いを知っていたので、特に茶化すことは無く二人の世界に入らず、聞こえてない風で恋愛には全く関係無い会話を始める。
「ん~~~~……あまり考えたことが無いな。今は冒険することしか頭の中に入って無い」
「そ、それは今は特に恋愛をする気は無いと言う事ですか?」
「そうだな、これから数年ぐらいはそういった感情は湧かないんじゃないか?」
ルウナの答えにロークは残念そうな表情になるも、どこかホッと一安心したような表情にもなっている。
(そ、そうなのか。やっぱり今は恋愛になんてしてる暇というか、考えは無いんだ。それは僕なんて眼中に無いって事かもしれないけど、でもあと数年はルウナさんに彼氏が出来る心配は無いって事でもある)
その数年の間に自分がどれだけ強くなり、ルウナにアピール出来るかが肝心。
「ただ、やはり条件としては私よりも強いのが第一だ」
「ルウナさんより強い事が……」
今よりも強くなろうという思いは、冒険者になった時から変わらない。
しかし、ルウナよりも上の強さ。
それを手に入れた自分をイメージ出来ない。
ルウナの実力は既にBランクに入っており、一部ではAランクに届いているのではと言われている。
(現時点での差を考えれば……正直追いつけるイメージが出来ない)
やる気が出てから直ぐに絶望が押し寄せたロークの心をなんとなく理解出来たジーナとエリエットは同情していた。
多少間を空けて歩いているとはいえ、ロークとルウナの会話の内容は全て耳に入っている。
(る、ルウナさんよりも上の実力って……どれだけ鍛錬を積めば辿り着けるんだろう)
(・・・・・・ロークには悪いが、正直無理な気がする。いや、可能性がゼロとは言わないが、冒険者としてのスタート地点が違い過ぎる)
二人がロークがルウナの強さに追いつくのは無理ではと判断した理由は幾つかあるが、一番大きいのはお互いのパーティーの環境だった。
ゼルートは常に強い相手や魔物と戦いと思っている訳では無いが、冒険の流れ的に強い相手と戦う機会が多い。
それに対し、ロークが所属するパーティーは所属しているパーティーの力量と比べて強い魔物と戦う機会はあるかもしれないが、ゼルートのパーティーが遭遇する相手と比べれば弱い。
(ルウナさんに追いつくってなると……休む間もなく魔物と戦い続けなきゃ無理だよね?)
(百歳以上のエルフならば同じスタートラインに立っているかもしれないが、寿命が短い人族では身体能力が落ちてくるのも早い。強くなるならば短期間で一気に。しかしそんな都合の良い方法など存在しない・・・・・・いや、あるにはあるか。だが、それは本当に可能性が低すぎる。全く当てにならないだろう)
百歳以上生きているエルフであっても、今のルウナより実力が上であるとは限らない。
百歳以上、戦いに身を置いているなら話は変わってくるが、伸びしろが大きいルウナはまだまだ強くなる。
エリエットが思い出した方法は、まずある道具を見つけなければ話にならない。
その道具はダンジョンの中を探索し続けても、本当に数える程しか見つからず、一度も発見されたことが無いダンジョンも多く存在する。
そんな貴重な道具が安い値で手に入る訳が無く、物によってはゼルートが持つラッキーティアよりも高値が付く。
(オークションにその道具が出品されれば・・・・・・想像を絶する争奪戦が行われるだろう)
「まぁ、私より強くても性格に難がある奴は遠慮したいけどな。そういうロークはどうなんだ?」
「えっ、ぼ、僕ですか!? ぼ、僕はその……何と言いますか、お互いに背中を任せられて、ちょっと男らしい人が好み、ですね」
「ほぉ~~~、とりあえず自分の気分が沈んでいる時に頼れる人が好みという事か?」
「ま、まぁそんな感じですね」
ロークなり少しはあなたに好意を持っているのだとアピールをしたのだが、ルウナは全くもって気が付いていない。
(いや、しょぼくれるのは早過ぎる。まずは強くならないと、ルウナさんは僕の事を男として、異性として見てくれない筈だ。第一目標は強くなる!!! やってやるぞ!!!!)
第三者が聞けば絶対に無理だろうと思ってしまう茨の道にロークは挑むことを決意した。
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