第3話 誕生!魔法少女
~前回までのあらすじ~
朝目覚めた瞬間から、『デス・ピザエール、デス・ピザエール』とワケのわからん単語を口走りはじめたおばあちゃん。「ついにボケたか。」と思って見守っていたら、本当にデス・ピザエールが出てきやがってクリビツ・ギョウテン。果たしてマルルはぽっと
◇◇◇
「おばあちゃん、でも私…どうしたらいいか…」
初めて見る魔族デス・ピザエールに
マルルの声は不安ですっかり震えてしまっていた。
気がつけば足すらも自分では制御できないくらいに震えてしまっている。
「大丈夫じゃよ、マルル。お前ももう気づいているんじゃないのかい?自分の中に新たな力が芽生えはじめている事に…そう。お前はこの日の為にきちんと魔法少女として成長してきていたんじゃよ。大丈夫、さぁこの魔法のステッキを使って…」
そう言って、おばあちゃんが不安そうなマルルに懐から取り出した可愛らしい魔法のステッキを手渡そうとしたその瞬間――――…
『キシャ――――――――――ッッ!!』
奇声をあげて、トカゲのデス・ピザエールがマルルに襲いかかろうとした!
バッコ――――――――ン!!
思わず手にしていた魔法のステッキで、デス・ピザエールの後頭部をぶち殴るおばあちゃん。
『…え?
まさかの打撃攻撃…?』
おばあちゃんの突然の行動に、思わずドン引いてしまうマルル。
「人が話をしているとゆ~のにお前は!!
今は祖母から孫へと魔法のステッキを受け継ぐ大切な大切な場面じゃろ!お前は突然出て来て空気すら読めんのか!そもそも何でお前は人の家の戸棚の中になんぞおったのじゃ!完全に不法侵入じゃろッッ!とにかく悪役なら正義の味方が話している時くらい…くどくどくどくど…!!」
そう言って火がついたようにデス・ピザエールに突然『悪役とは何たるか』の説教をしはじめるおばあちゃん。
おばあちゃんのあまりの気迫に、デス・ピザエールも申し訳なさそうにペコペコと何度も頭をさげている。
「コホン。では気を取り直して…行け!マルル!デス・ピザエールを倒すのじゃ!!」
おばあちゃんの号令に、思わず両手でステッキを構えるマルル。
『キシャ――――――――!!』
そう声をあげると、デス・ピザエールは勢い良くマルルに飛びかかった!
「きゃあっ!」
マルルは反射的に避ける事が出来たが、勢い良く振り下ろされたトカゲの鋭い爪によってスカートの端がちぎれてしまった。
そのまま着地した先で体勢を整え、デスピザエールが再びマルルに襲いかかろうとしたその瞬間――――…
バッコ――――――ン!!
再び近くに置いてあった杖で、デス・ピザエールの後頭部を殴るおばあちゃん。
「こりゃ!家の中で暴れるな!悪役なら悪役らしくもっと気を効かせて採石場とか、やたら開けた静かな森の方とかに行かんかいっ!!戦隊モノの悪役達もみぃ~んなそうしておるじゃろうがッッ!!ワシがせかせか働いて息子達やマルルの為に建てたこの家を壊したりしたら、お前を孫の代まで祟ってやるからな…!!」
そう言ってまたもやくどくどと言いはじめたおばあちゃんに、またもやデス・ピザエールもペコペコと頭を下げはじめた。
『…もういっそそのままおばあちゃんが
戦ってくれたらいいのに…』
この時マルルは、本気でそう思っていた。
◇◇◇
おばあちゃんを怒らせてしまったので
とりあえずマルルとデス・ピザエールは
静かで開けた森の中へと移動していた。
本当は採石場が良かったけれど、そんな都合の良いものはこの世界には存在していなかったからだ。
森への移動途中に何故かやたらと和やかムードとなってしまい、デス・ピザエールと一緒に落ちていたどんぐりを拾ってみたり、一緒にちょうちょを追いかけたりもしたけれどソレはソレ。
今はお互い、完全に戦闘モードである。
緊迫した空気の中、ジリジリと両者が間合いを詰めていく。
『フワリ!!』
静まり返ったこの場で先に動いたのはマルルの方だった。
ステッキを両手に構え、マルルがそう呪文を唱えた瞬間――――…
ブワッッ!!
デス・ピザエールに向かって強く鋭い風が
吹き荒れた!
マルルから生まれた風に頬を傷つけられてしまったデス・ピザエールは激昂し、再び奇声をあげながらマルルに襲いかかろうとした。
『ポワロン!』
…が、すぐさま次の呪文を唱えたマルルからは激しい紅蓮の炎が解き放たれ、それをまともにくらったデスピザエールは遠くへと吹きとばされてしまった。
それらの魔法はすべて、先程風を使ってカーテンを開けた時よりも、コンロに火をつけた時よりも、同じ呪文のはずなのに明らかに魔法の威力が増大しているのが分かった。
「…すごい…」
あまりの強力な魔法の力に、両手でステッキを構えたままのマルルは驚きを隠せずにいた。
「それは伝説の魔法少女のステッキ…
魔力を増大させ、そしてより強力な魔法を
生み出す事が出来る魔法の
「もっと…強力な…力…。」
おばあちゃんの言葉に、思わず固唾をのむマルル。
「そうじゃマルル!今こそ魔法少女に変身するのじゃ!」
おばあちゃんのその言葉に、マルルは思いのままに手にしたステッキを振り回した。
それはまるで花が舞っているかのように可憐で、そして天使が踊っているかのように軽やかだった。
マルルのステップに合わせて、ステッキの元へと柔らかな光が集まり出し…
そしてステッキの中央に
赤いジュエルから生まれたピンクの可愛らしい衣装は、 一瞬フワリと宙に浮いたかと思うと、そのままパサリと地面に落ちた。
そよそよとそよぐ風に吹かれて、ヒラヒラと静かにはためきはじめる魔法少女の衣装…。
思わず静まり返ったその場の空気を打ち砕いたのは、おばあちゃんから発せられた何とも衝撃的な一言だった。
「さぁ!マルル!
今こそソイツに着替えるんじゃ!!」
「えぇッッ!?
ここまで来てまさかのアナログ――…!?」
静かな森の中、マルルのそんなツッコミだけがこだました。
~次回、魔法少女まじかる・ぱいんっ!
『変身!魔法少女』
にご期待ください!
今宵も、まじかる・まじかるンっっ
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