少年期[387]同じ賭けでは?

ゼルート達がレイリアとクライレットと集まり、王都を観光した日。

出会った時にまずゼルートは二人に紫電の刃を渡す。


二人はゼルートから渡された短剣が業物だという事は直ぐに解ったが、それでも素材にどんな魔物の牙や爪などが使われているかまでは解らなかった。


ゼルートから紫電の刃に使われている素材を聞かされた二人は声を出す事無く驚くという器用な真似をしながら大きく口を開けて固まる。

普段の二人からは想像出来ない顔にゼルートは笑いたい気持ちを抑えながらもゲイル達従魔をレイリアとクライレットを紹介する。


その時にラガールが紫電の刃の素材として使われた牙の持ち主の母親である事を伝えられる。

すると直ぐに二人はラガールの娘であるラルに向かって感謝の言葉を述べならが頭を下げる。


貴族の子息、令嬢である人間が子供のドラゴンに頭を下げている・・・・・・傍から見ればどういった状況なのかほぼほぼ理解出来ない光景になっていた。


当然ラルは二人に頭を上げる様に促す。

ゼルートに素材を渡したのは自分の母親であり、自分は何もしていないので頭を下げられても困るというのがラルの心情だった。


二人は紫電の刃に魔力を流してレイリアとクライレット専用の短剣となる。

それからは特に問題もなく王都の観光は進んだ。

とはいってもゼルートにとっては珍しく感じる者は多かったが、前世程の楽しさがある訳では無い。


なので今回は仲間と兄、姉と一緒に街を周る事、それが楽しいと感じる理由。

ただ、それでも一つだけゼルートが楽しいと感じる事があった。


それは・・・・・・剣闘。

簡単に言えば冒険者達が同業者同士の決闘の際に起きる賭けの大規模バージョン。


戦う事がどちらかと言えば好きなゼルートは戦いを見る事も比較的好き。

なので剣闘試合は見ていて飽きないものだった。

そしてゼルートには鑑定眼があるので、遠目からでも剣闘士達のステータスが見えている。


その日は賭ける事は無かったが、見れた分の剣闘士のステータスや習得しているスキルは覚えているので、後日賭けに来ようと決めた。


クライレットはゼルートをカジノにも連れていこうとしたが、レイリアがまたゼルートには早いと言って止めた。

剣闘試合も賭ける事は出来るので何が早いのかゼルートには全く解らなかったが、レイリアの真剣な顔に何かを思い出したクライレットは「確かにまだゼルートには早いかもしれないな」と言い、カジノに行くのは中止となった。


因みにアレナはなぜレイリアがゼルートをカジノへ連れて行くのを止めたのか解ったが、ルウナはゼルートと同様に賭ける部分は同じなのに何が違うのか解らなかった。


そして夕食はゼルートが金を全額出すという事で、二人のお薦めの料理店に行くことになった。

ゼルート達が初日に入った店と同じようにあまり冒険者の格好をした者はいない店。

だが、周囲を見渡すとクライレットやレイリアと同じ年頃の者がそこそこいた。


「ここって学生が来れる店なの?」


「基本的には爵位が高い家の子息や令嬢は月一で来るようなところだ。ちなみにここの店長は元冒険者らしくてな。不当に料理を侮辱した生徒を殴り飛ばした事があるらしい」


「・・・・・・俺が言うのもなんだけど、無茶苦茶だな」


「僕もそう思うよ。けど、この店はどうやら貴族の当主達も度々訪れる料理店なんだ。だからその殴り飛ばされた生徒もその情報を知っていても可笑しくは無いんだが、その日に何か気に入らない事があったのかその情報を忘れていたらしい」


「その生徒、親に事の顛末を話したら親が子供をボコボコにしたらしいわ」


店長にぶん殴られ、親にまで殴られる。

悲惨と言えば悲惨だが、話を聞けば生徒が自分勝手な感情に任せて料理を侮辱したのが原因。

同情の余地は一切ないなとゼルートは思い、メニューに目を通す。


すると、一つの集団がゼルート達の方へ向かって来た。

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