少年期[471]触れて揺れる音
(気配を消すのが上手くても、動く時に揺れる草の音までは消せない様だな)
チャーディルの血の匂いに惹かれてやって来たのは五体のスノウウルフ。
ランクはDだが、脚の速さと雪のブレスが厄介であり、相手の体力を削って素早さが落ちたところで狩に行くパターンが多い。
「あれはどうする?」
「俺が何とかするから、二体を頼む。全力で潰してやれ」
「おうよ!!」
五体とも初っ端からゼルートとデックに向かってスノウブレスを放ち、二人の動きを止めようとする。
しかしゼルートが放った大きめのファイヤーボールに打ち消され、完全に消えずにスノウウルフに襲い掛かる。
自分達の弱点が火だと本能的に知っている五体はそれを見事に避けるが、その逃げた先には火よりも恐ろしい冒険者が待ち構えていた。
「丁度揃っているな」
デックは風の魔剣に魔力を集中させ、風突を放つ。
「焼き切れ」
ゼルートは手刀で炎刃を放ち、不規則に動く。
脳を貫かれ、首を焼き斬られたスノウウルフ達はそこから復活する術は持っておらず、全員が地面に倒れ伏した。
「やっぱりスノウブレスさえどうにかすれば問題無いな。まっ、それをどうにかするのが難しいんだけどな」
「・・・・・・それ専用の魔道具でも造れば何とかなるんじゃないか?」
(というか、あると思うんだけどな)
魔物のブレスに対抗する為の魔道具。
それは既に存在する。元の様とは違えど対抗出来る効果が備わっている武器も存在する。
「あぁ~~~……あるにはあるな。でも、そこそこ高い魔道具じゃないと燃費が悪いんだよ。そこそこ高い奴だとそうだなぁ……Dランクの冒険者じゃ金を貯めたとしても、結構厳しいだろうな。俺レベルの奴ならそういった魔物と対峙した時の為に持っていたりするかもな」
「へ~~~。個人で買うにはちょっと苦しくて、パーティーの資金から出せばそこまでって感じなのか?」
「そんなところだな。たく、そこら辺は魔物達が羨ましいぜ」
低燃費で広範囲の攻撃をポンポン放つことが出来る。
全ての魔物がそうでは無いが、それでも戦う者からすれば羨ましい能力だ。
「でも、俺達冒険者がパーティーで挑んでくる方が魔物にとっては恐ろしいんじゃないのか? 全員が同じ攻撃を仕掛けてくるって訳じゃ無いんだしさ」
「……それも確かにそうだな」
「だろ。それに魔物は長い間生きている奴か修羅場を何度も潜り抜けた奴じゃなきゃ俺らぐらい知恵は身に付かない」
高ランクの魔物は元から知能が高いが、それでも初めから小細工などの手段を知っている訳では無い。
「まっ、そんな魔物に出会う確率はそこまで高く無いと思うけどな。んじゃ、スノウウルフも含めてちゃちゃっと解体しようぜ」
「そうだな。解体の腕だけはゼルートに勝てる点だから頑張らないとな」
ゼルートも年齢のわりには解体の経験数が多いが、それでもデックが今まで解体してきた魔物の数には及ばない。
そして解体中に血の匂いに釣られてゴブリン達が二人を襲うが、今更数匹体のゴブリンにゼルートとデックが奇襲をくらうことは無く、無事に解体は終了した。
解体し終えたチャーディルとスノウウルフの素材と魔石をギルドで売り、稼いだお金で二人はちょっと値段が高いレストランへとやって来ていた。
「ゼルートのお陰で良い臨時収入が入ったぜ」
「それを使って今からちょっとお高い料理を食べるんだけどな」
「それぐらいで散財するような報酬じゃ無いっての。やっぱり便利だよなそれ」
デックもアイテムバッグは持っているが、ゼルートが自ら造った物ほど性能は良くない。
なので解体した魔物の素材を全て持ち帰るのは大きさにもよるが、少々厳しい。
「便利過ぎるぐらいだ。これが無かったら野営の時の飯は本当に寂しくなるからな」
「その日に食える魔物でも狩れれば良いけど、中々そうはいかないもんだからな」
お互いに冒険者として活動する中で感じた事を食べながら話し合い、二人の一日は終わった。
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