少年期[447]早くベッドにダイブしたいが
魔物の大群との乱戦は無事に冒険者、騎士、兵士達の勝利で幕を閉じた。
今回の功労者達が集まる場所にゼルートも到着し、直ぐにアレナ達が集まってきた。
「ゼルート!!! 怪我は無い!? 血は大丈夫!?」
「落ち着けアレナ。血は確かにちょいちょい流したが、大丈夫だ。傷に関しても治ってるから問題無い」
ゲイル達から事前にゼルートが無事なのは聞いていたが、それでも不安な気持ちは無くならなかったアレナ。
「ゼルート、確かに外見は問題ないが体に不調を感じたりはしてないか?」
「もし少しでも何か異変を感じたらす直ぐに教会に行くのよ。いえ、今回の場合は解呪師の方が良いかしら?」
グレイスとコーネリアもゼルートが一対一で戦った相手を聞き、顔を真っ青にしていた。
ゼルートが年齢不相応に、冒険者全体を見てもトップクラスの実力を持っていると解っていても、もしかしたらという最悪の可能性が消えない。
幸い、悪獣が呪い系の攻撃をしてこなかったので特に体に異常は残っていない。
(良く解らんが、俺の戦い方に合わせてくれていたのかもしれないな。どうせ背後にはゲイルとラルがいるんだから逃げ切ることは不可能だし)
言葉と話が通じる魔物だったので一対一の勝負に乗ってくれた。
その考えは正しく、理性のある個体だったので勝負の最中もわざとゼルート以外を攻撃対象にすることが無かった。
(というか、あいつ自分からダンジョンのボスだって言ってたよな。もしかしなくても毎回あんなやばい個体が生まれたりしない・・・・・・よな?)
今はもう余裕がある状態とはいえ、それなりに危機を感じる状況ではあり、完全に油断出来ず気の抜けない戦いだった。
ゼルート以外にあの悪獣を倒せる者は確かにいる。
しかしそんな存在が常にこの街にいるとは限らない。
「ゼルート、急に不安そうな顔になったが何かあったのか?」
「いや、まぁ……そこら辺は後で話すよ。今はとりあえず帰ってのんびりと休もう」
今回の戦いでは負傷者、死者もいる。
この勝利に完全に喜びきれない者もいるが、一先ず危機は去った。
死体の処理はギルド職員に任せ、冒険者や騎士に兵士達は街に戻る。
街に入ると既に魔物の大群が討伐されたことが広まっており、住民達が街を守った英雄達を祝福する。
(感謝されるのはやっぱりちょっと恥ずかしいが、気分が良いものだな)
住民達の中に自分が群れのボスを倒したと思っている者はいない。
そんな事は解っているが、住民達は今回戦った者達全てに感謝している。
その中には勿論ゼルートも含まれていた。
「ゼルートもそろそろ人に感謝されることに慣れたらどうだ?」
「無理。だって慣れない事は慣れないんだからな」
そしてギルドへと戻り、軽く報告を済ませた冒険者達は後日報酬を受け取るので即座に宿へと戻る。
ゼルートも速攻で宿に戻って風呂に入り、ベッドへダイブしたかった。
だが直ぐにでも話しておきたい内容があったので一対一でギルドマスターと話し合うように席を設けた。
「討伐が終わったばかりなのに無理言ってすみません」
「いやいやこちらこそ今回の戦いで一番活躍したのにもかかわらず、休みもせずに情報を提供してくれる事に感謝する」
秘書が入れた紅茶を一口飲み、さっそくゼルートは今回の魔物の大群がこの街の直ぐ傍に現れた原因について話し出す。
「過去に偶発的に魔物の大群が現れた件があるというのは知っています。ただ、今回の群れのボスである悪獣は自らダンジョンのボスだと語っていました」
「ッ!!!! 人の言葉が通じる個体だったのか!!??」
群れのボスが悪獣だと報告で聞いていたが、人の言葉を話す個体とまでは聞いていなかったギルドマスターは驚きを隠せない。
「話も通じる個体でした。ただのボスではなく、たまたま……それこそ何万分の一の確率で生まれたのだと思います」
「確かに過去の資料でも人の言葉を話し、尚且つ話が通じる個体というのは本当に数える程しか無い」
事実、今回ゼルートが戦った悪獣は何万分の一の確率で生まれた個体だった。
しかし今のところ全く確証が持てない二人にとってそれは、そうあってほしいというただの願望。
「群れのボスは確かに一人でこの街を滅ぼせるほどの強さを持っていたと思います。ただ、今回現れた魔物の量ははっきり言って多すぎるかと」
この言葉でギルドマスターはゼルートが何を言いたいのか直ぐに察した。
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