少年期[475]直ぐに射る

お互いの冒険話に花を咲かせながらエレクトビーの巣を探すルウナ達一行。


道中はエレクトビー以外の魔物に襲われる事無く巣へ近づいて行く。

そして探索から一時間程が経過したところでルウナとジーナの鼻が異変を感じた。


「ルウナさん、これって」


「あぁ、血の臭いでは無く甘い匂いだ。可能性はあるかもしれない」


ルウナとジーナのセンサーに掛かった匂いを足音を消しながら追う。


「蜂蜜の匂いを感じ取ったのか?」


「ほぼ蜂蜜だと思う。偶に凄く甘い匂いがする果物があるから絶対とは言えないけど」


「私はそこまで蜂蜜の匂いを知っている訳では無い。蜂系の魔物にも種類があるだろうからエレクトビーの巣なのかは断言出来ない」


ルウナも鼻の感知には自信があるが、それでもどの蜂系の魔物かまでは分からなかった。

しかしロークがギルドから得た情報通りに進んでいたので、おそろくエレクトビーの巣だろうと四人は思っており、いつでも戦える準備をする。


そして更に匂いが漂う方向に進むにつれ、羽が擦る音がルウナとジーナの耳に入る。


「蜂系の魔物であることは間違いないみたいだな」


ルウナはいつでも焼き斬る準備を、ジーナは切断する準備、ロークはぶった斬る準備、エリエットは矢で射る準備を行う。


どんどん甘い匂いとの距離を詰めていくと、ようやく視界に魔物の姿が映る。


「ローク、あれはエレクトビーで間違いないか?」


「……そうだね。尻尾と体の模様からしてエレクトビーで間違いない」


尻尾と体が稲妻模様になっている蜂の魔物、エレクトビー。

ルウナ達の視界には複数のエレクトビーと、目的である巣が移っている。


「巣の中には大体何体ほどいるんだ?」


「あの大きさですと……二十から三十いるかと思われます」


ロークの答えにルウナはその数なら問題無いと安心する。


(思ったよりも大きいな。いや、普通の蜂では無く魔物だ。そりゃ素も大きくなるか)


エレクトビーの巣の大きさに少し驚くルウナだが、直ぐに気を取り直す。

そして事前に考えていた作戦通りにエリエットが複数の矢を、ルウナが魔力の弾丸を放って奇襲を仕掛ける。


その連撃は見事に巣の外に出ている全てのエレクトビーに直撃し、重傷を免れた個体も動きは完全に鈍っていたのでジーナの短剣によって切り裂かれて絶命。


「まさか初激で見張りをすべて倒せるとは幸先が良いな」


「ジーナ、ナイスアシストだ」


「どういたしまして! そんじゃ、巣から出てくるエレクトビーに切り替えよっか」


ルウナ達が巣の外で護衛をしていたエレクトビーの殺傷音に反応し、巣の中から続々とエレクトビーが現れる。


「反応が鈍いな。これなら少しは数を減らせそうだ」


風の力を借りて矢に加速を加えたエリエットは、巣から飛び出してくるエレクトビーを続々と撃ち落としていく。

中にその矢を躱してルウナ達を敵と認識し、襲い掛かる個体もいる。


しかし残り三人の遠距離攻撃により、尻の先に付いている針を使う間も無く潰されてしまう。


そんな繰り返しが二分ほど続き、遂に巣からは一匹もエレクトビーが出て来なくなった。


「まさかもう全て死んだのか? 俺としては矢の消耗が抑えられて嬉しいが」


「……いや、残っているな。一匹だけ」


気配感知のスキルを使って中を調べ、ルウナはまだ中にエレクトビーが生存している事を三人に伝える。


(正確には複数の反応を感じるが、それはおそらくエレクトビーの卵だろう)


明らかに気配を感じるエレクトビーよりも生命反応が薄いので、戦力にはならないだろう思ってその事は伝えず、最後の一匹が出ることを待つ。


すると、気配感知を使っているルウナは直ぐに巣の中で起こった異変に気が付いた。

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