少年期[388]姉御な立場

「よう、レイリアじゃないか」


「あら、ジェットにヒョースにボット。それにアリサとジェイニ―じゃない。五人もここの食堂で夕食」


「おう。久しぶりに贅沢な夕食を喰おうって事でな。んで店に来てみればお前が冒険者の人達と一緒に居たから声を掛けに来たんだよ。あっ、こんばんわっす、クライレット先輩」


ジェットがクライレットに頭を下げると後ろの四人も一緒に頭を下げる。

それに対してクライレットは堅くならなくて良いと手で促す。


「ここは学校の外だ。変に堅い態度を取る必要は無い。いつも妹が世話になっている事だしな」


「いえいえ、俺達の方がレイリアに世話になりっぱなしですよ。なぁ?」


「そうだね。レイリアには人やモンスターとの戦い方については本当に世話になっています。未だに僕たちはレイリアに一本も取れないしね」


ヒョースは嫌味などなく、尊敬に近い感情をレイリアに向けながらクライレットにレイリアの凄さを伝える。


「ヒョースの言う通りだな。我ながら情けない話だが、未だにレイリアから一本も取れていない。だからこそ学ぶべきところがあるんだけどな。アリサとジェイニーもレイリアに教えて貰うようになってから強くなったしな」


「そう言いながら私はあんたにまだ殆ど勝ててないけどね。でもレイリアには戦い方を教えてくれたことに物凄く感謝しているわ」


「わ、私も最低限の護身術は覚えられたからレイリアちゃんには物凄く感謝しています」


自分の姉が同級生に褒められているところを見て、ゼルートも嬉しくなる。

そしてレイリアが同級生にとって姉御の様な存在だと解り、少し笑ってしまった。

だがそれはそれでしっくりくるとも感じ、姉らしいなと思う。


「そうか、随分と慕われているんだな、レイリアは」


「その言葉はそのままそっくり兄さんに返します」


兄が同級生にどう思われているかを知っているレイリアは意味有り気な顔をクライレットに返す。


「ところで、そっちの冒険者はもしかしてお前の弟か?」


「良く解ったわね」


「お前があれだけ自慢してくるんだから本物を見ていなくても何となく解るっての」


ジェット以外の四人も苦笑いになりながら頷く。


レイリアが過度に自分の事を同級生に自慢しているのを知り、ゼルートの顔は恥ずかしさでほんのりと赤くなる。


「姉さん。あまり恥ずかしい事はしないでよ」


「良いじゃない。あなたは本当に凄いんだし、私は自慢の弟だってもっと自慢したいのよ。兄さんだって自慢しているわよ」


「僕は常識程度にだ。レイリア程大げさに自慢はしていない」


「大げさにじゃないわよ。事実よ、じ・じ・つ!!!」


どちらにしろゼルートにとって恥ずかしい事に変わりは無かった。


「なぁ、相席しても良いか」


「へっ? あぁ・・・・・・私は別に良いけど、ゼルートはどう?」


「俺は別に構わないよ。アレナとルウナも良いよな」


「全く構わないわよ。人数が多くなって賑やかになるんだしね」


「私も気にしないぞ」


ゼルート達の許可が下りた事でジェット達は席へと座り、一部はメニューを見始めるがジェットは早速ゼルートに質問する。


「なぁ、お前が今度ルギーズの代理人と戦うんだよな。自分ではどれだけ勝率があると思ってるんだ?」


「相手がDランク限定なら多分負ける事は無いと思う」


「すげぇーーー自信だな。やっぱりDランク程度じゃ相手になんないって感じなのか?」


「俺も同じDランクだけど、相手の方が歳が上だとしても今まで戦ってきた相手の数は俺の方が上だ。それを考えれば負ける事は無いと」


実戦に勝る訓練は無い。

ゼルートはこの世界に来てからそれが良く解った。


「経験の数か。確かにそれは俺もレイリアから言われて実感したな。そういえば、ゼルートにも何か必殺技的なのはあるのか?」


ジェット以外にもヒョースやボットも期待を込めた目でゼルートを見る。


「必殺技って呼べる程大層なものは無いと思うけど、多少なりとも意味のある技はあるかな」


大体期待していた通りの答えが返って来た事でジェット達のテンションが上がる。

そんな男子たちに対して女子二人は冷めた目で見るような事は無く、アリサとジェニーも自分達にも必要だと考えていた。

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