第四話〜ミドル5〜

 海上プラントからボロボロの状態でセーフハウスへと帰還してきた影裏たちは、宵闇に紛れる黒いフードを目深に被るアンナに出迎えられた。

 傷だらけの影裏たちを見ると僅かに目を見開き、家の中で手当てを始める。


GM:という状況だ。シーンプレイヤーは春見。影裏は任意だよ。

影裏:まあ、せっかくだし出ておこう。シーンイン(ダイスころころ)……10……だと……。侵蝕がもう106に……。

春見:結理君が本当にボロボロ……(ダイスころころ)8上がって侵蝕率91。

影裏:もうダメかも分からんね。

春見&GM:生きて(切実)

GM: あ、手当てを受けた影裏はHPを全快させていいよ。

影裏:GMぅ……(潤んだ目)

GM:よしよし。後でたっぷり可愛がってあげるからね(ゲス顔)

春見:このGM、殺る気に溢れてる……。

GM:さて、気を取り直して描写していこうか。



 影裏、及川の手当てを終えたアンナは最後にプランナーにも手当てをしている。


アンナ:「彼女も酷い傷、ですね」

春見:「無茶……したね」

影裏:「俺たちを援護しながら奴とやりあったんだ。むしろこれくらいで済んで幸運……っと、悪い。不謹慎だったな」

プランナー:「ううん、まったくその通りだよ。……見逃されたようなもの、かな」


 様子が変わったプランナーに少し驚きつつ、アンナは逡巡する。


アンナ:「(プランナー。FH日本支部のトップである彼女ほどの人間が、これほどの傷を負う相手と、春見は戦っている……)」

影裏:「全員そろってボロボロだ。だがその分、得たものも多い」

京香:「正直、ちょっと多すぎて、何が何だか分からないくらいだよ……」

春見:「……それに、それが全て幸運とは言えないけどね」

影裏:「……そうだな。俺もまだ混乱してる」


 一呼吸置き、全員に視線を向ける影裏。そこには戸惑いの色が窺えた。


影裏:「……一度、各自で心の整理をつける時間を取らないか? もちろん、必要なら誰かを頼るのもいいだろう」

京香:「そう、だね。ちょっとだけ時間が欲しいかも」

春見:「私もそれでいいと思う。でも、その前にここで聞いておきたいな」


 ある種の決意を固めて春見はプランナーの前に立つ。躊躇いがちな自分に出せる、精一杯の気迫を込めて。


春見:「プランナーさん……貴女は、どうして私を救ったの? 本来覚醒しなかった私を、3000年も昔に遡ってまで」

プランナー:「……そんなの、決まってるじゃない」

春見:「……」

プランナー:「私たち3人で正体の掴めない敵を相手にするためには、もっと戦力が必要だったのよ」

春見:「敵って、奏 時貞のこと?」

プランナー:「そうよ。あの時はまだ、確信してなかったけどね」


 淡々と話すプランナーを、京香はじっと見つめる。やがて抑えきれないとばかりに言葉をかけた。


京香:「…………、ねえ」

プランナー:「……何かしら」

京香:「嘘吐くの、やめませんか。プランナーさんが、どんな"気持ち"で春見ちゃんを助けたのか。……ちゃんと答えてあげないと、ですよ」


 その言葉にプランナーは目を細めて京香と春見を見やる。


春見:「……」


 真っ直ぐその視線と向き合う。それはこれまでの戦いで得た彼女なりの"強さ"かもしれない。


プランナー:「やっぱり、敵わないなぁ」


 その瞳に耐えきれなくなったプランナーは吐息を漏らした。


プランナー:「本当はね、春見ちゃん。私はただ、許せなかったんだよ」

春見:「何を?」

プランナー:「正体も分からない、目的も分からない。そんな相手のせいで私たち4人がひとりでも欠けるなんて。……どうしても、許せなかったんだよ」

影裏:「……っ」

プランナー:「だから、自分勝手に、まだ覚醒してない春見ちゃんを巻き込んだ。……本当に、ごめんなさい」

春見:「……その言葉。信じて、いいんだよね?」

プランナー:「信じてもらえないかもしれないけど。これが、私の本当の気持ちだよ」

春見:「……そっか」


 僅かな間、春見は目を閉じて思いを巡らせ──静かにプランナーを抱きしめた。



春見:「ありがとう、"都築さん"。これも、今の私の正直な気持ち」



 今まで故意に避けていた呼び名を、親しみを込めた声音で──彼女の事を初めて呼んだ。


プランナー:「っ……ありが、とう……」


 その感謝に、優しく微笑みを返した。



春見:GM、ここで固定ロイスの都築 京香とは別にプランナーにロイスを取得します。感情はP:慈愛 / N:偏愛で、ポジティブが表です。



アンナ:「……私にできる手当ては終わりです、プランナー、いえ、京香さん」

プランナー:「ありがとうございます、アンナさん」

アンナ:「いいえ。これも務めのうちですから」

春見:「ごめんね、みんな。この場で聞きたいことは聞けたかな。あとは──」


「──ねぇ、お姉ちゃん」


アンナ:「なんでしょ……、え?」

影裏:「おい、春見……?」


 何気ない風を装った一言。確信も何もないそれは、春見の胸奥に潜む疼きに従って発せられた。


春見:「……ちょっと、向こうでお話しない? 久しぶりに、家族水入らずで、ね」

アンナ:「…………いえ、その。確かに私と春見様は、家族ですが──」

影裏:「よし。ここで一旦、解散にしよう。各自、自分の気持ちを整理しておくんだ。必要なら、相手を呼ぶなり訪ねるなりして話をすればいい。……それで構わないか?」

京香:「……うん!」

春見:「うん、ありがとう……それじゃあ、私部屋で待ってるから。逃げちゃ嫌だよ?」

アンナ:「あの、ちょっと!」


 呼び止めるも、春見は退室してしまう。


アンナ:「…………」


 戸惑いの色を隠せないアンナは立ち尽くす他ない。


影裏:「俺も一度、部屋に戻る。用があれば声かけてくれ。もしくは俺から行くかもしれんが」

京香:「私は、もう少し都築さん(私)と話したいな。ちょっと、変な感じだけど」

プランナー:「それはお互い様でしょう?」


 これからの戦いに迷いなく立ち向かうため、青年たちはかつて笑いあった友たちと語らう。しかしあの頃から彼らが過ごした時間は、あまりに違った。

 それでも彼らは言葉を交わす。ただそれだけが分かり合う道だと信じて。

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