少年期[435]まだこんなに
「疾風」
風の脚力強化魔法を使用し、自身に攻撃が届くのが速い順に仕留めていく。
狼たちの中には速さに関してはそれこそ並みの冒険者では線しか追えない速度を持つ個体もいた。
しかし二つの枷を無意識に外し、疾風まで使ったゼルートの速度には及ばない。
そして狼達は先程のゴリラの様な防御力は無いため、特にそこまで力と速さを重視していない攻撃であっても簡単に皮が斬れ、体に穴が空き、臓器が抉れる。
中には種族特有の特性で皮や毛が堅いオオカミもいた。
その個体に関しては傷を負ってもその一撃で倒れる事は無い。
だが、痛みを感じていない訳では無いのでほんの少しの間だが動きが止まってしまう。
(良い感じに集中しているな)
一斉にゼルートを狙おうとしたという事は、行動を終えた直後には殆ど一か所に集まってしまっている事になる。
「これでも喰らえ」
一跳躍で狼達の遥か上に飛び、右手と左手に風の刃を圧縮した球体を生み出す。
「暴乱轟刃」
二つの球体を同時に投げ、球体は徐々に近づいて行く。
そして狼達の近くでぶつかり合った分間、二十程の風の刃が狼達は斬り刻んでいった。
「やっぱり集団戦はこういった技が有利だ、よなッ!!!」
獣系のモンスターの中には当然、空を飛ぶ鳥のモンスターも多数存在する。
そして良い的となっているゼルートに鳥達は自身の羽に鋭さを加え、ゼルートを穴だらけにしようとする。
「その攻撃は前見たっつーーの」
多方向から攻撃が来たので、ゼルートは自身の周りを火の壁で覆った。
無数の羽の中に火耐性を持っている羽は無く、全てが焦げてボロボロになり一つゼルートに当たる事は無かった。
「面倒だが、上からチマチマとやられるのも鬱陶しいな」
魔力をその場に固定して踏み台にするという技能を使い、ゼルートは空中を全速力で駆ける。
風の魔力を使って自身を飛ばす事も可能だが、空中をアクロバティックに飛ぶ鳥達の動きに付いて行けないと思い、労力を使う方法を選んだ。
だがその甲斐も有り、空中を飛びまわる鳥系のモンスター達の首がボトボトと地面に落下していく。
羽が飛び散ったりしたら面倒だと思ったゼルートは完全に接近して手刀で首を落とすか、距離が近い位置で風の刃を放って首を斬り落とすかの二択で殲滅を行った。
地上のモンスター達は遠距離攻撃で何とかゼルートに攻撃を当てようと頑張るが、ゼルートが動き回る速度とモンスターの遠距離攻撃がゼルートが駆ける位置に届くまでに時間差的に当たる事は無い。
そして空をウロチョロする鳥を殲滅し終え、今度は地面に向かって駆ける。
速度+重さの威力は中々の威力があり、先程ゼルートが地面を両拳で叩き付けた時以上のクレーターが生まれた。
ちなみにその中心には蹴り潰されたモンスターの死体がぶちまけられている。
「・・・・・・まだ減らないんか。一体どうなってんだよ」
潰したモンスターの数を数えてはいないが、それでも五十以上は倒したとゼルートは記憶している。
にも拘わらずゼルートの周りにはまだ多くの獣系のモンスターが存在している。
(もしかしてだが、今回のモンスターの大群が起きた原因の一つはダンジョンか?)
ダンジョン内のモンスター同士で殺し合いは、食い合う事は日常茶飯事。
しかしそこに人の手を加えなければいずれ階層がモンスターで溢れかえり、モンスター達は普段ではあり得ない行動に出る。
それは地上への進出。
(ただそれだけが今回の原因とは思えんが、それでも原因の一つではある筈だ。だったら今回この騒ぎの原因は街の領主か? それとも存在を秘匿した冒険者か? それとも単に本当に今までダンジョンを見つけられていなかったのか)
三つ目の可能性はモンスターの大群がいた位置と、街を攻め込むモンスターの強さ的にあり得ない。
(可能性があるとしたら一つ目と二二つ目か。こりゃこの戦いが終わった後にも片付けなきゃいけない問題がありそうだな)
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