少年期[302]びっくりしてワンパン

ドーウルスから三日程歩き続けた森の中でゼルート達は目当てのサーベルタイガーを探していた。


「まぁ、森に入った初日に目的の魔物が見つかるって事はそうそうないか」


「森の広さを考えれば当然と言えるわ。ただ、サーベルタイガーがよく発見される森なのだからそう時間を掛けずに見つかる筈よ」


「僕はこうやって皆と森の中を探検するのも楽しいけどね。それにしても、ケンタウロスがいきなり襲い掛かって来た時はちょっとびっくりしたね」


さかのぼる事一時間前、ゼルート達を獲物と認識した一体のケンタウロスが襲い掛かって来た。

気配感知のスキルを常時発動しいたゼルートは自分達に魔物が近づいているのは分かったが、モンスターの詳細までは直前まで解らなかったため、襲い掛かって来ている魔物がケンタウロスだと分かった時に取り乱す事は無かったが確かにゼルートは驚いた。


「ケンタウロスって確かランクCの魔物だったよな」


「そうだったと思うぞ。いきなり走って来たから驚いて思わず炎狼拳を撃ってしまったけどな」


ケンタウロスにの突進に驚いたのはゼルートだけでなく、全員が大なり小なり驚いていた。

もれなくルウナも驚き、思わず炎狼拳を放ったしまう。


そしてケンタウロスは結果、上手に焼けてしまった。


「まっ、ケンタウロスの肉は食った事が無かったから正直なところ結構楽しみだ」


「肉は少し硬かった筈よ。ただ、味の良さは保証するわよ。固いとは言っても、噛み切れない程じゃないしね」


アレナの言葉にゼルートは軟骨の様な感じなのかと予想する。


(取りあえずアレナが言うんだから美味い事には変わりない。今日の夕食はケンタウロスの焼肉にするか)


まだ日中だというのに、ゼルートの頭の中は夕食の事でいっぱいだった。


「晩飯が楽しみだ。それにしてもケンタウロスが出て来るって事は、サーベルタイガー以外にも案外楽しめる魔物がいるかもしれないな。ゲイルもそう思うだろ」


「はい、今まで自分達を襲って来た魔物達も中々獰猛な者達が多かったので期待は出来るかと」


ゲイル達従魔組は自身の強さを上手い具合に隠しているため、ゲイル達の本来の実力を把握出来ず襲い掛かって来る魔物は多い。


ただ、複数で襲い掛かって来た場合その内の一体が殺られれば魔物達も一旦冷静になるが、それでも魔物達が逃げようとしようとする間に全員が狩られてしまう。


「でも私達がある程度の力で倒そうとすれば大抵一撃で終わってしまうのが少し残念ですね」


「お前達のある程度の力で倒せない敵がうじゃうじゃといたらそんなの、悪夢以外なんでもないは」


「それはゼルートも当てはまる事なんじゃないか?」


「ケンタウロスを一撃で丸焼きにしたルウナが何言ってんだよ。まぁ・・・・・・難易度が高いダンジョンに行けば、ゲイル達が望むような階層もあるかもしれないな」


元冒険者である両親から何度もダンジョンでの話は聞いており、かつて父親と母親とその仲間が探索した男女に行ってみたいとゼルートは考えていた。


「そういうダンジョンはランクによる制限があるのよ」


「一定ランク以下の冒険者はダンジョンに入る事は出来ない様にしてるって事か。でも冒険者のそういった行動は基本的に自己責任じゃないのか?」


「もちろんダンジョンに入ってからは自己責任よ。ただ、ギルドとしては将来有望な冒険者が無駄に命を散らすのは避けたいのよ。難易度が高いダンジョンを保有する街の冒険者の質は高い事が多いのよ。速くランクを上げてダンジョンに挑戦しようとルーキー達は頑張るのよ」


「良い循環だな」


ダンジョンが一つあるだけで街の裕福さが変わる。

それは今までの歴史が証明しているので、街からそこまで遠くない場所にダンジョンが発見されれば、街の領主は何としてでもダンジョンを管理しようとする。


「ただランクを上に上げる事ばかりを考えてダンジョン探索に必要な知識をおろそかにしてしまう事もあるのよ。特にランクが上がるのが早いルーキー程その傾向が高い」


「ダンジョンに知識なしで挑むなんて・・・・・・いくら何でも無謀過ぎないか?」


ゼルートは両親からダンジョンについての情報は全て聞いていたので、前回はそこまで準備をせずにダンジョンに挑んだ。

しかしそれは確かな自信と実力がある故の行動。


ゼルート程の実力とチートな才能が無い冒険者がやれば、無謀な挑戦としか言えない。

ある意味勇者という不名誉な称号を付けられる可能性もある。

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