少年期[431]Cランクだからあれで済んだ

「相変わらずゼルートの言葉は相手の心をグサッと抉るな!!」


「俺としては正論を言ってるだけなんですけどね」


「嘘付くなって。相手がどんな風に感じるのか分かった上で言ってるんだろ」


「ははは、バレてましたか。そうですよ。まだ冒険者に成ったばかりのガキに上から真っ当な事を言われれば、自分に自信とプライドを持っている相手には肉体的以上に大ダメージでしょうから」


グレイスはゼルートの口端が少し吊り上がってるのを見抜き、正論だけをただただ言った、なんて事は直ぐに嘘だと解った。


ゼルートは直ぐに嘘だとバラし、自身の本当の考えを話す。

それを聞いたグレイスとコーネリアとアレナはベテランの心の抉り方を良く解っているなと感心すると同時に、抉られる相手に同情する。


(冒険者を長く続けている奴ほど、ランク関係無しに無駄にプライドが高い奴が多いからな。そういう奴らにとってゼルートは天敵に近いだろうな。容赦無く的確に心を抉る正論をぶちかます。大概は途中で襲い掛かっちまうもんだが、実力を隠すのが上手いゼルートを完全に読める奴はそうそういない。だから犠牲者が止まる事は無いが、それは絡んだ奴自身のせいだからゼルートに全く非は無いんだけどな)


(歳のいったベテランだけじゃ無く、才能があって天狗になっているルーキー達にとってもゼルート君は最悪な相手でしょうね。世の中に飛び抜けた才を持つ新人はある程度現れますが、ゼルート君ほど非凡な才を持った者はこの先現れる事は無いでしょう。それを考えると、ゼルート君と歳の近い冒険者は歳が近いというだけで苦労しそうですね。どんな功績を残そうと、必ずゼルート君と比べられてしまうのですから。そこで腐るか腐らないかが分岐点でしょう)


(はぁーーー、私本当にゼルートの奴隷に、仲間になれて良かったわ。Aランクで歳が離れているとはいえ絶対に功績の大きさで比べられる時が来る。元の面子でそこら辺を気にするのがちょっと居たから、皆には悪いけど今の方が色々と都合が良いのよね。ゼルートって基本的に容赦なくバッサリと斬り裂いちゃうから本当に立ち直れなくなるルーキーやベテランがいても可笑しくないし)


ルウナだけはゼルートの様な考えをサラッと言えた方が身のためだと考えていた。


「それにしても、ギルドマスターはわざと俺のパーティーをグレイスさんとコーネリアさん意外とは組ませなかったんですかね」


「だろうな。あの勝負を見て馬鹿な真似をする奴はこれ以上現れないと思うが、念には念を入れてという事だろう」


グレイスは先の骨を掴んでガブリと肉に喰らい付く。


(この街にギルドマスターとしては、ゼルートの実力を証明する相手がそこまで名が売れていないCランク冒険者で有難かっただろうな。BやAじゃ、それこそ高位の回復魔法やポーションを使わなければ治らないような傷を負っていた可能性がある。それはゼルートにとって被害は無くとも、今回の戦いの中でいつか起こるかもしれない異変の時に死者が出る可能性に繋がる)


ゼルートが自身よりも強く、多彩な攻撃方法を有している事は解っているが、それでもグレイスはあれだけのモンスターを一匹も後ろに通さずに倒す事は流石に不可能だと思っていた。


事実、流石に埒外で規格外で化け物級の実力を持つゼルートであっても、一匹も後ろに通さないのは不可能。


ただし、ゼルートのパーティー全員で挑むのであれば話はまた変わってくる。


(そういえばあの三体の従魔以外にオーガの亜種がいるって言っていたな。確かガレンは毎日そいつと訓練してるんだよなぁ・・・・・・・かぁーーーーッ、うっらやましいぜ!!!)


ゼルートの従魔という時点で飛び抜けた戦闘力を有している事は絶対であり、更にオーガの亜種ならば完全にパワータイプだと思い込んでいるグレイス。


(そいつもそろえば、あれだけの数のモンスターも全滅させられるかもな)


全滅する事が出来るかもしれないでは無く、出来る断言できるほどの戦力が集まることになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る