最終話~ミドル19(1)~

GM:さて。このシーンでは調達を先に行なってから描写に移っていくよ。

 シーンプレイヤーは春見。影裏の登場は任意だ。

春見:シーンインするよ(ダイスころころ)これで侵蝕率137%だね。

影裏:どれ、こちらも出ておこう(ダイスころころ)侵蝕率が328%だぁ……。

GM:お熱いね!

影裏:誰のせいだと()

春見:調達で仕返ししてあげよう。『クリスタルシールド』を調達するね。


 その宣言通り、春見は財産ポイント8点を消費しつつ調達に成功した。


春見:そのまま結理君に手渡しちゃうよ。

影裏:ありがとう! 即座に装備だ。

 こちらはそうだな……ワンチャンスに賭けて『リアクティブアーマー』に挑戦しよう。

GM:難易度24ね、オッケーだ。

影裏:『コネ:手配師』を宣言。侵蝕ボーナスに加えて更にダイスを増やし、いざ!(ダイスころころ)

GM:達成値は、19。おや、これは……!

春見:《宵闇の魔花》を宣言。その達成値に+6!:侵蝕4:対象はHP5点を失う。

影裏:合計達成値25で調達成功だ! 本当にありがとう、即座に装備だ!

GM:硬くなっていく……。それでは描写に移ろう。



 いつかの未来、”マトリクス”セル研究所となる場所を後にした二人は、再び戦場へと向かうために力を行使しなくてはならない。

 次の戦いが最後となる──そんな予感を胸に、戦闘の準備を行なっている。


影裏:「思いがけない出会いもあったが……この時代でやるべき事は済んだ。

 後は京香と合流して現代に戻って、時貞と決着を付ける。……いよいよだな」

春見:「そうだね……緊張してる?」

影裏:「まあ、な。今までの相手とは格が違う。けど……」


 その口許は、穏やかに笑って。


影裏:「不思議だな、不安じゃないんだ」

春見:「それはきっと、結理君がきちんと自分の旅路を歩んできた証拠だね」


 そっと、結理君の左手に自身の右手を添える。


春見:「色んな乗り越えるべき壁、事件、想い……。それを全部含めて、今の結理君がいるから」

影裏:「ありがとな。けど、俺だけじゃここまでは来られなかった。春見が、京香と桃矢が。他にも沢山の人たちが。

 皆がいてくれたから、今の俺があるんだ」


 添えられた右手を、優しく包み込む。



「だから、必ず勝てる。勝って、俺たちの未来を取り戻すんだ」



春見:「うんっ。私たちが、また明日を歩めるように──」


 言葉は、途切れてしまった。その表情に迷いがある事を、影裏は見逃さない。

 落ち着いた口調で、問いかける。


影裏:「……どうした、何か気がかりか?」

春見:「……少し。私たち四人ってさ、奪われたあの時間のために戦ってきたでしょう?」

影裏:「ああ。必死に歯を食いしばって、戦ってきたな」

春見:「そこに後悔もやり残しもないつもり。でもね」


 いつの間にか強張っていた私の右手を、結理君の左手が少しだけ強く包み込んでくれる。

 私より大きくて温かいその手の優しさに後押しされて、ゆっくりと言葉を紡いだ。


春見:「私たち、あの頃とはもう──変わってしまっている。

 私と結理君はまだいいかもしれない。でも……都築さんや大人の都築さん。それに及川君は……」


「歩んできた時間も、旅路も異なり過ぎる。きっと、ずっと一緒には……いられないと思うの。それを考えたら──寂しいなって」


影裏:「……春見」

春見:「ごめんね、直前になってこんな──」


 言いかけた言葉は、途切れた。頭を、影裏の胸にそっと抱かれたからだ。


影裏:「確かに俺たちの時間は離れすぎた。いつまでも一緒には、いられないかもしれない。けどな──」


「──俺たちの心は。想いはひとつだ」


「どれだけ永い時に隔てられようと、京香が、桃矢が、戦い続けたように。俺たちも戦うんだ。たとえその先に、別れが待っているとしても」


春見:「……別れる事になったとしても、ずっと、皆この気持ちをたがえずにいられるかな?」


 心の隅に追いやってきた弱音だ。想いは前へ向いているのに。

 輝かしい過去──。取り戻したい時間──。

 戦い抜いた心の楔が、最後の枷に変じて彼女を縛り付ける。


影裏:「大丈夫だ、俺が保証してやる。だから──」


「春見も一緒に信じてくれ。俺の隣で、同じ未来を目指して欲しい」


 どこか不器用な、少しだけ照れた笑顔を向ける。


春見:「──うん。ありがとう……結理君」


 噛み締めるように、ゆっくりと頷いて胸の中から結理君を見上げ。


春見:「これでもう、私は大丈夫」


 優しく、強張っていた頬を緩めた。


影裏:「──おう」


 ほんの一瞬、名残惜しく感じつつも春見を解放する。

 春見もまた、同じ想いだった。


春見:「あのね。結理君に渡したい物があるの」


 いつから持ち歩いていたのか。小包みを取り出して、結理君へ差し出す。

 丁寧な手付きでそれを開封すると、そこには首にかけるタイプの懐中時計があった。

 丸いフォルムの中心には春見のリボンと同じピンク色のクリスタルが控えめに輝いている。


 影裏が時計を開くと、時間を指し示す文字盤の隣に写真が嵌め込まれていた。

 写真の中だけは、あの頃と同じまま。皆が一緒に、笑顔で写っている。

 掛け替えのない思い出を切り取ったかのような一枚だ。


影裏:「春見、これって──」

春見:「プレゼント。全部終わった後の方がいいかなって思ったんだけど……これから大変になるだろうし、今のうちに渡しておきたいなって。……どう、かな?」


 穴が空くほどに写真を見つめ、一瞬だけ、涙に表情を歪める影裏。

 その想いを、懐中時計を閉じると同時に、心の奥底へと大切にしまい込み──


「ありがとう、春見。嬉しいよ──凄く」


 想い人を思わせる小さなクリスタルを最後に見つめ──穏やかに呟いた。


春見:「……良かった、喜んでくれて」

影裏:「大切にする。俺たちが、これからも時を刻んでいけるように」


 決然と口にして、遥か遠くを射貫いぬくように見つめる。

 瞳に映るのは待ち受ける決戦か、それとも──。

 その想いは影裏自身と、隣で同じ光景を映す春見にしか分からない。



春見:GM。私が所持している『とっさのお守り』を、懐中時計として結理君に渡します。

 この懐中時計が、皆との思い出が、きっと結理君を守ってくれると信じて──。



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