少年期[303]珍しい一団

「しっ!!」


「グギャバ!!??」


「ふん!!」


「ギャッ・・・・・・」


サーベルタイガーを探索中に襲って来たゴブリンの上位種を相手に、特にスキルを使う事無く潰していく。


「こいつでラストね」


アレナの前蹴りを喰らったゴブリンタンクはゴブリンの中では大きい体格ではあるが、そんな事は些細な問題であるため後方に吹き飛ばされ、木に勢い良くぶつかり枝がゴブリンの腹を突き破る。


「相変わらず相手に女がいるとゴブリンは元気だな。にしても・・・・・・見事に全員が上位種だった」


「あぁ、ゴブリンの上位種だけでの集団。珍しくはある」


「もしかしたらゲイルさんがゼルート様と一緒に参加した討伐戦の時と同様に巣があるのかしら」


数匹のゴブリンの上位種が何体ものゴブリンを連れて獲物を探す事はある。

しかしゴブリンの上位種だけの集団で行動する事は滅多に確認されていない。


なのでもしかしたら森のどこかにゴブリンの巣があるのではと考えるのは何ら可笑しなことでは無い。


「いいえ、その可能性は低いと思うわ。巣を作るという事はある程度組織として機能するという事よ。ゴブリンは最初は馬鹿でも長く生きれば自然と知識を身に付ける。だから部下の通常のゴブリンを引き連れて獲物を探すのよ」


「だからこの森の中にゴブリンの巣は無いって事か」


「大きな巣はね。そりゃ小さな巣ならいくつかあるかもしれないわ。でも、この前の様に放っておけば村や街の脅威になる巣は無い筈よ」


アレナの自身より長年冒険者として活動して来た言葉が自然とゼルート達を納得させた。


「もしかしたらこの一団だけでずっと行動してきたのかな? それなら全員上位種に進化するタイミングが遺書でも可笑しくは無いだろうし。上位種だけで行動してたのも納得出来る」


「その説が一番可能性が有るわね。それにしても、少し日が暮れて来たわね。まだ探索を続けるの、ゼルート?」


「そうだな・・・・・・まだ完全に日が暮れるまで時間があるし、もう少しサーベルタイガーを探そう」


ゼルート達は基本的に全員夜目というスキルを持っているため、夜の森の中でも行動が出来る。

ただしスキルレベルはルウナとゼルートが同率で低い。


そしてサーベルタイガーを探す事四十分。ゼルート達は魔物と戦う冒険者の一団を見つける。


「・・・・・・装備を見た限り冒険者になって一年か二年か? 戦っている魔物はバインドキャットか」


名の通り対峙する相手を拘束する魔法を持つちょっとイレギュラーな猫型の魔物。

そして中にはバインド以外の魔法を使える個体がいる。


「タイプは土みたいね。そこまで攻撃力が高い訳じゃないけど爪は鋭いし、なにより敏捷性が低ランクモンスターの中では高い。なにより・・・・・・奥で静観しているのは上位種かしら?」


「普通の個体より体が大きいですな。その可能性が高いかと。どうしますかゼルート様。彼らも冒険者、いつ死んでも良い覚悟は出来ているでしょうか」


死ぬ覚悟は出来ているだろうが、それでも助けた方が良いのでは? そんな意味が込められた言葉にゼルートは軽く頷く。


「このままあいつらが殺られるのを無視するのも目覚めが悪い。ただ俺ら全員が行く必要は無い・・・・・・ラーム、軽く遊んで来い」


「良いんですか!? よーーーーし、行っくぞーーーーーー!!!!!」


ゼルートから指示を貰ったラームはスライム体になって勢い良く戦いの場へ向かう。


「相変わらず元気だなあいつ。にしても人間体からスライム体に変わるって事は、既に倒し方を考えついたって事か」


「そうですね。複数の魔物相手にスライムの体で相手にするなら勝負は一分と掛からず終わるかと」

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