少年期[315]貴獣の執念

「さて、ゼルート様お言葉を借りるなら、これからは私のターン・・・・・・といったところか」


構えを取ったゲイルは相手の隙を窺う・・・・・・なんて事はせずに自身のタイミングで仕掛けた。


「ふっ!!!」


「グラッ!!??」


気持ちが昂り始めていたゲイルは無意識の内に身体強化のスキルを使っていた。

対峙していた相手のスピードが急激に上がった事で最大限にゲイルの攻撃を警戒していたサーロングタイガーだが、動きながら右の拳を撃ちだすだけ。ブロードストレートを全く躱す事が出来ずにまともに喰らってしまった。


それからのゲイルの攻撃は一切途切れる事が無かった。


肩を砕き、足の骨を蹴り折る。噛みつきが迫ればスピードを上げて懐に入り込みアッパーの打ち方でボディーが炸裂。

気付いた時にはサーロングタイガーは既に足に雷を纏っていなかった。


もう少しじっくりと戦えばゲイルの言う窮鼠猫を噛む状態になるかとゲイルは一瞬思ったが、直ぐにその考えを消して連打を打ち込む。


ただし、サーロングタイガーの素材から武器の材料になる牙や爪には一切の傷が付いていなかった。

ゲイルはゼルートの事を考え、そこだけは無傷で残していた。

しかしその代わりと言ってはあれだが、サーロングタイガーの体はゲイルの雷を纏った拳による攻撃により、焦げているところが多々みられる。


サーロングタイガーはその皮の質から貴族が着る服にも使われる事が多いのだが、流石にそこまでの知識はゲイルも持ち合わせていなかった。


「ッ・・・・・・グ、グルルルルァァアア、アアアアアアーーーーーー!!!!!!!!」


骨はボロボロに折れ、身体強化のスキルをを使って無理やり立っていられる状態。

体の外も、中もまともな状態ではない。

それでもサーロングタイガーは気高く吼えた。


そして最後の一撃だと言わんばかりに牙に雷を纏い、ゲイルに向かって飛びかかった。


「なるほど。これが窮鼠猫を噛むといった光景か・・・・・・見事だ」


雷の咢による最後の一撃に対し、ゲイルは両手を使って真正面からその攻撃を受け止めた。


「ふむ・・・・・・数歩程下げられたか」


自身がサーロングタイガーの攻撃に数歩分下げられた事を確認すると、ゲイルはそのまま口の上下を掴んだまま後ろに叩き付けた。


地面に頭を良い音が鳴る程の勢いで叩き付けられたサーロングタイガーの頭蓋骨は割れ、脳は割れた頭蓋骨の破片にが突き刺さり機能を失った。


「・・・・・・勝負ありですね」


「みたいだな。いやーーーー、やっぱり私も戦ってみたいかったものだ。絶対に心が躍る戦いになった筈だ」


ルウナはゲイルより実力が下だと理解している。

ならばゲイルより実力が近い自分がサーロングタイガーと戦えば良い勝負になっていた筈だと確信していた。


(ランクはロックパンサーと同じだろうが、戦い方は違う。どちらかと言えば私よりの戦い方だ。・・・・・・・・・・・・むぅーーー。あそこでグーかチョキを出していればまだ状況は解らなかったというのに)


サーロングタイガーと戦う相手は事前にジャンケンで決めていた。結果はゲイルがチョキを出して一人勝ちした。


「これでゲイルさんとサーロングタイガーの戦いは終わりましたが・・・・・・ゼルート様達が帰ってくる前に解体を済ませておきますか?」


「時間を潰すのにはそれが一番良さそうだ」


「それなら早速解体を初めてしまおう」


三人は解体用のナイフを取り出し解体に取り掛かる。

こういう状況では本来魔物の血の匂いに惹かれた他の魔物を警戒する為に見張りを用意するのだが・・・・・・この三人には無用な役割だった。

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