前のエピソード――少年期［２２４］危な！？

（あの剣・・・・・・エレメントブーストは是非欲しい。冒険者をやってたらいずれ戦場にだって行くかもしれない。その時の手札はいくらあっても損にはならないからな）

ゼルートは自分に振り下ろされる炎を纏った剣を、自分の周りに風向きを下から上にし、即席の鎧を身に纏い纏いながら避け続けどうやって倒すかを考える。

（ライトニングドライブとか、疾風迅雷を使って背後に回って首をスパッと斬るのは楽なんだけど・・・・・・それじゃ味気ないからな。そうだな・・・・・・取りあえず片方の剣を弾き飛ばすか）

作戦の大体の流れが決まったことで、行動に移す。

「ほらほら、それが切り札なのかもしれないけど、全く俺に当たってないぞ。もっと殺す気でかかってこないと俺に勝つことは出来ないぞ」

指をちょいちょいっと動かしながら、ゼルートはリザードマンナイトを挑発する。

（まぁ、こんな簡単な挑発に乗るかは分からないが、正確な言葉の意味までは分からなくても大体は分かると思うんだけどな）

ゼルートの挑発的な笑みと仕草に、リザードマンナイトはあっさりと釣られて表情こそは変わりないものの動きが大雑把になり、読みやすい動きになった。

（これぐらいなら簡単に狙うことが出来るだろうな。準備準備と）

アイテムボックスの中から自作の鉄の硬貨を取り出し、それに雷の魔力を纏わせた。

そしてゼルートを上から斬り刻もうとして振り上げた腕の甲を狙い、指で鉄の銅貨を弾く。

弾かれた鉄の硬貨は見事にリザードマンナイトの手の甲に当る。

雷の魔力を纏っていたことで、手から少しの間だけ剣が離れた。

ゼルートはその瞬間を見逃さず、今度は剣自体を狙って鉄の銅貨を飛ばして弾いた。

鉄の硬貨によってリザードマンナイトの手から離れた剣は、直ぐに取りに行ける距離には無く、リザードマンナイトは剣一本で戦うしかなくなった。

「ッ！！　・・・・・・シャアアアアア！！！！」

手元から剣が一本なくなったことで焦りの表情を浮かべたが、リザードマンナイト直ぐに切り替えてゼルートに斬りかかった。

剣が二本から一本になったことで、手数は少なくなったが剣を両手で握っている事でスピードとパワーが上がった。

「切り替えが、随分っと、速いんだな」

スピードが上がったことで、ゼルートは反応速度に頼る戦い方ではなく、次に来る攻撃を予測して躱す先方に変える。

（剣が一本になっても戦い方は的確に敵を倒すものだな。中途半端な坊ちゃん貴族の様なものではなく、完成されたものだ。ほんと・・・・・・どんだけ命がけの戦いを、場数を踏んできたんだろうな。まぁ、魔物にとってダンジョンは常に敵だらけって言っても過言じゃないしな。戦う相手に事は欠かないんだろうな。まぁ、でも魔物の割には野性味がない戦い方だよな。悪いって訳じゃないけど、それだけじゃな）

リザードマンナイトの戦い方を観察しながら、戦いの中で急に戦闘スタイルが変わることが無いと確信したゼルートは、勝負を仕掛けた。

そんなゼルートの目を見て確実に自分を殺そうとしに来ているのを察し、まだ余裕がある魔力を量を多く注ぎ込み、纏っている炎の質を上げる。

そして全力で剣をゼルートに向かって振り下ろしてきた。

それに合わせてゼルートは剣を持っていないのにもかかわらず、手に剣を持っているかのようにして腕を振りかぶった。

そして剣がゼルートに迫って来るまで後少しとなったところで、ゼルートはアイテムリングから武器を取り出す。