少年期[346]普通に考えれば可笑しいな
「ゼルート君って本当に冒険者になって一年経っていないの?」
「はい、まだ精々半年ぐらいだと思います。ただ、言ったかもしれないですけど親が元冒険者なんで知識だけはちょいちょい知ってるんですよ。後今よりもガキの時にが魔物がいる森に入って魔物と戦っていたんである程度現場で注意しとかなきゃいけないところも多少は分るんで」
「そういえばそんな事を言っていた気がするね。ゴブリンが作る毒は色々と厄介だからね。特に冒険者になったばかりの新人達には毒に耐性を持つマジックアイテムやスキルを持っていないからポーションで対処しないと結構ヤバいのよね」
稀に神から授かるスキルの中に毒耐性のスキルを持っている新人もいるが、本当に稀なため毒を喰らった場所から街までの距離が遠いとそのまま死んでしまう。
「ゴブリンは馬鹿だけど頭が悪い訳じゃないですからね。進化し続ければ人の言葉を喋る個体もいますからね」
ゲイルが倒したゴブリンキングは完全なものではないが、人の言葉を喋っていた。それだけで魔物の中では知能が高い事がうかがえる。
「そういえば君はオークとゴブリンの大群の大討伐に参加したんだったね。それで君はオークキングを単独で葬った」
たった一人でランクBにあたるオークキングを討伐した。
その言葉に既にゼルートの強さを疑っていない生徒は前方を注意していた者でさえ振り返って固まる。
ヒルナはその討伐に参加していたが、ゼルートとオークキングの戦いを見ていた訳では無いので実のところその話に対して半信半疑だった。
しかしドーウルスから遠く離れた王都の人間がその話を信じているため、ヒルナの中でオークキングを単騎で討伐したという話が現実味を帯びて来きた。
「・・・・・・早いけどちょっと休憩にするか?」
自分の過去話に夢中になっては周囲への警戒を怠ってしまうだろうと思い、ゼルートはフーリアに小休憩を提案する。
「・・・・・・そうですね。これからの探索を考えるとそのほうが良さそうです」
一旦小休憩をする事になり、ゼルートが土魔法で作った椅子に座りながら少しの間生徒達を気を抜く。
「さて、みんな俺がオークキングと戦った時の話が知りたいんだよな?」
生徒達は残像でも現れるんじゃないかと思えるぐらいの速さで首を縦に振る。
「つってもそこまで面白い話は無いけどなぁ・・・・・・とりあえずあれだった。オークも人型のモンスターだから性欲の事以外にもある程度知能があるんだよ。だからゴブリンキングと同様に人の言葉を話していた。それでオークキングはバカでかい大剣を使っていた。そもそも腕力が強いモンスターでもあるから一撃でもモロに喰らったらアウトだったな」
戦っている最中は戦いを楽しんでいたが、よくよく考えればヤバい相手と戦っていたんだと今更ながらに思い出す。
「それとオークキングは大剣だけじゃなく土魔法も使っていたな。ほんの少し使えるってレベルじゃなく上手い事武器にしていた」
「お、オークメイジでもないのに魔法を使うんですか!」
「ある程度は使えていたんだと思うぞ。ただ俺の速さをみて詠唱してたんじゃ魔力の無駄遣いだと思ったのか、魔法を唱えるんじゃなく土の魔力で鎧を造ったり大剣に纏わせたりしていたな」
「攻撃力や防御力を向上させたって事なのか?」
「そういう見方で良いだろう。でも、大剣に岩を纏わせたのは少し違うな。あれは斬撃から打撃に変えて攻撃力を上げる為じゃなく技の準備だった」
(あれは本当にえげつなかった。俺はバカな方法でやり返したけどな。でもあの時は強化系のスキルは無意識に全部使っていたかもしれないな)
岩には岩で返すという思考から自身も腕に岩を纏ってやり返したゼルート。
結果はどちらの岩も砕けた。
「ど、どんな攻撃だったんだ」
「纏っていた岩の形は剣って言うよりもはや槍だったな。そんで俺に全力で突きを放ってくるんだ。そしたらその突きの加速も相まって俺にスゲぇ速さで飛んできた。あれは投擲とかそんなレベルじゃなく破城槌だったな」
「・・・・・・その岩の破城槌に対してゼルート君はどうやって対処したんだい」
「結構激しい戦いだったから俺もテンションが上がって熱くなっていたんだ。だから俺の自分の腕に岩を纏った。こんな感じでな」
ゼルートはその場で右手に岩を纏う。
その自然な魔力の応用技に生徒達は感心したような声を上げるが、フーリアとミルシェにヒルナはそれぞれ違った驚き方をしていた。
「そ、それでどうやって岩の破城槌を対処したんですか!」
「俺が持っている強化系のスキルを使って全力でぶん殴った」
衝撃の発言に生徒達のテンションは昂り、フーリア達はなんて非常識なんだと思いながら引き笑いになっている。
「ぜ、ゼルートは怪我したりしなかったの?」
ヒルナは高速で飛んでくる岩の破城槌とゼルートの冒険者が持っている強化スキルを全て使い、岩の拳で殴ったのを想像した。
そして想像の中では流石にゼルートも無事では済まない状況になっている。
「俺自身はそこまでなぁ・・・・・・拳に纏った岩は粉々に砕けて多少痺れたかもしれないけど怪我は無かった。その後は魔剣を使って終わらせたと思う」
(普通の剣で戦ってたら少し長引きそうだったし)
愛用のフロストグレイブで岩の鎧ごと一閃。
最後の一撃はゼルートの記憶にそこそこ残っていた。
「へぇーー。ゼルートは魔剣を持ってるんだね。結構レア度高い感じの?」
「ああ、結構高い感じだな」
ゼルートがそう答えるとヒルナはそれ以上冒険者のマナーとして無理には訊かない。
そして数分後にゼルート達は再び演習を開始する。
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