第16話 戦闘!打倒パンドラ

~前回までのあらすじ~


目をぐるぐるとまわしながら気絶していたパンドラの事を運ぶのが面倒くさすぎて、ちょっと家に置いたまま外出していたら、その間に家を乗っ取られたあげくに、悪の親玉へと寝返られてしまった!おのれ~!とりあえず家だけは返さんかいっっ!…というワケではじまり、はじまりぃ~



◇◇◇



「…懐かしいわね、昔はよくこうして一緒に戦ったりしたわよね。ジンちゃん…いやマジカル・ジンジャー」


多数のデス・ピザエール達を従え、屋根の上に腰をかけながら冷たい眼差しでそういい放つパンドラ。その表情は、先程までのポヤンとしたパンドラとの顔とはまるで別人かのように険しいものとなっている。


「ジンちゃんはこの箱を守っててって私に言ってきたけど、この1000年もの間、とっても退屈で仕方がなかったの。…だって私、やっぱり血を見るのが好きみたい。」


そう言ってパンドラが膝に抱えていた小さな黒い箱を開けると、中からさらに大量のデス・ピザエール達が生まれ出てきた。まるで示し合わせたかのように無言でパンドラの元へと集まってくるデス・ピザエール達。


「…これって、さすがにマズイんじゃ…」


今まで見たことがないようなデス・ピザエールの数に、固唾を呑みながらそう呟くマルル。


ちなみにバニラの方はというと、おばあちゃんに向かって、


「パンドラって強いの?頭の方はめちゃくちゃ弱そうだけど…」


…と、思いっきり悪態をついていた。


「…パンドラは強いぞ。見た目はあんなじゃが、その魔力の大きさと多彩な魔法技術から、ワシが魔法少女になる前まではパンドラがこの国の魔法少女達を一人で統括し、そして皆から伝説の魔法少女と謳われておったくらいの逸材じゃからの…」


そう言って、深刻な表情でパンドラの事を見つめながら答えるおばあちゃん。


「そんなに、強かったの!?おばあちゃん、よくそこまで強いパンドラに勝てたわね!」


…さすが伝説の魔法少女!

おばあちゃんがいれば、この危機的な状況も簡単に脱せるかもしれない!


そんな事を思って感心していたマルルの質問に対しておばあちゃんは、


「…まぁ、いくら魔法の力が高くても、腕力ではワシの方が圧倒的に強かったからの。」


そう言って自分の顎を手でさすりながら自慢気に答えていた。


…もはや、魔法関係ないじゃん…


マルルはおばあちゃんにそうツッコミたかったのは山々だったが、とりあえずその言葉は静かに自分の中へと呑み込んでおいた。


「ちなみにパンドラの得意魔法ってどんなものがあるの?」


同じく、おばあちゃんにそう尋ねるバニラ。


「あやつはありとあらゆる魔法を得意としておるからの。どれが得意とかは一切なく、むしろオールマイティーに全ての属性魔法を使うといった感じじゃな。しかもオマケにあやつは完全にサイコパスじゃからの。ワシもパンドラとタッグを組んで、3年くらいは共に戦ってきたが、いまだにヤツの戦い方はさっぱり分からん!どちらかというと、ワシが協力しようと思って放つ魔法と全く真逆の魔法を使ってくるイメージじゃな。」


そう言って、さらに深刻そうな表情となるおばあちゃん。それに対してバニラの方は、何かを思いついたかのように明るい表情となっていた。


「…こちらと真逆の魔法を使ってくるということは…」


「…上手くやれば、水系の魔法が引き出せる…!!」


バニラのその囁きに対して、どうやらマルルも同じ考えだったようだ。


パンドラ達に向かって、二人同時にダッシュを掛けるマルルとバニラ。


「モア・クリスタル!!」


バニラは地を蹴り、高く宙へと舞い上がると、呪文を唱えると共に、巨大な氷の壁を作り出した。


例え変身をしていなくとも、氷系魔法を得意とするバニラにとっては、パンドラの周囲のデス・ピザエール達を一瞬で氷浸けにしてしまう事など、なんの造作もない事だった。


デス・ピザエール達が氷浸けになった事を確認すると、


「フワリ!」


マルルはパンドラに向かって魔法を放った。


その瞬間、マルルの手から生じた複数の風がパンドラに向かって襲いかかる。だが残念な事に、バニラと違って変身をしていないマルルの魔法の威力はとても小さいものだった。


それでもパンドラは…


「…ドムズ・ブレイン」


彼女がそう唱えると同時に、足元の地面からむくむくと土が盛り上がってきたかと思うと、彼女の目の前には巨大な土の壁が作り出された。


その巨大な土の壁は、マルルの放った風を防ぐと同時に、細やかな砂へと姿を戻しながら、ゆっくりと崩れ落ちた。


…やはり風系の魔法に対して、土系の魔法を使ってきた。しかも過剰なほどの上級魔法で。


…という事は…


「ポワロン!!」


マルルはそう呪文を唱えて、小さな炎をパンドラに向かって放つと、意を決したかのようにパンドラに向かって走り出した。


「…パッシャード…」


マルルから放たれた炎の魔法に応じるかのように、パンドラは無表情のまま水系魔法を解き放つ。


その魔法によってパンドラの手からは激しく打ちつける滝のような水が大量に放出された。


…いまだ!!


そう思ったマルルは、走る足を緩める事なく、自分の懐にひそませていた例の板のようなスルメイカでその水系魔法を防いだ。


全面から水を得ることで、そのスルメイカはどんどんと艶やかさを取り戻していき、そしてみるみる内に体を大きく成長させていった。


そしてパンドラから放たれたその水系魔法を全て呑み込んだスルメイカは、気がつけば巨大な大王イカへとその姿を変えていたのである。



~次回、魔法少女 まじかる・ぱいんっっ!


『私の名前は、大王イカ』


でお会いいたしましょう!


残暑が厳しくても、まじかる・まじかるンっ!


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