少年期[476]人も魔物も屑な部分がある
「どういうことだ、中の生命反応がどんどん消えていく」
「えっ、反応は一つだけじゃ無かったんですか!?」
「動いている反応はな。ただ、まだ卵が多く残っていたのだろうが……その反応が徐々に消えていく」
一つ、二つ、三つ……全てが消えるのではと思える程の速さで動くことが出来ない生命反応が消滅していく。
(もしかしたら、もしかしたらだが……共食いという奴か? しかし自身の子を容赦なく食らい尽くすとは……母親としては鬼婆だな)
鬼婆と言うよりも単なる鬼畜と言えるだろう。
しかし油断して良いものでは無いのは確実だと解ったルウナは三人に呼び掛ける。
「おそらく中に居るクイーンが自身の卵を食い尽くそうとしている。それで何かしらの一発逆転を狙おうとしているのか……それとも全力で逃げるのかは分からないがな」
「自分の子を! そ、そんな事……」
「魔物にそこまでの良識は無いだろう。自分が生き残るためなら子も犠牲にする。人の中でもそういった屑が存在するのだろうから、それを魔物が行ってもおかしく無い」
「そ、そっか……そうよね」
自身で産んだ子を食べようとしているクイーンエレクトビーの行動に動揺したジーナだったが、エリエットの例を聞いて直ぐに平常心を取り戻す。
「クイーンエレクトビーが巣から出て来た瞬間に一気に叩くぞ、正直……一発にぜんりょくを込めているとしたらどのような威力があるのか私には分らん」
自身の子供を食らい尽くした結果、そのドーピングがいつまで続くのか。
数分から十分程度なのか。それともたった一撃だけですべてを使い切ってしまうのか。
(どちらにしろ、ふざけた強化方法だが一般的なクイーンエレクトビーより強くなっている事に変わりは無いだろう。それにしても、本当にふざけた方法だ)
自分達と魔物の思考が同じな筈がない。
それは分かっていても、ルウナはクイーンエレクトビーの強化方法に嫌悪感を感じていた。
だが、クイーンエレクトビーからすれば子供はまた産めば問題無い、しかし自分の命は一度失えば二度と戻らないと理解している。
クイーンエレクトビーには再生能力は無く、相手から逃げ切るのに使える幻影を生み出す能力も無い。
自身が生き残るために子供だろうがそれらを喰らって生き残る、自然界の考えでは合理的な考えだ。
ロークとジーナは武器の刃に残りの魔力を殆ど纏わせ、エリエットは自身魔力と精霊の力を借りて水の槍を複数生み出す。
「……エリエット、その水の槍。数本だけ残しておいてくれ」
「何故……なるほど、思い出した。全力で撃ってくれ。しっかりと火消ししよう」
エリエットの協力を得られ、ルウナは自身の双掌に炎を纏わせる。
クイーンエレクトビーが自身の卵を喰らい始めてから三分が経過し、ルウナの気配感知からはクイーンエレクトビー以外の反応がすべて消えた。
(・・・・・・来る!!!)
全ての卵を食らい尽くした瞬間、ジーナ達三人も確かな異変を感じた。
そして巣から無理矢理飛び出してきたクイーンエレクトビー。
その体には特に異変を感じられなかった……一部を除いて。
「あれはもはや針では無いね」
「針では無く槍だな」
通常のエレクトビーと比べてその上位種であるクイーンエレクトビーの針がデカいのは当たり前だが、それを踏まえても異常な程に針が大きくなっている。
「今だ!!!!」
ルウナの掛け声と同時にクイーンエレクトビーが全身全霊全力で最大の一撃を放つ。
そしてルウナ達も同じく三つの魔力の刃と十の水槍に炎狼が宙を駆ける。
双方の攻撃は丁度お互いの中間地点でぶつかり合い、大きく爆せた。
(ッ!! 炎狼拳をぶつけても押しきれないとは、いくら何でも強化され過ぎじゃ無いか!?)
自身の攻撃がローク達の攻撃も加わっているのにも関わらず、完全に相殺されてしまった事にルウナは驚きを隠せなかった。
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