第13話 早く着替えろ!魔法少女!
~前回までのあらすじ~
私のあまりにもの働けてなさっぷりに、ついにバニラがブチぎれ、そのまま闇をまといながら病みはじめてしまった所で、アイスの『マルルの着替えが遅いのが原因』という痛い指摘が私とおばあちゃんの心にズキュンとクリティカル・大ヒット!!バニラ、そりゃお前はい~よなぁぁぁ!毎回そのパタパタコウモリがお前の着替えを手伝ってくれるんだモンなぁぁぁ…!!…って事で今回のお話もはじまり、はじまりぃ~
◇◇◇
『そう言うバニラだって、僕と出会う前は毎回岩場の影とかに隠れて、コソコソと魔法少女の衣装へと着替えていたんじゃないのかい?』
相変わらず机の上に突っ伏せたままのバニラに向かって、アイスはパタパタと自分の羽をはばたかせながら、心配そうにそう声を掛けた。
すると机に伏せていたはずのバニラはその場で顔をあげると、アイスの事を睨みつけながらこう言ったのだった。
「…だから私はアイスに出会うまでは毎日この衣装で学校にも行ってたし、いつデス・ピザエールが襲って来てもすぐに対応ができるようにと、寝るときもお風呂の時も常にこの格好で生活していたんじゃない!!」
そう言って涙目となりながらまた机の上へと突っ伏せてしまったバニラは、そのままわんわんと大声で泣きじゃくりはじめた。
「じゃが、その衣装のままで生活すると言うのはとても不便な事であったじゃろう…ほら…その…」
…世間の目、とかね。
マルルはそんなバニラとおばあちゃんのやり取りを遠くで眺めながら、「自分だったらそんな生活絶対に嫌だ!」という言葉をぐっと心に押し込めて、泣きじゃくるバニラに向かってそっと自分のハンカチを差し出した。
すると、マルルに差し出されたハンカチの存在に気がついたバニラは、再び伏せていたはずの顔を机からそっとあげると、それを片手で制しながら断った。
「…ありがとう、マルルちゃん。でもいいの。それじゃあせっかくの可愛いハンカチが私の鼻水で汚れてしまうもの。私はこれで…」
そう言ってバニラは近くを飛んでいたアイスの事を右手でグイっとひっつかまえると、彼の羽根に向かって自分の鼻元を強く押しつけた。
ずび~!ずびびびぃ~!!
何やら不穏な音を立てながら、アイスの羽で容赦なく自分の鼻をすすりまくるバニラ。
『ちょっと!バニラ!?僕の事は汚してもいいのかいッッ!?』
家の中をアイスのそんな悲痛な叫びが響き渡った。
「…とりあえず、私もアイス君みたいな生き物を手に入れる事ができれば今よりも早く着替えられて、バニラちゃんの足をひっぱらなくて済むって事なんだよね?」
そう話すマルルの横で、当のアイスはまるで丸められたティッシュかのようにクシャクシャになりながら、フラフラと洗面台へと飛び立って行った。
「そうじゃ。アイスのように魔女や魔法少女の手伝いをする生物達の事を総称して、
そう言って冷めかけた紅茶に口をつけるおばあちゃん。
「…マジック…ファミリア…」
マルルはおばあちゃんの口から発せられたその聞きなれない言葉に、いつしか心を熱くときめかせはじめていた。
「おばあちゃん!私もそのマジック・ファミリアが今すぐ欲しい!!どこに行ったらもらえるのっ!?」
マルルはまるでもう我慢ができないといった様子で、その場で激しく足踏みをしながらおばあちゃんの事をせかしはじめた。
「試練の洞窟だね。」
すると洗面台の蛇口の水で、バニラの手によって汚されてしまった体を綺麗に洗い終えたアイスが、こちらに向かってはばたきながらそう答えた。
「私もアイスと出会ったのは、試練の洞窟だったのよ。」
そう言ってバニラは、腰につけた小さなカバンの中から薄紫色のコンパクトを取り出すと、中央にはめ込まれている宝石を人差し指で軽く押さえた。
どうやらこれも魔法少女の力というものなのだろう。
バニラがコンパクトの宝石を押したと同時に近くの空間の一部が歪みはじめ、人一人がなんとか通れるくらいの時空の裂け目が生まれた。
裂け目の向こうには洞窟の入り口のような建物が見える。
「…さ、行きましょう。」
「僕も久しぶりに自分の故郷に帰るみたいでドキドキするよ。」
こうして、いまだ目をまわしながら気絶しているパンドラの事を残して、マルル達は試練の洞窟へと向かったのであった。
~次回、魔法少女 まじかる・ぱいんっ!
『使い魔との契約』
でお会いいたしましょう!
暑さに負けずに、まじかる・まじかるンっ!
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