少年期[389]見た目は似合う

メニューを頼み、料理が届くまでの間にもゼルートはレイリアの友達から質問攻めにあう。


「オークキングと戦ったって聞いたんだが、どの攻撃が一番強かった。それと、最後はどんな攻撃で倒したんだ?」


「大剣に岩を纏い、全力で繰り出した突きによって纏っていた岩が跳び出したんだが、あれはもはや破城槌って感じの攻撃だった。それがオークキングの攻撃の中で一番強い攻撃だったと思う。あと、攻撃ではないけど岩を自分の体に鎧の様に纏う技はちょっと面倒に感じた。最後は氷属性の魔剣を使って腹を横に大きく斬り裂いて終わらせた」


ボットは冒険者の役割で言えば斥候の技能が高いのだが、体格も良いので威力が高い技を習得したいと思っており、ゼルートの話の中から何か参考になる物は無いか探っていた。


「護衛依頼は受けた事はりますか?」


「一回だけある。相手は貴族だったけどな。ちょっと護衛の対象が例外的な存在だったな。ヒョースさんも貴族社会の縮図で生活しているなら解ると思うけど、馬鹿な奴は本当に馬鹿だから」


「ず、随分とストレートに言いますね。そこまでゼルート君に喧嘩を売るような相手だったんですか?」


「喧嘩を売るどころか敵意を向けていた気がする」


「敵意、ですか。それは何と言いますか、護衛をしてもらう冒険者に向かって敵意を向けるなど常識ハズレにも程がありますね」


ヒョースも貴族の中に親が大きな権力を持っているだけで自分も権力を持っていると勘違いする馬鹿を何度か見た事があるが、ゼルートの話を聞いてそこまで馬鹿で阿呆な貴族の子供がいるのかと驚きを隠せなかった。


「女性でも強い冒険者はいるわよね!!」


「俺の仲間が良い例だ。そこら辺の男の冒険者よりよっぽど強い。迂闊にナンパしようものなら醜態を周りの人間にさらす様なものだな」


「随分な言い方ね。まっ、間違ってはいないけれど」


「ゼルートの言う通りだな。一度目は警告、何度も良い寄って来るなら潰す」


二人の圧倒的な自身にアリサは目を輝かせながら尊敬の眼を向ける。

それからアリサに質問の対象は二人に変わった。


「えっと、やっぱり冒険者の方達は怖い人ばかりですか?」


「どうだろうな? 見た目だけなら怖いというか厳つい人が多いけど、新人いびりをするような連中は大抵実力が伴っていない奴らばかりだからあまり気にしなくて良いと思う」


ゼルートの経験上、自身に喧嘩を売るものや邪魔をする者は大して実力を持たない者ばかりだった。

しかし冒険者ならばランク相応の最低限の実力を持っている訳なので、本当はあまり調子に乗らない方が身のため。

それでもゼルートは姉からのアドバイスを受けている者ならば問題無いだろうと考えている。


「そういえばゼルート、兄さんは学園で風紀委員をやってるのよ」


「学園の風紀を取り締まる的な組織か。兄さん、そんな面倒な事やってるの?」


「風紀会の人数はそこそこ多いんだ。だから毎日のように学園何の風紀が乱れているか確認する必要は無い。休日には街に繰り出す事も多いんだぞ」


ゼルートとしては兄に似合う組織だとは思った。見た目だけは。

クライレットはゼルートの体術も習っていたので、物理的に風紀を乱している者を押さえつける事も出来る。

そしてクライレットはゼルート程ではないが、悪意を持つ者に対しては容赦なくキレる。相手のバックボーン関係無く潰し、教師陣に差し出すクライレットが風紀会に所属しているお陰で学園内での風紀の乱れはかなり減った。

寧ろ暴力沙汰は殆ど無くなったと言って良いだろう。


「そういえば二人共、学園では異性にどれぐらい告白されたの」


「・・・・・・特に数えていなかったわね。ジェット、あなた知ってる?」


「お前他校の奴にも告白というか求婚されてたからな。最初の方は数えていたけど五十を超えた辺りから数えていないな」


「五十以上らしいわ。兄さんはどうなの?」


特に馬鹿正直に答える必要は無いのだが、クライレットは必死で過去の記憶を遡るが・・・・・・結局すべては覚えていなかった。


「友達が百近いと言っていた記憶はある」


「姉さんもだけど、そこまで多くの人を振っているのに告白してくる人がいるんだね」


自分なら自身が好意を持つ相手は今のところ恋愛に興味は無いんだなと思い、振られる事は目に見えているので告白は絶対に諦めているとゼルートは思う。

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