最終話~ミドル20(2)~
光の中、途切れそうな意識を繋ぎ留めて。
影裏には成し遂げねばならない事がある。
春見の視力を回復させる──そのためには小さな義眼に正確にレネゲイドを流入させる必要がある。
対象を僅かでも
そのリスクを負ってでもやらねば、彼女は永久に光を失う事となる。
影裏:「(さあ、大仕事だ)」
影のアギトを展開し、春見へと向ける。
巨大なそれをゆっくりと近付けていく最中、疑問が浮かんだ。
何故、俺はレネゲイドを奪い与える円環の力に覚醒したのだろう、と。
奪うだけなら理解できる。
死にたくない──奪われたくないという願いが結実したものだ。
だが、得た力は奪うだけではなかった。
その脳裏に、覚醒して間もない頃、暴走しながら夜闇に吠えた言葉が浮かぶ。
『なんなんだよ、コレは! この力は! こんな、こんな──!』
思い至れば、それは簡単な答えだった。
俺は、貰ったものを返したかったんだ。
両親を殺され、塞ぎ込んでいた過去の自分。
けど、そんな暗闇にも光が差した。
佐倉家に引き取られ、親しい友人たちと出会い。信頼できる仲間たちと共に戦った。
けれど、その原点にいたのは、たった一人の女の子だったんだ。
佐倉 春見。俺の、一番大切な人。
彼女がいたから。彼女がいてくれたから。
俺に日常をくれた人に。春見に、想いを返すため。
「(なら、俺が円環の力に目覚めるのは……必然だった)」
力を正しく理解した瞬間、影のアギトは変化する。
春見の右眼を包み込んだそれは──影の腕だ。
「ありがとう。春見がいてくれたから──俺は、ここにいるんだ」
《レネゲイドリゾプション》の、第二の効果を宣言。春見の右眼に侵蝕基本値を──レネゲイドを逆流させる。
激しい侵蝕ではなく、穏やかな温もりの影となってレネゲイドが緩やかに流れ込む──。
それは本来あるべきだった"約束の瞳"を形作っていく。
約束と名付けられたのは、罪の証、約束という名の束縛だった。
だがこの瞬間、その意味は書き換えられた。
その瞳に映る場所で、ずっと、隣で笑いあう。
永遠にも等しい”絆”──これから先も続いていく、”約束”そのものだ。
──世界は、白く、白く、塗り潰されていく。
視界が晴れれば、戦場を映すだろう。それでも──
隣には必ず、約束の人がいる。
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