少年期[438]典型的な
姿を見せた巨体の魔物の名はサイクロプス。
眼が一つしかなく、頭部には角が生えている。
冒険者の間ではオーガの親戚だろうと言われている。
だがオーガとサイクロプスはそれぞれ特徴があり、オーガは力があって速さも備わっている。
しかしサイクロプスの脚は遅い。身体強化のスキルを使ったとしてもそこまで速くはならない。
だがパワーに関してはオーガ以上のものを持っており、尚且つ魔法耐性が他の魔物と比べて高い。
そんなサイクロプスが四体。
普通なら他にも多くの魔物がいるという事もあり、絶望という言葉以外見つからない状況。
そしてその絶望はルウナの目前に迫っていた。
『フンッ!! ぬうぅぅ、よいしょッ!!!!!!』
サイクロプスが持つ棍棒が空気を割ったような速度でルウナに迫っていたが、それをラームが弾力のあるスライムボディで受け止め、全力で跳ね返した。
跳ね返された棍棒は先程サイクロプスが全力で放った速度よりも更に速く飛び、サイクロプスの弱点である一つ目にクリーンヒット。というか完全に棍棒が目にめり込んでいた。
『あっ』
「おぉう、あれは流石に死んだか?」
二人は今回サイクロプスという魔物に初めて遭遇し、一つ目が弱点などという事は知らない。
だが跳ね返した棍棒は運良く目に当たり、致命傷を与えた。
「さて、四体から三体まで減った事だし少しは楽か。ラーム、お前も一緒にあいつらを殺るか?」
『う~~~ん、僕は他の魔物を殲滅しておこうかな』
体を左右に振って触手をサイクロプス達以外の魔物に向ける。
「そうか、なら私があいつらを相手にしている間、他の魔物は頼んだ」
『任せといて!!!!』
ラームとは一旦別行動という形を取り、ルウナは全速力で戦場を駆ける。
サイクロプスに向かって走るルウナを襲おうするモンスターには目もくれずに走る。
(見た感じ、パワーはあるがスピードは無い典型的なパワータイプのモンスターだろう。ただそれだけでここまで威圧感があるとは思えない)
素手で戦うには疲れる相手だと思い、ルウナは腰から双剣取り出す。
風属性の効果が付与された双魔剣。
使い手の速さを上昇させる効果も付いているので、今のルウナには丁度良い武器だった。
三体もいるんだから幾ら早くても捉えきれるのではと思うかもしれないが、ルウナは獣人族の中でも速さに特化した狼の獣人。
それに身体強化のスキルと風の双魔剣の速度上昇の効果により、パワーがあってもスピードが無いノロマではルウナを捉えきることは不可能。
その証拠に、サイクロプス達はルウナを潰そうと棍棒を叩き付けたり拳でぶっ潰そうとしているが、どれも空振りに終わっている。
そしてサイクロプス達の脚には無数の斬り傷が増えていく。
それだけを聞けばルウナが圧倒しているようにも思えるが、実際は圧倒などしていない。
(こいつら・・・・・・傷が回復する速度が異様に速いな。切った瞬間に血が出ない訳では無いが、それでも直ぐに塞がってしまう)
もしかしたら回復速度が高い特性を持っているのか。それとも、再生する特性を持っているのか。
後者だとしたらかなり厄介だと思ったルウナは直ぐに攻撃方法を変える。
(炎狼よ、斬風を乗りこなして目の前の巨人を斬り裂け!!!!)
双魔剣から噴き出る斬風に炎狼が重なり、斬風の影響を受けた炎狼はその体を一気に大きくさせる。
「食い千切れ、炎狼の咢」
放たれるは今にも敵対する相手を食い殺そうとする炎狼の頭部のみ。
双魔剣から放たれた二つの炎狼はサイクロプスの脚を完全に食い千切った。
「ふんッ!!!」
攻撃はそれだけで終わらず、炎狼の咢はもう二体のサイクロプスの脚へと向かい、計六本の脚を食い千切った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます