第6話 敵?味方!?新たな魔法少女


高く昇る太陽をすっぽり覆ってしまうほどに

木々が育った深い森の中を、美しく長い銀髪をなびかせながら進む一人の少女がいた。


深い森の中を、珍しく強い風が吹き抜ける。


その風を全身に浴び、

その銀髪の少女はふと立ち止まった。


『どうした?バニラ。

何か見つけたのかい?』


そう言ってその少女の肩にとまっていたはずの小さなコウモリは彼女の元から羽ばたき、そしてそのままその少女の顔を心配そうに覗き込んだ。


「今ここで…

魔法少女の反応が…」


そう呟いた彼女の手掌に握られたのは

強く輝く、紫色の魔法石だった。



◇◇◇



「どうじゃマルル!

お前もこれからはこのくらい早く

着替えなければならんのじゃぞ。」


そう言って、年甲斐もなく見るも無惨なヒラヒラ衣装に身を包んだクソババアは、すでに気分の悪さで顔面蒼白となってしまっているマルルに向かってウインクまじりのポーズを決めた。


「…オロロロロロロ~…」


あまりのババアの気持ち悪さに、

思わず朝食べたクリームアップルパイを

吐瀉物として吐き出してしまうマルル。


なんという破壊力だろうか。

そしてとにかくアップルパイがもったいない。


「ねぇおばあちゃん。

それ、なんていう究極魔法…?」


口元をハンカチで抑えながら

思わず蒼白い顔で尋ねるマルル。


「いや、ワシはまだ

何の奥義も見せておらんのじゃが…」


そう言ってマルルの質問に戸惑うババア。

どうやら自分の気持ち悪さ自体は

自覚できていないようであった。


『へ~…君が新しい魔法少女なんだね。』


そう言って草影から飛び出して来たのは

小さなコウモリだった。


『…にしても、魔法少女にしては

君は少し年を取りすぎだね。

すでにひからびちゃってるや。』


そう言って、あろうことかマルルではなく

ババアの周りをヒラヒラとはばたきはじめるコウモリ。


「馬鹿ね、アイス。

その人は魔法少女じゃないわ。

本当の魔法少女はその子の方よ。」


そう言って同じく草むらから出てきた

銀髪の美しい少女はマルルをそっと指差した。


「そっか~、

どおりでこの人なんか気持ち悪いなぁ

とは思ってたんだよね。」


そう言ってババアに容赦なく

歯に絹すら着せない言葉を放った

コウモリは、再びバニラの元へと羽ばたいた。


「まぁどちらかというとワシは

『魔法少女』というより、

魔法淑女まほうしゅくじょ』の方じゃからの。」


顎に手なんぞをやりつつ、

満足そうな笑みを浮かべるババア。


「えっと…

あなた達は…??」


そんなババアの事は華麗に無視して

マルルが静かに尋ねた。


すると、銀髪の少女はふっと微笑むと

カバンの中から紫色のステッキを

取り出し天に向かって叫んだ。


『変身っっ!』


そう言って銀髪の少女が

紫色のステッキに同じく紫の魔法石を嵌め込むと、辺りにまばゆいばかりの無数の光が生まれはじめた。


その光を一身に受けながら、バニラの軽やかなステップに合わせて衣装の着替えを手伝うコウモリ。


最後に銀髪を束ねるリボンが

生まれた所で彼女の変身は完了した。


「私の名前はマジカル・バニラ。

ずっとあなたを探していたのよ。」


そう言って、コウモリと共に

定番のポーズをとりながら言う

彼女に向かってマルルは叫んだ。




「いや、お前は自分でドッキュン☆生着替え

じゃねぇのかよッッ!!」



…と。



次回、魔法少女まじかる・ぱいんっ!!


『戦え!魔法少女!!』


でお会いいたしましょう!


いつでも、どこでも

まじかる・まじかるンっっ!

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