少年期[271]ご注文の品

ギルドマスターとの会話を終え、アレナとルウナと合流して宿に戻ったゼルート達は一先ず体を休める為一日休息を取る事にした。


ゼルートもダンジョンないでそこまで体力を使った訳では無いが、護衛という緊張から解かれた影響でベッドに倒れ込むと十秒と経たずに眠りについてしまった。


それを見たアレナとルウナは苦笑いになり、二人も普段着に着替えて夜まで仮眠を取る。



「・・・・・・・・・・・・ふーーーー。まだ日が暮れたって訳じゃ無さそうだな。そう言えば、マグラスさんに頼んでおいた短剣はもう完成したかな?」


ダンジョンに入る前、バーコスに在住するの鍛冶師であり両親の知人であるマグラスに頼んでいた短剣を思い出し、ゼルートはもう一度窓から太陽の光を確認する。


「まだ大丈夫そうだな。置手紙だけ用意してマグラスさんの所に行こう」


軽装に素早く着替えたゼルートは少しだけ外に出ると記し、置手紙を机に置いてマグラスの店へと向かった。


道中、夕食が食べられなくならない程度に露店の料理をつまみながら店へと向かい、二十分程でマグラスの店へと辿り着く。


「ダンジョンでの生活内容が濃かったからか、随分と久しぶりに来た気がするな。・・・・・・・・・・・・すみません、マグラスさんいらっしゃいますか!!??」


「・・・・・・まったく、そんな大きな声を出さんでも聞こえとるわい。む、お前さんはゼルートじゃないか。・・・・・・その様子じゃと、クエストは上手くいったみたいじゃな」


カウンターの奥から出て来たマグラスはゼルートの表情から、自分とエルフの知り合いが雷竜帝の牙を使って短剣を造っている間に受けていたクエストをクリアした事に気が付く。


「ははは、まぁ・・・・・・そうですね。パーフェクトって訳じゃ無いですけど、取りあえず依頼を達成する事は出来ました」


「ほぉ~~、お前さん程腕が立つ奴が完璧にこなせないか・・・・・・そのパーフェクトじゃない訳はお前さんには原因が無いんじゃないのか?」


マグラスはゼルートの力量、そして仲間であるアレナとルウナの実力。実際に戦っている場面を見た事は無いがある程度の実力は解っていた。

そして姿も見てはいないが、雷竜帝の子供が揃って依頼を完璧にこなせないとは考えられない。


その為、依頼を完璧に達成できなかった理由はゼルート達には無いと予想した。


「いや~~~、何と言えば良いのか・・・・・・俺も自分に非があるとは思いたくないんですけど、性格が合わなかったという感じですかね。それが原因の一つだとは思います」


「・・・・・・・・・・・・ふむ、正確には分からんが依頼内容と何が起こったのか大体分かった。まぁ、儂の予想がが正しいのかどうか分からんが、お前さんは悪くない筈だ。だから気にする事は無い」


マグラスはゼルートの言葉から受けた依頼内容や結末まで予測した。そしてそれは殆ど事実に近かった。

それらを含めてマグラスはゼルートに非は無いと判断した。


「有難うございます。それで、お願いしていた物は出来上がりましたか?」


「おう!! 安心しろ、しっかりと儂の持てる力を全て注ぎ込んで造り上げた。勿論手伝ってくれたエルフの錬金術師もな。今持ってくるから少し待ってろ」


ゼルートが待つ事数分、取りに行くときは走っていたマグラスが短剣の入ったケースを両手で持ち、ゆっくりと戻って来た。


「こいつが注文の品、雷竜帝の牙で造られた短剣・・・・・・紫電の刃だ」

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