少年期[235]光が消える

側面から襲い掛かる斬撃とマシンガンに対してラルは高度を一気に落とし、一気に上げた。


そして雷の球体により痺れて動けなくなっていたヒポグリフの背後を取った。

戦いの中で・・・・・・生死を賭けた戦闘の中で相手に背後を取られるのは死を意味する。


数秒の間動く事が出来ないヒポグリフは目の前からラルが迫って来た時より背後を取られた今、比べものにならない程の恐怖を感じた。


痺れた体を無理やり動かして後ろに振り返ろうとするが、体を半回転させて右前足を振りかぶった竜の掌が迫り来る。

狙われた部分は背中。本来なら体を大きく凹まされて体の臓器がぐちゃぐちゃになる・・・・・・もしくは掌に接した部分が綺麗に抉られて即死の重傷を負わせられるところだったが、ラルはブチ当てるのでは無く、背中に掌を合わせてから振り抜いた。


結果、体に大きな風穴が空く事は無かったが先程のヒポグリフと同様に空中から地面に急転直下で落とされ、視界がぐらぐらと揺れてまともに立つ事が出来ないでいた。


二体目のヒポグリフと地面に落としたラルは最後の一体に目を向けようとした瞬間、我前にヒポグリフの前足が迫っていた。

爪に魔力を纏っており、その一撃は無視できないと判断したラルは即座に前足をクロスさせて爪撃をガードする。


空中には足場が無いためラルはヒポグリフの爪撃の勢いを数秒程止める事が出来なかった。


しかし、驚きはすれど冷静さを失わないラルは心の中で奇襲を仕掛けて来たヒポグリフへ称賛を送る。


(仲間が落とされても動揺せず、寧ろ倒した直後を好機と見て奇襲を仕掛ける・・・・・・見事、と一言送っておきましょう)


実際にラルは二体目のヒポグリフを倒した直後、完全に気が緩んでいた。

三体ともこの程度の実力ならばそこまで気を張り詰める必要は無いと、手を抜いていた・・・・・・もう一つの思いも含めて。


その瞬間を狙って最後の一体が雄たけびを上げながら奇襲を仕掛けて来た。仲間をやられたからか、ここで倒さないと自分が死ぬと悟ったからか、それとも魔物としての意地とプライドがヒポグリフを奮い立たせたのか。


覚悟決まった表情、必ず喉を爪で引き裂くという気迫。

ランク差を覆そうと鬼気迫る執念。


正に野生の本能が顔を出したと言える状況だった。



そして戦いが始まってから一度も身体強化のスキルを使っていなかったラルが初めて使った。


翼を後方に向かって大きく扇ぐ。身体強化によって力と速さが上がった事で繰り出される風圧は先程までとは比べものにならない。


ヒポグリフの渾身の爪撃は勢いを失って・・・・・・では無く、急停止した。


今の自分が出せる力を出し尽くしての攻撃を止められた。

その瞬間、ヒポグリフは周りが闇の中で少し先で徐々に大きくなっていく光・・・・・・希望がいきなり消えて闇が、絶望が立ちふさがった錯覚を感じた。


勢いを止めたラルはガードに使っていた前足でヒポグリフの足を掴み、もう一度翼を扇いで体を一回転させる。


身体強化のスキルを使ったラルの力にヒポグリフが敵う筈なく、二体のヒポグリフと近い位置に投げ飛ばされた。


三体が地面が落ちた事で遠距離攻撃が出来る魔物がラルに向かって一斉に攻撃を放つ。

数は十数とそこそこ多いが、そんな攻撃にラルは興味が無かった。


エレキフィールドを発動させて自身に当たる前に全てを焦げ落とす。


三体のヒポグリフの方へ顔を向けると三体が一か所に集まっていた。そしてそれそれの口先に魔力が集まり始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る