少年期[436]魔力を注ぎ込んだ甲斐がある
大戦の中、考え事をしながら戦っているゼルート。
普通に考えれば戦いの、しかも四方八方から攻められる乱戦の最中に目の前の戦い以外の事を考えている等、自殺志願者に思われるだろう。
だが魔物達の攻撃は一切ゼルートにダメージを与えていない。
稀に偶々攻撃が当たる事はあれど、直撃する事は無くガードしている。
確実にモンスターの数を減らしていくゼルートだが、あまりの多さに途中からイライラし始めた。
(ダンジョンから溢れ出した魔物の量をちょっと嘗めてたな。少しばかり、荒れても構わないよな)
切断力に力を入れた四つの円盤を周囲に生み出し、全力で回転させた。
技自体は難易度が高いものでは無いが、それでも切断力を上げるのに魔力を多く費やした。
そのため、今まで特に魔力量を気にせずガンガン魔力を使ってきたゼルートだが、少しだけ魔力残量を気にし始めた。
(俺の体術や剣術だけじゃ倒せない魔物が現れるかもしれないし、一応回復しておくか)
ゼルートは自身の魔力を固体化した決勝を取り出し、自身の体に取り込む。
そのお陰でゼルートの魔力量は全快した。
「おぉーーー・・・・・・良い感じにまとめて倒せたな」
ゼルートが放った四つの風の円盤は上下に揺れながら魔物の体、特に足を切り刻んでいった。
そのお陰で生き残ったとしてもいずれ戦闘不能になる魔物が多数現れ、戦況は一気にゼルートが有利な方向へ進んだ。
「頑張って躱して反応したところ悪いんだが、後方注意だぞ」
先程の投擲とは動きが変わり、ゼルートが直接動かす事で更に速度が上がった。
そして切り逃がした魔物の後方から風の円盤が迫り、気付いた時には既に時遅し。
反応出来ない、出来た問わずに斬殺された。
「Cランクのモンスターであっても、あのスピードには反応出来なかったみたいだな」
魔力を多めに消費した甲斐があり、ゼルートの周りには魔物の死体だけが転がっていた。
ダンディーな男ならここらで一服したいと思う場面。
つまり少し気が抜け、油断している状態となる。
そこに隙を感じた一匹の獣が攻撃を仕掛ける。
ゼルートの気配感知でも捉えられない場所から戦いを観戦しており、どうすればゼルートに有効打を与えられるかを考えていた。
そして行き着いた考えは至って単純なものだった。
得物が油断した時こそ最大のチャンス。
それにしたが様にBランクモンスター、ライオネルが風と水の魔力を合体させた咆哮を放った。
威力はユニゾンマジックの効果が反映されており、衝撃波さえも相当な威力となっている。
ゼルート達の面子であっても、不意打ちでこの攻撃を喰らえば死にはせずとも大怪我は免れない。
風水の咆哮がゼルートを覆い、街にまで轟く衝撃音が響いた。
一緒に討伐戦に参加している冒険者達も流石に一瞬だが気を取られる程の音だった。
ライオネルの咆哮が当たった地面はゼルートが生み出したクレーターよりも更に大きな物を生み出し、流石にどんな相手でも原型を留めてはいられないだろうと思える程の威力を連想させる。
事実、その場にゼルートの姿は見えない。
遥か後方に飛ばされたのか。それとも本当に木っ端微塵に消し飛ばされてしまったのか。
いずれも自身の不意打ちは完全に決まった。
そう確信したライオネルは勝利の雄叫びを上げる。
「グララララアアアアァァアアアアーーーーーッ!!!!!!」
完全なる不意打ち。
だがそんな事は野生の戦いには関係無い。
最後まで生き延びた者こそが勝者だ。
どんな手を使おうと生きる為の最善の努力を尽くし、最後に意識を保って生きていた者こそが真の勝者。
ルールを決められた
騎士同士の戦いや冒険者達の摸擬戦とは訳が違う。
不意打ちに卑怯などという言葉は使われない。
だから・・・・・・相手が勝利の余韻に浸っている隙を狙われても文句は言えない。
「流石に危なかったぞ。ナイスな不意打ちだ」
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