少年期[449]
声を出してしまっては不意打ちの意味が無い。
基本中の基本なのだが、そんな事も忘れて全力投球してしまった。
やってしまってから「しまった!!」と思ったが得すでに遅し。
ゼルートから離れた場所に留まっている一団に微かにだが声を聴かれてしまった。
だが……正直そんな事は全く問題では無かった。
ラームが一団の元へ飛んでいく速度に反応出来た者は殆どおらず、体を堅い球体から無数の針状に伸ばし、正体を隠すようにフード付きのローブを着た集団をめった刺しにする。
しかしラームの移動速度に対応出来た者もいた。
一団を護衛する者であり、背に持っていた大楯でラームの攻撃を防ぐのに成功。
「やるじゃん。でもホッとするのは速いんじゃないの?」
疾風迅雷を発動し、ほんの一瞬で距離を詰められ、顎の先端に軽く一撃を決められたことで脳震盪を起こして沈められてしまう。
『体に痺れ毒を注入しといたから多分動けない筈だよ』
「……そうみたいだな。どうやら状態異常に対抗する為のマジックアイテムはどうやら身に着けていない様だ」
個々で状態異常に対するスキルは習得しているが、ラームが針の中に仕込んだ麻痺毒には完全に抵抗出来なかった。
「さてと、お前達には選択肢をやる。俺が今から質問する内容に素直に答えるか、答えずに無言を貫き通して地獄を見るか。どちらかを選ぶのかはお前達の自由だ」
まず初めに主人の名を訊くが、誰も応えようとはしなかった。
「さっさと答えればいいのに馬鹿だなぁ~」
ラームの触手が一人の体に突き刺さり、死なない程度に電流が流れる。
「あががががががっ!!!!????」
「こんな感じになるんだけど……まだ誰も答えない? なら仕方ないね」
更に拷問は続いていくが誰一人として雇い主を答えようとしない。
(めんどくさいなぁ。別に回復魔法を使えるから死んでしまう心配は無いんだが、そもそも拷問は得意じゃないんだよ。さっさと吐いてくれればこっちとしても楽なんだが……しょうがない。あれを使うか)
これを使えば素直に吐いてくれるだろうと思い、ゼルートはヘルナイトメアを発動し、一団全員に幻覚と幻痛が与えられる。
ヘルナイトメアを発動してから十秒も経たずに発狂する者が現れ、三十秒後には全員が悲鳴を上げて発狂。
そして彼らが見ている夢をいじると、素直に雇い主の名前を吐いてくれた。
「なるほど。その人がダンジョンの存在を隠して今まで私腹を肥やしてきた人なんだな」
「そう、です。ここ数年、もの間……ダンジョンの存在、を隠して、来ました」
一団の中でリーダー的存在である者は知っている内容を全て話し終える。
ラームとゼルートから喰らった拷問の影響で意識が朦朧としながらも知っている事をなんとか話し終え、男は今後自分達がどうなるのかだけを考える。
「……嘘じゃないみたいだな。さて、そいつからの命令だとしても、お前らがやったことは十分に犯罪に繋がる行為だろう。だが、今回だけだ」
ゼルートは元から一団を殺すつもりは全く無い。
何故なら自信を倒さなければという意思は見えても、殺意は感じなかったからだ。
(根は悪い人達じゃない筈だ。雇い主に言われたから渋々ってところだろう。一度評判が悪くなれば再就職先も中々見つからなくなる)
ゼルートはポーションを一団の人数分地面に置く。
「あんたらの強さだったら冒険者として真っ当に生きられるだろう。まっ、別に冒険者になれって強制する訳じゃないけどな」
言いたい事を言い終えたゼルートはさっさと眠りたいのでダッシュで街へと戻る。
『ゼルート、あの人達を証言者? として利用すれば簡単に事が上手く運ぶんじゃないの?』
「この世界の権力ってのは、そう甘くは無いんだよ。一番簡単に元を消すには・・・・・・殺すのが一番手っ取り早い」
ゼルートの中で今回の大事件を引き起こした張本人を殺す事は決定しており、どうやって殺すかは考え始めていた。
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