少年期[477]最初から倒すつもりは無い
三つの斬撃、そして十の水槍、炎の狼の一斉攻撃に耐えたクイーンエレクトビーの一撃。
しかし攻撃がぶつかり、相殺する瞬間にクイーンエレクトビーはその場から即座に離脱していた。
他の通常種と比べて生存本能が高い。
元々自分の子供を食べ、一時的に威力を上げた攻撃でルウナ達を倒せるとは思っておらず、最強の一撃を放った後にルウナ達の生死を確認せずに逃げるつもりだった。
自分一人が、一体が生きていればどうとでもなる。
だが、自分の子供食べて得た最強の一撃を放ち、最高速度で逃げている今も頭の中から警告音が消えない。
それどころか寧ろ激しくなっている。
「一撃をぶちかました後に即逃げるとは、随分と思いっきりが良いな」
「ッ!!!???」
ありえない、そう思ったと同時に何故頭の中から警告音が消えないのかクイーンエレクトビーは納得した。
四人の中で一番ヤバいと思った相手が付いて来ている。
「だが、私から逃げ切れると思っているなら……ちょっと油断し過ぎじゃ無いか?」
そう一言告げた瞬間に、ルウナの移動速度は一気に増す。
身体強化に脚力強化を重ねた結果、見事にクイーンエレクトビーの意識を掻い潜ることに成功。
「この位置からなら、お前は何も出来ないだろ」
クイーンエレクトビーの真横に並走するルウナ。
咄嗟に横を振り向こうと首を動かそうとする。
この近距離な口から吐き出す麻痺液が外れることは無い。
事実、クイーンエレクトビーの考えは正しく、当たる当たらないだけを考えれば距離的に当たるだろう。
しかし、吐き出せるかどうかはまた話が別であった。
「これで終わりだ、フレイムクロウ!!」
クイーンエレクトビーが首を横に向けるより一歩前に、ルウナの炎爪が振り下ろされる。
体を真っ二つに切り裂かれた、それだけで行動不能にするには十分な一撃。
宙から地面に落ちた体は殆ど動けない状態になっているが、虫系の魔物はしぶといので完全に行動不能にはなっていない。
「もう終わりで良いだろ」
虫系の魔物がしぶといのを事前に知っていたルウナは特に焦ることなく、近くの枝を折って魔力を纏わせ、脳天目掛けて投擲。
相手が反撃出来ず、避ける事も出来ない、そして距離も近い。
この三つの条件が揃っている状況でルウナが投擲を外すわけが無く、見事に枝はクイーンエレクトビーの脳天に突き刺さった。
「エリエット、水を」
遠目からルウナとクイーンエレクトビーの一連の流れを見ていたエリエットは直ぐにその糸をくみ取り、残していた水槍をクイーンエレクトビーに軽くぶつける。
するとルウナの炎爪によって体に付いた火は消え、クイーンエレクトビーの死体が燃え尽きることは無くなった。
「助かったぞエリエット」
「いや、俺はできることをしたまでだ。それに、ルウナがいなければクイーンエレクトビーを逃していた可能性が高い。依頼の対象外とはいえ、良い利益になる。こちらこそ礼を言わせてもらう」
大きな臨時収入が入ったことにエリエットとしても嬉しく、綺麗に頭を下げる。
「いや~~~、煙が晴れた時には結構距離が離れていたからマジで焦りましたけど、ルウナさんがいてくれて本当に助かりました!」
「ジーナの言う通りです。本当にありがとうございました」
ローク達だけではクイーンエレクトビーの一撃を相殺することは出来ても、全速力で逃げるクイーンエレクトビーを仕留める事は不可能。
依頼には関係無いので放っておいても良いのではと思うかもしれないが、それでも毒や麻痺系の攻撃を行う魔物は冒険者にとって厄介な相手なので減らしておくのにこしたことはない。
「まっ、礼は受け取っておこう。それよりもこいつだけは綺麗に解体してしまおうか」
クイーンエレクトビーの解体作業と巣の蜂蜜回収作業に分れ、他の魔物が寄ってくる前に無事に終わらせることに成功し、街へと帰還した。
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