少年期[448]出来れば早く見つかって欲しい

「つまり、この街を拠点とする冒険者か、もしくは貴族がダンジョンを隠していたということか」


ギルドマスターもある程度予想はしていたが、思いつく限り最悪の結果だ。


「冒険者では無理だと思う。隠蔽するにしてもある程度の実力が何かを隠す能力に特化していないと隠し続ける事は出来ないかと。それか高度な結界を張ることが出来る人物が数名はいないと」


結界を造れる人物とそれを他の者に気付かれないようにする為に隠蔽する能力。

この二つが無ければいずれはバレてしまう。


「……思い当たる人物はいる。ここ数年は色々と羽振りの良い貴族がいたからな」


「そうですか。それならそちらをどう処罰するのかはお任せします。後、ここ数日はこの街にいようと思うので、何か相談があれば言ってください。自分は色々と出来るので多分力になれるかと」


色々と出来る、その言葉から……ゼルートの浮かべる笑みからギルドマスターは背筋に氷を入れられたかのように背筋がピンと伸びた。


外見が子供なのだが、浮かべる笑みは百戦錬磨の達人が浮かべるような冷たい笑み。


(まだ……まだ冒険者になって一年も経っていない子供がこの類の笑みを浮かべられるのか!! 本当にどういった人生を送ってきたんだこの子は)


ギルドマスターはゼルートの家名を知っており、裏のある家でないという事も知っている。

そしてゼルートが残虐性を秘めているという噂も聞いたことが無い。


(何度も修羅場を乗り越えた結果得た、というのなら納得出来る。しかし彼の年齢を考えると……いや、深く考えるのはよそう。悪獣をたった一人で倒す程の実力を持っているんだ。私が想像できない程の修羅場を潜り抜けてきたのだろう)


「それでは、君の力が必要になったら遠慮なく借りさせてもらう。ただ、しっかりと報酬は用意する」


「あぁ、分かりました。あっ、ちょっとだけ頼み事があるんですけど、いいですか?」


「……その顔からして今回の件に関係があるようだね」


勿論ギルドマスターがゼルートの頼みを断るわけがなく、寧ろ報酬を払ってでもギルド側が頼みたい内容だった。


ゼルートからの頼み事を承諾したギルドマスターは報酬として白金貨一枚を渡した。

破格の値段だが、ゼルートが行う事に関してはそれだけの価値がある。


そして一部の者達以外が寝静まった夜。ゼルートとラームは暗い森の中を走り続けていた。


『これを何日続けるの?』


「標的が現れるまでと言いたいところだが、一週間だな。標的が見つかるより先にギルドマスターから依頼が来るかもしれないけどな」


『一週間かぁ……ちょっと長いね』


「そう言うな。この仕事は結構大事な内容だからな。白金貨一枚貰ったし、美味い料理を奢ってやるからそれで我慢してくれ」


『うん!!! 分かった!!! 寧ろちょーーがんばっちゃうよ!!!!」


美味い飯という餌にあっさりとラームは釣られ、完全にやる気を出していた。


(俺の予想が正しければ、並の奴は来ていない筈だ。見つけたら速攻でぶっ潰す)


捕らえて吐かせるのは二の次という考えでゼルートは気配感知の範囲をさらに広げる。

そして森の中を全速力で掛ける事数分……ようやく目当ての一団を見つけた。


「ッ!!!! あいつらだな。ラーム、戦闘準備だ。捕らえるのは二の次、相手の行動を完全に停止させるのが最優先だ」


『了解!!!!』


気配感知で感知出来た集団が一点から動かずに何かを行っている。

何を行っているまではゼルートにも分からない。しかしある程度は予想出来る。


「うし、ここからなら行ける!! ラーム、ぶん投げるぞ!!!」


『なるほど!! まっかせて!!!!!』


ゼルートの意図が直ぐに解ったラームは全身を硬化させ、体を球体にする。


球体になったラームを右手に収め、ゼルートは全力投球で腕を振るう。


「いっ、けえええええええええええツーーーーーー!!!!!!!!!!!」

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