少年期[314]それは自分も
サーロングタイガーが吼える。
相手を威嚇する為に、自分の背中を押す為に今まで一番の咆哮を上げる。
様子見などする必要は一切ない。
身体強化のスキルを使い、体に魔力を纏わせる。
足を縮め・・・・・・一気に開放する。
ゲイルとサーロングタイガーの間に合った距離は一瞬にして縮まり、魔力を纏った爪が間近に詰め寄る。
しかしゲイルも即座に腕に魔力を纏って攻撃を防ぐ。
「む! なるほど、身体強化のスキルを使わなければ中々・・・・・・」
「グルル!!??」
最初から繰り出した全力の一撃、全てを晒した訳では無いにしろ殺す気で放った一撃。
それを余裕の表情でガードしたゲイルに驚き、動きが一瞬止まってしまった。
それでも一撃で殺せないのなら何度でも放てばいいと、爪による攻撃を何度も繰り返す。
「・・・・・・まるで小さな台風だな」
「そうですね。こちらにまで風圧が飛んできています。攻撃速度は目を見張るものがありますね」
サーロングタイガーの攻撃による風圧で地面に落ちている葉や枝は全て吹き飛ばされていた。
周囲の木々の枝も触れ、いつか風圧だけで折れてしまうのではと思えるほど揺れている。
「それでも一切攻撃が直撃しない。流石の一言だ」
「爪を防御している場面もありますが、ダメージは殆ど無さそうですね。正直種族的にはゲイルさんより上なのに自信無くしそうです」
振り上げられる爪も振り下ろされる爪も殆どゲイルにはダメージが入っていない。
勿論攻撃をガードするときには受ける部分に魔力を纏わせている。しかし体を強化するスキルは全く使っていない。
にも拘わらずゲイルは今までの経験を駆使してサーロングタイガーの攻撃を躱し、防御してやり過ごしている。
何時までも攻撃が決まらない状況に苛立ちを感じたサーロングタイガーは一旦その場から飛びのき、地面に掌底を叩きこむ。
「ぬおっ!!??」
叩きこまれた掌底により地面が割れる。
そしてゲイルが態勢を崩した瞬間をサーロングタイガーは見逃さずスキル爪術を発動し、爪斬刃を連続して放つ。
相手が態勢が崩した瞬間に攻撃を放つ。普通に考えれば理に適った攻撃だと思われるが、サーロングタイガーが対峙する相手はその普通が通じない相手。
「あの程度じゃ、態勢を崩したなんて言えないのに・・・・・・せめて状態異常にしなければ意味が無い」
自身の足元が崩されたというのにゲイルはサーロングタイガーの攻撃に関心はするが、特に慌てる事無く手刀の要領で放つ斬撃により爪斬刃を全て相殺する。
それはサーロングタイガーも爪斬刃を放つ前から解っていた。その程度の攻撃で殺れる程弱い相手ではないと。
爪斬刃の後から最初と同じく縮めた足を解放してゲイルとの距離を詰めた。
「っ!! それは避けたい攻撃だな」
避けたい攻撃。そう言いながらもゲイルの口元はニヤケていた。
サーロングタイガーの両足には雷が纏われており、ガードすれば纏われている雷により感電免れない状態。
それにある程度放電した状態な為、攻撃を紙一重で避ける訳にはいかなかった。
「属性魔力を足に纏うか。流石サーの名を持つだけはあるという事か。しかし雷か・・・・・・奇遇だな。私も出来るのだよ」
ゲイルは目を細め、両腕に雷の魔力を纏う。
その光景には流石に驚いたサーロングタイガーは動きを止めてしまった。
「ラルやラガール殿の雷には及ばないが、主であるゼルート様も得意とされる属性魔法だ。私もある程度使いこなせなければな」
好戦的な笑みを浮かべながらゲイルは今回の戦いの中で初めて構えを取る。
「ラル、やはりゲイルの雷はリザードマンにしてはある程度凄い物なのか?」
「・・・・・・凄いなんて物じゃありません。今はまだ私とお母様の方が上ですが、私に関してはいつ横に並ばれても可笑しくはありませんか」
(でも、だからこそ常に上を目指す気になれるというものです)
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