少年期[347]やはり先生の仕事は多い

一日目の演習が終了し、ゼルート達は前日程酒は飲まずに本日の内容について話し合っていた。


「今のところはまぁ・・・・・・悪くないと思いますよ」


昼前の休憩後、ゼルートが護衛をした生徒達はブラウンウルフとブルーキャタピラーにホーンラビットと戦った。

全ての戦いが無傷で済んだ訳では無く、経験の少なさから現れる隙も多々あった。

しかしそれでも学園で学んだ知識を総動員して必死に戦い、勝利を収めた。


そして戦いを終えた場所で解体を済ませ、手に入れた素材や魔石はギルドで換金して等分し、生徒達に配られた。


「まぁ、経験の少なさから考えれば良いのか? ただまだ学生だからか、自分が一番多く魔物を倒して成績を上げたいと考えているのか、少し突っ走ってしまう奴がいた。あれだ、生徒達とゼルートが摸擬戦をした時に一番最後に戦った男だ」


「ガントの奴か。あいつの家系を考えると仕方ないかもしれないが、だからといって連携を崩して良い訳では無いからな」


「家が特殊な家系なんですか?」


武闘派貴族なのか、それとも男子は全員何かしら戦う職業に就いているのかと少しゼルートは気になった。


「そこまで特殊では無くちらほらといる家系だ。代々ガントの家は長男が軍に所属してるんだ。もちろん長男の適性によって事情は変わるらしいけどな。それでガントの家の長男が中々に優秀な奴らしくて冒険者のランクで強さを表すなら十八歳で既にCランクの上位はあるらしい。それに授かったスキルが連戦に向いているものらしいからもし仮に戦争が起こった時にも活躍するだろうと言われてるんだ」


ボウドからの情報に護衛の面子は全員少し驚いた表情でそれは凄いと頷いていた。


(十八歳でCランク上位程って事は、将来Bランク上位。もしくはAランク程の強さになるかもしれないって事か。それに連戦向きのスキルか・・・・・・安直な名前だけど、体力持続とかそんな感じのスキルか?)


適当に思い付いたスキルだったが、ゼルートの考えはドンピシャだった。

ガントの兄、ファスターは剣と風魔法の才能が有り、本人は努力を惜しまない性格。それに加えて体力持続のスキルのお陰で普通の貴族と比べて圧倒的に訓練を続けられる時間が長い。

そしてその成果もあって軍のなかでも順調に成果を出している。


そんな長男のファスターに憧れている三男のガントは少しでも速く強くなりたいと焦っているところがある。

それが最近になって顕著に表れ始めた。


「中々優秀そうですね。それでそんな兄貴に一歩でも近づきたいと焦って突っ走ってしまうって事ですか?」


「そんなところだろうな。俺はその焦りが空ぶって面倒な事にならないか心配だけどな」


「ボウドの言う通りだぜ。元気があるのは若い奴らの特権だが、突っ走り過ぎてお怪我でもされたら責められるのは俺達だからな。最悪クビになる可能性だってあるしよぉ」


「ほんとそれよねぇ。こっちだって注意して尚且つ目を光らせてはいるけど生徒が魔物とぶつかる前に何とか出来る事は結構少ないのよ。それに突っ走った一人だけに注意を裂く訳にもいかないし」


先生達の愚痴にゼルート達は納得出来る部分は多かった。


(そりゃ急に動かれたら素の身体能力で勝っていたとしても魔物とエンカウントした距離を考えればその間に割って入ったり、生徒を無理矢理後ろに下がらすのは難しいだろう。それに注意をそいつだけに注ぐが良くないってのも解る。先生だから常に生徒に危険が及ばないか周囲を警戒して危険が襲い掛かって来た危険から生徒を守るのが外での仕事だし・・・・・・だけで貴族の親にとってはそんな事全く関係無いんだろうなぁ・・・・・・)


勿論そんな貴族ばかりではないが、過去のそういった件がきっかけで責任問題を問われてクビにされた者がいるのも事実だった。

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