少年期[455]気温が変わる事での影響

風が強くなり、気温も下がってきたドーウルス。

四季がはっきりとしているので秋や冬になれば当然寒くなり、雪が降ることも珍しくない。


そんな季節の中、ゼルート達はDランクの冒険者らしい依頼を受けていた。


「これで終了、だな」


「本当にこいつらは季節や環境関係無しに最悪な野郎ね」


ゼルート達の足元にはオークの死体が綺麗な状態で転がっている。

オークを一体討伐すれば受けた依頼は完了なのだが、ゼルート達が発見したオークは集団で行動しており、季節による体への影響を感じさせない程の速さで突っ込んで来た。


主にアレナとルウナ目がけて。


「もしかしたら性欲に忠実な神様が……というよりは悪神様? が生み出したのかもな」


「魔物が何故この世に存在しているかなど考えたことは無いが、それでもぜルートの話には納得出来そうだ。それにしても、討伐報酬が通常時より高くなかったか?」


街によって同じ魔物の討伐であっても、報酬が変わることは良くある。

しかし時期によって変わる理由がルウナには分からない。


「寒くなってくれば自分の巣に籠る魔物もいるのよ。だから普段より見つけにくい。それと、私達はゼルートが屑豚貴族から奪った魔道具のお陰で満足に動けているけど、本来私達のランクでここまで良い装備を揃えている冒険者いなの。だからギルドも少しは報酬額を上げて依頼を受けて貰おうとしてるのよ」


「なるほど。つまりギルドも季節が変わるごとに問題に対処しなければならないという事だな」


「そういう事よ。私達よりランクが上の冒険者になれば、そもそも雪が降るような季節にわざわざ魔物を狩りに外に出ようとしないものよ」


完全な防寒対策の魔道具を装備して挑むなら話は別だが、装備が完全でないのならば冬の野生はいつもとは違う体の動きが命取りになる。


それに気付かない冒険者が普段は負ける筈が無い魔物に殺されてしまう話はよくあり、ギルドの方でもDランク以下の冒険者には注意するように呼び掛けている。


だが、やはり中にはそんな有難い忠告を無視して冬の冒険に挑み、あっさりと死ぬ者が後を絶たない。


「とりあえず血抜きも終わったし、街に戻ろうぜ」


血抜きが完了したオークをアイテムバッグの中にしまい、街へと戻ったゼルート達は別行動をしていた人間態のゲイル達と合流してからギルドに依頼完了の報告をする。


「あ、相変わらずゼルートさん達は仕事が早いですね。それに体を丸々残しての討伐。こういった倒し方をされるのはこちらとしても有難い限りです」


「大したことじゃないですよ。相手より自分の脚の方が速ければ何とでもなりますよ」


勿論相手の防御力を貫く攻撃力も必要だが、予測と相手を上回る速さがあれば特に焦ることなく倒せる。

それがゼルートの考えだが、ギルド内に残っている冒険者の表情を見ればそれが事実とも言えない。


「間違ったことは言ってないんだが、そう簡単に出来ないのが辛いとこだよな」


「だな。まっ、俺らには努力が足りないだけかもしれないけど」


そんな風に自虐する冒険者達だが、だんだんと空しくなる。

幸いにも防寒対策の魔道具は持っていたらしく、一つ気合を入れて一つのパーティーがギルドから出て森の中に向かった。


「それではこちらが報酬になります」


得た報酬は銀貨が十六枚。

本来はゲイル達が達成した分の報酬を含めてももう少し低いのだが、状態がとても良かったので報酬が上乗せされた。


「本当は私達ぐらいの実力を持つ冒険者が受ける依頼じゃないんだけどね」


「別に大丈夫だろ。そんなごっそり依頼を受けてクエストボードの依頼書を全て無くそうなんてしてないんだからさ」


「……お願いだから冗談でもそんな事はしないでね」


推奨ランク以上冒険者やパーティーが依頼を受けようとすれば、決して悪い事ではないのだがランクが下の冒険者達からは良く思われない。


それが分かっているので金に困っていないゼルートはそんな馬鹿な行動を取ったりはしない。


(仲が悪くなりたい訳じゃないしな。というか寧ろ気軽に喋れる同僚とかもっと増えて欲しいんだよな)

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