少年期[432]逆らえない

とある店の個室で数人の冒険者が集まっていた。


「今回の大規模討伐、ちょっと心配だったが問題は無さそうだな」


「お前が何を根拠にそう言っているのか、大体解る」


「あれは確かに驚いたね。噂に関しては半分信じていなかったんだが、実際に見たら一発で本物だと解ったよ」


人族のAランク冒険者達は会議が終わったと、ゼルートの従魔達をその魔で確認しており、ラームに関しては未だ少し半信半疑なところはあれど、本物だという事は視て解った。


「あれだけの従魔は従えているなら、噂も全て事実ってことか。はッ、しっかりとパーティーを組んでなかったら絶対に誘ってたな」


「私も同じ意見で。噂が正しければ、超万能タイプの冒険者らしいですからね。それに、単純な戦闘努力だけでもオークキングを一人で討伐出来る者を欲しがらない理由がありません」


獣人とエルフのAランク冒険者も従魔達の姿を生で確認し、それらを従えるゼルートがランク外の実力を持つ本物だという事を確信していた。


「パーティーメンバーの反応はどうだ?」


「俺のところは全員納得している。あれを見せられれば納得せざるをえないだろう」


「私の同じね。子供だからって嘗める様な反応は無し。てか、あれを見てまだ嘗めてたら私が拳骨ぶちかましてるしな」


「お前の拳骨洒落にねんねぇーーからほどほどににしてやれよ怪力女。俺んとこもそんな阿呆はいないな。まっ、俺も含めて摸擬戦をしたいって奴はいるけど」


「あなたのパーティーは血気盛んですね。私達はそもそも魔力を感知するのに特化しているので全員問題有りません。というか、魔力を完全に感知出来る者ならば、彼を目の前にして逆らおうとは基本的に思えないでしょう」


エルフの冒険者に四人が反応する。


他の四人やそのパーティーメンバーを含めても、彼女に総合的な魔法の腕で敵う者はいない。

そんな彼女が逆らおうとは思えない程の魔力を持つゼルートに更に興味が湧く。


「一体どれ程の魔力を持っているんだい?」


「正確な魔力量は視てみない事には解りませんが、私は彼以上の魔力量を持った者と会った事がありません」


「ッ!!?? 流石にそれは冗談・・・・・・じゃない、みたいだな。という事はだ、マジで魔法の方が得意ってわけか」


五人ともゼルートの決闘の件を知っていたが、先程の摸擬戦を見る限りでは接近戦の方が得意な様に見えた。


「どちらが得意というのは本人しか解りませんが、私は才能という点に関しては魔法の方が上だと感じました」


「あの体術ですから底をみせていない様に思えたんだが、魔法の腕が更に上とはな・・・・・・全力を見ていないから確実とはいないが将来的にはSランクに届くだろう」


「でしょうね。というか、今Dランクなのも疑問なんだけど。流石に一気にBやAランクに上げるのは周囲から反感を買いまくりだと思うけど、Cランクまでなら特例で上げることは可能な筈よね」


過去にゼルート程ではないが吐出した実力を持ったルーキーが現れた事は何度もあり、その際には短期間でCランクに上がった例もある。


「単純に上を目指す気が無いんじゃないかな? 過去の話を聞く限りお金に困ってなさそうだし」


「俺も同じような雰囲気を感じたぞ。冒険者になりたてのルーキーが発している成り上がってやる!! って気力が感じられないな」


事実、ゼルートには積極的に上のランクを目指そうという考えは無い。


「他のルーキーからしたら嘗めてんだろって思うっちゃんだろうなぁ。でも、それだけの実力があるんだから仕方なといえば仕方ないね。冒険者は基本的にお互いの生き方に関しては不干渉だし」


よっぽど素行に問題のある冒険者に関してはギルドが介入する場合があるが、酒好きや賭け事好き等に関しては冒険者同士で合っても注意することは煙たがられる行為。


ただ、やり過ぎれば自然と制裁は下る。

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