少年期[472]一人で何しようか

「ふむ・・・・・・やはり昼頃には大した依頼が残っていないものだな」


ゼルート達と別行動を取ってギルドにやって来たルウナ。

何か面白そうな依頼は残っていないかとギルドボードの前に立つルウナだが、条件の良い依頼は既朝のうちにやって来た冒険者が持っていき、面白とそうだと感じる依頼に関してもルウナ一人では流石に厳しい。


「まぁ、別に依頼を受ける必要は無い。適当に森で魔物を狩るとするか」


魔物と戦えればそれで構わないと考えているルウナは基本的に依頼を受ける必要は無く、ゼルートから多少料理方法などは教わっているので、肉が食える魔物でも見つければ腹は膨れる。


解体の腕もベテラン冒険者ほどの腕は無いが、それでもルーキー以上の腕は身に付いている。


そしてルウナがギルドから出て森に行こうとしたとき、一人の冒険者が話しかけて来た。


「あの、ルウナさんですよね」


「そうだが・・・・・・お前は誰だ?」


「えっと、Dランクの昇格試験を一緒に受けたロークなんですけど……やっぱり思い出せませんか?」


「……いや、何となく思い出した」


Dランクの昇格試験を受けた事自体はしっかりと覚えている。

だが、その後に起きた出来事の方が頭の中に残っているので、昇格試験を一緒に受けた面子の事は頭から完全に抜けていた。


「それで、何の用だ? 私はこれから森に入って魔物を狩るのだが」


「えっと、それはお一人でですか?」


「そうだ。ゼルートとアレナとは別行動だからな」


ソロで冒険を行う者がそこまで珍しい訳では無いが、基本的に緊急事態と言える場面に遭遇した時、やはり一人ではそのまま命を落とす危険性が高い。


「その……よ、良かったら僕達とこの依頼を一緒に受けて貰えませんか!!」


「む、どれどれ……蜂蜜の採集依頼か。中々に報酬が良いな」


報酬金額は金貨二十枚と中々に高い。


しかしそんな依頼に危険性が無い訳が無く、採集依頼の対象である蜂蜜はエレクトビーの蜂蜜。

ランクはEと高く無いが、尻から出ている針には雷の魔力が込められており、刺されると数秒程度だが雷が帯電してしまう。


上位種になればその時間も長くなり、必ず複数人で挑まなければならない魔物の一体だ。


「僕達ということは、その後ろの二人も含めてということか」


「そうです。パーティーは違いますけど、同期で友達みたいな関係です」


ロークの後ろには兎の獣人の女の子とエルフの男が立っていた。


(……ふむ、兎の獣人はそこまで身体能力が高くは無いから強くなることを諦めている者が多かった気がするが、この娘は自分の可能性を信じている。そして信じるだけの実力も有りそうだ)


兎といえば弱いイメージが強いが、その脚は百獣の王であるライオンから逃げ切ることが出来る脚力を持っている。

魔物でも兎系の中で強い個体は存在する。


兎の獣人も初めは身体能力で他の獣人に敵わぬとも、強くなる術はある。

現に兎人族でAランク冒険者まで上り詰めた者もおり、強くなれるという可能性が無い訳ではない。


(そして男のエルフは……偶にいる傲慢そうなエルフとは違う、というか謙虚そうな雰囲気だな。遠距離に関しては期待できそうだな)


ロークの友人であるエルフの男は弓を使い、他にも短剣を扱える。

そして勿論魔法も使え、まだそこまで強力な技は無いが精霊魔法も扱うことが出来る。


「兎の獣人のジーナです! ランクはロークと同じDです、よろしくなお願いします!!!」


「エルフのエリエットだ。ランクは同じくD、一応短剣は扱えるが本業は弓と魔法だ。よろしく頼む」


少しテンションが高いジーナと淡々と挨拶をするエリエット。

名前も顔も知らないのでルウナにとって軽く自己紹介をしてくれたのは有難い。


しかし、まだロークからの提案を承諾していないのに一緒に行動すると思われていた。

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