第25話「ようやく休憩だぁああああ(夜行性だそうです)」
あれから何時間経ったんだろうか。
本当に単純作業だった。
悠はダンボールの中に入っている無数の商品を仕分けしながら、値段別に別けていく。由紀とゆんは、商品ごとに値段を貼るだけ。
それだけなのだけど、同じ作業をしているとなんだか眠くなってくる。
悠は「奥の部屋から商品取ってくるね」とだけ言い残して奥の部屋に向かった。
由紀は顔をウトウトとしつつ、油断をしてしまったらしい。つい大あくびをしてしまった。
ゆんは「ぷぷぷ」と由紀に軽く笑みを浮かべた。
「ふーん。由紀ちゃんって眠いんだ。まあ単純な作業だし分からないことでもないけどね」
由紀は顔をブルブルと横に揺らした。
「休憩って無いのかな。眠気がヤバい」
「本当に眠たそうだね。まだ十分ぐらいしか経ってないよ……」
「マジか、通りで悠が入っていた部屋をちら見しても反応が無いわけだ」
「そんな事してたんだ。まあ慣れないとしんどいよね。由紀ちゃん。だったら悠ちゃんもいないし少し立ったり動いたりしたら眠気もマシになるかも」
ゆんのアドバイスを聞き、由紀は立ち上がった。体操混じりの屈伸運動を繰り返しながら眠気を抑える。
悠が大きなダンボールを持って帰ってきた。屈伸運動をしている由紀をちらりと見ながら、ダンボールを机に置くと悠は元いた場所に座る。
「由紀ちゃん、眠たいようだね。単純な作業だとやっぱり飽きちゃうよね。眠くもなるし。あと少ししたら休憩しようね」
悠は由紀に微笑みかける。由紀は「うん」と言いながら、机に座り作業に向かった。
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「由紀ちゃん、ゆんちゃん!それじゃ休憩しよう。あっちにお菓子とか買ってあるから好きなの食べてよ」
悠の声と共に、パンパンと手を叩く音が聞こえてくる。
由紀は時間を見たら、既に悠が「もう少しで休憩しよう」と言ってから、二時間ぐらいが経っていた。
やはり集中していたら時間が経つのが早い。そこは釣りと一緒なのだろうか。コツさえ掴めたら意外と楽しいな、これって。
新たな特技にシール貼りを加えたところで、由紀は椅子から立ち上がると「うーん」と背伸びをする。
「ゆん、早く休憩行こうよ。お菓子あるんだって」
「ちょっと待ってよ。後三個ほどやればこのケース終わるから、ちょっと待って」
テキパキとシールを貼っていき、「よし終わったよ」と言いながら、ゆんも席を立った。
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「意外とゆんって器用だね。もう段ボールケース五個も終わらしたんだ。山ほどあったのにね」
悠はゆんを褒めると、ゆんは「えへへ」とばかりに顔を赤らめながら照れていた。
「私も頑張ったんだからね。悠!」
プイッと顔を背けながら、由紀は悠に言う。
休憩という人参をぶら下げて頑張った評価を見てほしい。
「そうだね。頑張った。由紀ちゃんも頑張ってたよ」
悠はニコリと由紀に微笑みかける。由紀は「ふふん」と鼻高だかにドヤ顔する。
やはり褒められると嬉しいものだ。もう少し頑張るか。初めよりもやる気だけが少しだけ増えた気がした。
褒められた由紀はふとゆんの方に向くと、ゆんの机には大量のお菓子の袋が置いてあった。
一口サイズのチョコ、クッキーの袋からスナック菓子の袋まで多数の袋が乱雑に。
「ゆん、これ、もしかしなくても、ゆんが全部食べたの?」
由紀は袋を指差すと、ゆんは口周りにお菓子のカスをつけながら、にこやかな笑みを見せた。
「うん。このクッキー美味しいよ。ああ、止まらないよ〜。これも悠ちゃんが美味しいクッキーを出すのがいけないんだからね」
いまだパクパクと食べるゆんを悠がさらにお菓子をゆんの手元に置く。
「どんどん食べてよ。ゆんは頑張ったんだからね。休憩後も頑張ってもらわないと」
彼女は太らすタイプのようだ。
「食べていいの?いっただきます!」
頬を膨らましながら、まるでリスのように食べ物を口に入れていく。
「ゆん、これ以上はやめときなよ。体重が重くなるよ」
「へーきへーき。夜行性だから。今から作業もあるし、大丈夫!」
由紀の注意を聞かずに、その場にあった市販の板チョコやクッキー類をペロリと平らげた。
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