少年期[473]そもそも持っている
(これは……あれか、逃げ道を塞がれたというやつか)
この場でルウナがロークの誘いを断ったとしても、ルウナにとってそこまで不利益は無い。
せいぜい同年代と付き合いが悪いと思われるぐらいだろう。
だいたいはゼルート達と行動しているルウナにとって、そんな噂は正直痛くも痒くもない。
しかし、今日のルウナに明確な目標は特に無い。
強いて言えば体が鈍らないように実戦で鍛える事ぐらい。
(どちらにしろ、実戦で戦うという事に変わりは無い……ゼルートは冒険者同士の付き合いも大事、他の冒険者と話すのも有意義な時間だと言っていたな)
どちらにしろ、明確な予定が無い以上はロークの提案を断る理由も無かった。
「ゼルートやアレナ、ゲイル達とパーティーを組んでいるルウナだ。ランクはD、接近戦が得意だが一応遠距離攻撃も出来る」
「う、受けてくれるんですね。ありがとうございます!! そ、それでは依頼を受注しに行きましょう!!」
ルウナが自分達と一緒に依頼を受けようという提案に乗ってくれた事にロークは驚きもあったが、それよりも嬉しさが大きかった。
「ロークの奴、少し顔が赤くなっていなかったか?」
「そうだった? 私はよく見えなかったけど」
「採集依頼とは、別に依頼された量より多く持って帰ってはいけないというルールは無いのだろう。ロークが甘い料理が好きならば、自分で持って帰れる蜂蜜に期待しているのではないか?」
ルウナは特にロークの事を知らない。なので何となくそうなのでは思った。
仲間であるゼルートは採集依頼で必要以上の薬草や木の実などを見つけた時は喜んでいる。
「……かもしれないな」
「う~~~ん……私はそれだけじゃない気がするなぁ」
確かにロークは比較的甘いデザートが好きだ。しかし、ジーナの女の勘がそれだけでロークの顔が赤くなったのではないと伝えてくる。
依頼の受注を終えたロークは小走りで三人の元に戻る。
「採集用の瓶を貰ったので、行きましょう。あっ、状態異常を回復させるポーションは持っているので安心してください!!」
「そ、そうか。準備が良いな」
エレクトビーの特徴を把握しているロークは受付の隣にある販売所で人数分のポーションを購入していた。
「お代はいくらだ?」
「今日は僕から皆を誘ったんだし、これくらいは僕が出すよ」
「でも、状態異常回復のポーションってそこまで安くないでしょ?」
ジーナの言う通り、傷を癒すポーションよりもやや高い状態異常回復のポーション。
二人はロークにポーションの代金はしっかりと払うというが、それをロークはやんわり断る。
そしてルウナはそもそもロークからポーションを受け取るか否かで迷っていた。
(どうしようか。正直状態異常回復のポーションはゼルートから元々貰っている。だが、ここでロークの善意を断るのは……それにジーナやエリエットは貰うつもりでいる。それなら私も貰っておいた方が良い流れか)
ポーションが一つ増えるのは決して悪い事では無い。
なのでルウナは特に何も言うことは無くロークからポーションを受け取る。
「それなら、今回の依頼が終わった後の食事代は俺達が払おう」
「良いねそれ、決まり!!!」
「……良いんじゃないか? エリエットの意見に賛成だ」
特に親しくは無いロークからタダで何かを受け取るのも気が引けたルウナとしては有難い提案だった。
「それじゃ……お言葉に甘えようかな」
こうして完全に準備を終えたルウナ達は時間を無駄にしないように速足で街を出てエレクトビーの巣を探し始める。
まだまだ寒さが続くが、エリエットが精霊の力を借りているお陰で若干ではあるがルウナとロークの寒さは軽減されている。
寒さを無くすほど暖かくする事も出来るが、それでは戦闘中の魔力が足りなくなるかもしれないので必要最低限の魔力だけ消費し続けている。
そしてエレクトビーの出現情報が多い場所に向かう途中、ルウナ達が殆ど他のモンスターと出会うことは無かった。
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