少年期[366]代理決闘
学生の護衛依頼を終えたゼルート達は翌日、いつも通り昼過ぎにギルドへ向かった。
するとゼルート達を見つけた職員が一通の手紙を持ってゼルートの元へ走って来た。
「ゼルートさん、こちらを」
「手紙・・・・・・誰からですか?」
「おそらくゼルートさんのお姉さんからだと思われます」
差出人の名前の部分を確認するとそこには確かにゼルートの姉の名前、レイリアの名前が書いてあった。
「本当だ。すみません、わざわざ有難うございます」
「いえいえ、仕事ですから気にしないでください。それでは」
用事を終えたギルド職員は早足に仕事へ戻る。
そしてゼルートは受け取った手紙をその場で読もうとする。
「ゼルート、そういうのはあまり人がいない場所で読んだ方が良いんじゃないの?」
「昼間のギルドって時点で大して人がいないから大丈夫だ」
冒険者が仕事に出ている時間帯だとはいえ、ギルド職員は勿論ギルド内で働いており、今日を休憩にあてている冒険者も少なからずいた。
だがそれらをゼルートは一切気にせず封を切って手紙を取り出す。
「姉さんが手紙を出す時は驚くような事が書かれてあっても極秘情報的な事は書かれてないよ。基本的には」
過去に姉から送られた手紙の内容を思い出す限り重要だと思える内容は無く、学園での日常話が殆どだった。
なので今回もそこまで周囲にバレてはいけない内容は書かれてないだろうとゼルートは判断した。
「なになに・・・・・・・・・・・・ははぁーーー。まぁ、そういう事もあるだろう。んで・・・・・・・・・・・・へぇーーー。そんな感じで。てことは・・・・・・だよな。流れ的にそういう頼みだよな」
「頼み事なのか?」
「そうだな、頼み事だ。けど結構重要といえば重要な頼み事だな」
読み終えたゼルートはアレナとルウナに手紙を渡し、手紙を受け取った二人は黙々と内容を読む。
「・・・・・・よくある事、ではあるわね。それにしても解決方法が何と言うか・・・・・・」
「完全にゼルートの力を頼る気満々な内容だな」
レイリアから届いた手紙の内容。
それは自身に求婚してきた相手がいるが、それを自分は拒否した。
しかしそれでも求婚して来た貴族の男は諦めなかった。
相手の親の爵位が高いという事もあり、無茶な手段に出れない。
それならば貴族らしく一対一で決闘をし、その結果に求婚を受け入れるか自身の要求を呑ませる。
そう考えたが相手がその案を却下した。
(情けない男だな。ただ・・・・・・レイリア姉さんとクライレット兄さんは元々魔法の適性はあったし、戦い方とか素手での戦い方とかは俺が出来る限りアドバイスしたからそこら辺の奴じゃ相手にならない。仮にその貴族の男がエリート教育を受けていたとしてもレイリア姉さんの方が実戦経験は多い筈。・・・・・・人の事は言えないが、レイリア姉さんも結構森の中に入って魔物を倒していたらしいしな)
貴族の令嬢が戦いが出来るメイドと一緒とはいえ、森の中に入って魔物を倒す。
基本的にはあり得ない行為だが、ゼルートの両親は二人共元冒険者と言う事もあってレイリアと一緒に行動するメイドの力量を確認してからは特に森に入る事を止めなかった。
(貴族の学校とは言っても、個人の実力を披露する機会はちょいちょいあるだろう。そうでなくても俺やレイリア姉さんにクライレット兄さんは五歳の時のお披露目会で盛大に家の爵位が上の貴族をぶっ倒している。その噂を聞けば直接の戦いを避けても可笑しくは無いだろう)
そうして決まった対決方法は両者がスカウトした冒険者を戦わせる。
因みに制限としてスカウトする冒険者のランクはDまで。
(貴族たるもの人を見る目も優れていなければ駄目じゃないかしら? って感じで挑発したのかもな。確かに個人的に持っているお金を考えれば相手の方がランクの高い冒険者を雇えるかもな)
ゼルートの考えは間違ってはいないが、両家の総資産を考えればゼルートの実家の方が多く資金があるため、子供に甘いところがあるゼルートの両親は理由が理由ならば喜んで娘に資金を援助する。
「取り合えず了承の手紙を書くか」
ギルドから手紙を一つ買い、筆を借りてゼルートは最近の出来事なども含めて了承の文章を書いた。
そして受付嬢に最速でレイリアの元へ届く手段を頼んだ。
手紙を届ける速さによって料金が変わるのだが、ゼルートにとっては些細な問題であった。
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