少年期[367]初めて聞く用語

レイリアからの返事が返ってきたゼルートは後日、早速ドーウルスを出て王都へと向かった。


「・・・・・・ゼルート、この速度で走り続けていたら二週間よりだいぶ早く着くのだけど」


ゼルートが目的地が遠い場所へ向かう時に使う土魔法で作られた簡易トラックの速度は安全を考慮して時速三十キロ。

しかも燃費が良く、圧倒的なまでの魔力量を持つゼルートは一日の大半は動かし続ける事が出来る。


なのでいくら王都までの道のりが長くとも、一週間も掛からず王都へ到着する。


「確かにそうだろうな。さっきすれ違った冒険者達がすっげぇーーー、驚いた顔でこっちを見てたし。取りあえず早く着いたところで損がある訳でもないんだしレイリア姉さんに頼まれた以来の日までのんびり王都を観光してれば暇は潰れるだろう」


王都を観光してみたい。勿論その気持ちもあるが、ゼルートとしては自身と戦う事になるであろう冒険者を出来れば見つけたいう気持ちもあった。


(向こうはある程度の金持ちだろうから、ソロやパーティー単位で活動しているDランクの冒険者じゃなくてクランに所属しているDランクの冒険者を決闘の代理として雇うだろうな)


団員のメンバーは勿論ギルドの依頼を受ける事は出来るが、クランにはギルドを仲介せずに依頼主から依頼を頼まれる事もある。

そうなった場合、ギルドが本来は依頼主から受け取っている仲介料まで得る事が出来、収入が確実に多くなる。

その他にも利益が多々あるが、パーティーの人数が多くなった冒険者達がクランを設立する事は多い。


勿論クランを設立すれば普段の冒険者生活では関わる事のない経営という仕事が増えるので、すべてのクランが上手くいく訳では無い。


「なんだか楽しそうな顔をしているなゼルート。そんなに相手の冒険者と戦うのが楽しみか?」


相手の冒険者のランクがDと決まっているため、ルウナとしてはそこまでゼルートとタメを張れる冒険者は普通に考えていないとしか思えない。

にも拘わらず、口端を少し吊り上げているゼルートの表情が気になった。


「いや、別に楽しみって訳じゃない。ただ特殊な環境で育った冒険者がどれぐらいの実力を持っているのかが気になるんだ」


「特殊な環境って・・・・・・もしかしてクランの冒険者が決闘代理の相手として出てくると思ってるの?」


「レイリア姉さんは嫁さんにって狙ってる奴は親の爵位は俺のとこより上だからそこそこの金は持っている筈だ。だったらクランの中でしっかりと育てられた冒険者の方がソロやパーティーで活動している冒険者より強いかもしれないだろ」


「まぁ、そういう事もあるわ。養殖の冒険者だっている訳だしね」


「養殖?」


今まで聞いた事が無かった冒険者用語を聞き、ゼルートは首を傾げながらアレナにそれがどういう意味なのかを問う。


「貴族の次男や三男も大手のクランに入れてそのクランに大金を払う事で安全マージンを取らせて育てる事よ」


「な、なるほど・・・・・・確かに養殖だな」


自分が知らなかった冒険者事情を聞いたゼルートは養殖と言う用語の内容を驚きながらも理解し、出来ればそういった手合いとが決闘代理にはなって欲しくないと願う。


「ゼルート、相手が養殖でなければいいやと思っているかもしれないけど、相手が大手のクランならそれはそれで面倒事があるかもしれないのよ。相手がDランクなら絶対にあなたが勝つのだから」


「えっ!!??」


「大手のクランなら下手な貴族よりもよっぽど力を持っているのよ。まぁ・・・・・・クランのトップがまともな人ならば大丈夫でしょうけど、捻くれた性格の冒険者なら面倒事に発展する可能性はある筈よ」


アレナから不吉な可能性を聞いたゼルートは直ぐに気持ちが切り替わりクランに育てられた冒険者ではなく、ソロかパーティーで行動している冒険者が相手になって欲しいと願い始めた。

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