少年期[345]チーム分け

朝食を食べ終えたゼルート達は宿の人から昼食を受け取り、早速街の外へと出て森へ向かう。

そして一定の距離を進んでからチーム分けを発表された。


護衛の面子はソン、シェンナ、アレナ、ラル教師一名。ダン、ルウナ、ゲイル教師二名。ゼルート、ミルシェ、ヒルナ、ラーム、教師一名といったチームで分かれた。


その結果にダンは何か言いたげな顔をしていたが、仕事中だからか特に文句を言う事は無かった。

そしてその場からそれぞれ別行動を開始し、ゼルート達は五人の生徒の護衛として森の中に入る。


生徒達のタイプは長剣を扱う生徒と槍を扱う前衛が二人。

そして弓を扱う生徒と攻撃魔法を軸にして戦う後方が二人。

最後に数が少ない回復魔法を扱う事が出来る後方支援に徹している生徒が一人。


(個々の役割だけ見れば整ったチームだよな。ただ前衛二人と魔法使いの後衛は確か俺が摸擬戦で倒した相手だったか)


ゼルートが自身の護衛だと解った三人は特に負の感情は持っておらず、自分達に圧勝したゼルートがいるならば安心だと思っており、今回の演習で自分達は戦えるというところを見せてやろうと考えていた。


「集合時間は午後の五時ですから、引き返す時間は四時より少し前ぐらいが良さそうですね」


「その懐中時計ってフーリアさんの物ですか?」


「いいえ、これは学園から借りている物です。なので紛失したり動かなくなってしまうと給料が大幅カットされてしまいます」


どこでも時間を確認できて持ち運びが出来る懐中時計は需要が高い。

しかし需要が高い割には作れる人物は少なく、ダンジョンの宝箱から入手できるケースもあるが、決して多くは無い。

なので素材として使われている物にもよるが、どんなに安くても金貨十枚程度の値段になってしまう。


「な、なるほど。それは結構な痛手ですね」


「そういう訳です。それより、護衛の役割として念のため確認しておきますが、ゼルート君とヒルナさんに従魔のラーム君が前衛、私とミルシェさんが後衛でいいでしょうか?」


「俺はそれで大丈夫だと思います」


「そこまで接近戦が得意って訳じゃないけど、かといって遠距離攻撃が得意かといえばそうじゃないから今回は前衛として働かないとね」


「私は攻撃魔法をメインで戦うのでフーリアさんと後衛で戦うのが一番適しているかと」


三人はフーリアの考えに文句は無かった。それは生徒達も同じだったが、従魔のラームだけが本当に戦えるのか疑問に思っていた。


(現在は人の姿じゃなく通常のスライム体型で動いてるからな。ラームの事を何も知らない人にとっては戦えるのか疑問に思っても仕方ないよな)


それでもゼルートとしては文字通り規格外なスライムであるラームは頼りになる仲間なので、その実力を多少は生徒達に多少は知って貰ってラームへの信用を獲得したいと思っていた。


 


森の中に入ってから三十分、ゼルート達は殆どの者が知っていて女の天敵であるゴブリンの集団と遭遇する。

生徒達は授業で習った通りの陣形で戦いを始め、多少の時間はかかったものの一人も大怪我を負う事無く戦いは終わった。


だが戦いが終わってから一つ気になっていた事があったゼルートはゴブリンが持っていた短剣を拾っておそるおそる匂いを嗅ぐ。


「・・・・・・おえっ、くっさ!!! それにこの匂いは・・・・・・」


短剣に染みついている液体から何かを察したゼルートは短剣によって切り傷を負った生徒の方を見て、鑑定眼を発動させた。


「やっぱりか・・・・・・おい、このポーションを飲んでおけ」


「えっ。あの、これぐらいの傷だったらポーションを飲まなくても大丈夫ですよ」


「こいつは傷を治すポーションじゃなくて毒を治すポーションだ。お前が負ったその切り傷についていた液体は多分だけどゴブリンの糞か尿に毒草を混ぜたものだ。鑑定系のスキルを使って勝手にお前の状態を見させてもらったが、やっぱり案の定毒状態になっていた。今体に異変を感じないって事は遅効性のものかもしれないが、放っておいたら面倒な事になりそうだから今の内に飲んでおけ」


「・・・・・・ほ、ほんとだ。わ、分りました。頂きます!」


ゼルートから渡された毒治しのポーションを受け取り、生徒は苦いのを我慢して一気に煽った。

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