第31話「次にターゲットは?(ぬめぬめしてるモノですね)」

 ゆんと別れてから、家路に急ぐ中、由紀は釣り用ズボンのポケットからスマホを取り出した。

 とある人物宛にメールを送る。歩きスマホは遠慮したいところなのだけど、今送ってないと忘れてしまいそうだったから。

「ちゃんと送ったよっと、これで報告終わり」

 由紀はホームボタン押すと、スマホを閉じてぎゅっと手で握る。程なくしてスマホのバイブ音が手に伝わってくる。

「もう返信きた。流石は早いね」

 そのとある人物、悠からの返信だった。

『今日はありがとうね。由紀ちゃん、どうだった?喜んでた?』

『うん、喜んでたよ。また釣り行こうって』

『そっか、今度は3人で行きたいね』

『春先のメバルも終わったし、今度何か考えないと』

『うん。そうだね。それとお父さんが、ありがとうって言ってたよ。助かったって。また頼むかもって言ってた』

『こっちこそありがとう。楽しかったし、イカの道具も買わなくちゃいけないから、またバイトあったら言ってね』

『おっけー。それじゃまた聞いてみるよ』


 由紀は悠と簡単なメール会話をしながら、家路に着いた。


__________________________________________



 ちゅんちゅんと鳥の鳴き声が窓から聞こえてくる。由紀は目をゆっくりと開けて、息を吐いた。

「寒い!もう春なのに」

 再び、顔から布団の中に入ると、目をゆっくりと閉じて……。

 バサッと布団を剥がされた。


「な、何するのよ〜。寒いじゃないって母さん」

「あんた、今日も学校でしょ。さっさと起きなさい!」

「まだ寝たいよー。布団が私を呼んでいるんだよ〜」

 由紀は布団にしがみつく。母は「はー」と息を吐き、

「何馬鹿なこと言ってんの、この子は、朝ごはん出来てるからさっさと起きなさい」

 母は由紀を置いて、部屋から出て行った。


「ううぅ……、まだ目覚めたくないよ。はー。行くかご飯でも食べていこう」

 由紀は母親が居なくなったのを確認してから、深いため息を吐いた。


 由紀はご飯を食べて、制服を着たのち、家を出た。

 太陽が出てきたのか、心なしか暖かくも感じてくる。

 朝の眩しさで目を閉じながら、あくびをしていると後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。


「由紀ちゃーん!おはよーーー!」

 後ろから手を振りながら、今日もニコニコ笑顔のゆんが声を掛けてきた。

 由紀はニコリと微笑み、手を軽くあげて挨拶する。

「おはよう。ゆん。昨日のメバル美味しかった?」

「うん。美味しかったよ。煮付けにしてみたよ。LINEに写真送ったんだけど、見てくれた?」

 由紀はゆんの言葉にスマホのLINEアプリをあけた。

「あ、本当だ。うーん。朝から食欲が湧きそうな写メだね。これは飯テロだよ。夜見ないで良かったよ」

 由紀はよだれを口から出しながら、少しホッとした気持ちになった。

 良かった。こんなの深夜に見てたら、欲望に負けてたわ。


 ゆんは左手を軽く一回縦に振りながら、ニコリと、

「飯テロって言い過ぎだよ。だけど、新鮮な魚だけあって美味しかったな。また食べたいね」

「それじゃもっと釣っていかないとね。もうメバルは釣れないし、今度は何釣ろうか?」

「うーん。何が居るんだろう。悠ちゃんに聞いてみた方が良いのかな?」

 ゆんは「うーん」と悩み顔になりながら、腕組みをした。

 由紀が思い出したように、目を見開く。

「そうだアナゴなんてどうかな?」

 由紀は名案だと思うようにゆんに問いかけた。

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