少年期[316]並みの奴らならな

「・・・・・・これであらかた片付いたか」


「そうみたいね。後は奥に残っている数人だけかしら」


「無駄なことは止めて早く殺されれば良いのに。ゼルート様は生き残っている盗賊達が何か奥の手を残していると思う?」


使えると思った武器や防具を回収し終えたゼルートはほんの少し考えるが、直ぐに首を横に振る。


「ないな。盗賊達の奥の手は完全にあのサーロングタイガーだ。平均的な実力の冒険者が相手ならあの一体で十分に相手を出来るだろうが。あの三人がいれば何も出来ずに終わってるはずだ」


特に急ぐことも無く三人は奥へ一歩ずつ進む。

そして少し大きめの部屋には数人の盗賊が奥に隠れていた。


「さて、追い詰めたぜ盗賊さん達よぉ。ここらで観念してくれるとこっちとしては楽なんだ。まぁ、俺達は犯罪奴隷として売るって考えは無いから待ってるのは地獄だけどな」


盗賊達の表情は一気に青ざめる。目の前にいるのが自分達より一回りや二回りも年下のゼルート相手に反撃する事が出来ないでいた。


「ふぁ、ファースが、俺達にはファースがいる!! あいつが来ればお前らなんか直ぐにッ!!」


最後の希望であるサーロングタイガーのファース。

何時も自分達がピンチの時には助けてくれた頼もしい仲間。そいつが現れればこの恐怖も晴れる。

しかしリアルはそう優しくは無い。


「ファース・・・・・・あぁ、サーロングタイガーの事か。確かにサーベルタイガーから進化していたのには驚いたな。でも、そいつなら今頃俺の仲間が倒し終えた筈だ」


「ふ、ふふふざけるな!!! ファースの奴らがそこら辺の冒険者に負ける筈がねぇ。そんな事、あり得なぇんだよ!!!」


「そうかもしれないな。この辺りを拠点にしている冒険者なら碌に戦う事も出来ずに負ける可能性もあるだろう。でもな、俺達はここの近くを拠点にしている冒険者じゃないんだよ。ドーウルスって街を知ってるか? 俺達はその街からお前らがテイムしていたサーベルタイガーって訳じゃねぇが、サーベルタイガーの討伐依頼を受けて近くに来たんだよ」


この盗賊団のボスであり、ファースをテイムした男はゼルートが答えた街の名前に聞き覚えがあり、その街の冒険者ならファースを倒せる冒険者がいても可笑しくは無い解り、再び震えが止まらなくなる。


「それにさ、ほら。そのファースの雄叫びも全然聞こえてこないじゃん。てことはさ、サーロングタイガーが俺の仲間に負けたって事だと思わないか?」


「ゲイルさんが相手をしてるんだから負ける可能性はゼロだね」


「ラームと同じ意見ね。確かにランクはBだった思うけど、ゲイルにとってはランクがCでもBでも些細な問題でしょう」


そんな事は無いと思いたい。

でも、ファースが自分達を助けに来ないという事実がある。

アジトの外にいる目の前の仲間を倒せば必ず自分を助けに来るはず。


「言っとくが、お前らの命乞いなんて聞かないし、訊く価値もないから。だって・・・・・・お前らはそうやって助けて欲しいと言った相手を逃がした事は無いだろ」


図星ではあるが、言い逃れが出来ない事実が更に盗賊達の恐怖心を煽る。


「って、ここで無駄話をしても意味が無いな。そんなにファースに会いたいなら、あの世で会えよ」


盗賊達の体がゼルートの斬撃によって半分に斬れて崩れ落ちる。


「とりあえず死体は一か所に纏めて燃やしておかないとな」


「それは僕がやっておくからゼルート様とアレナさんは盗賊達が溜めていたお宝を回収しててよ」


「分かった。んじゃ、死体の処理は頼んだ。まぁ・・・・・・お宝呼べる物が残っていたら良いんだけどな」


今回の盗賊を相手にしたゼルートはあまりため込んでいる物に期待は出来ないなと思っていた。

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