待人

一面が白い。四角く切り取られた空間。

窓一つなく、空間を繋ぐのは手前の扉だけ。


たなびくカーテンでもあればわかるが、

それすらもなく、

動くのは人工的な小さくカラフルな光のみ。

しかしなぜか重苦しさは存在しない。


ただ、静の空間。行き過ぎた清潔感。



中央に目に入るのはポツンと置かれたベッドだ。

鈍く光る色でできた骨組みの上に、

真っ白な布と真っ白な人間、淡い色の管。

まるで私たちを祝福するかのような色合い。


以前と何も変わらないと称される、動かないそれ。

何も変わらない事はない。

肉は重力とともに沈み、関節は固まる。

いつかそれがまた動くことを望む人がただ、

その人のエゴで身体を繋ぎ止めている。

その精神はどこへいったのか戻るのか。

ただ、これが戻らぬにせよ待ち続ける愚かな--。



コツコツと響く音がする。

やがて無人の部屋へと入ってきた看護師は

布団に置き去りになっているドライフラワーを見て

慣れたように屑篭へと放った。



麦藁菊がパラパラと音を立て崩れた。

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魂の集め方 @Eucalyptus

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