第24話「初バイトです(なんだかヤル気みたいです)」
日曜日、太陽が出ている時間帯。もうすでに少しばかり暖かい、春の陽気を感じる。
今、悠の家、宮内釣具店の駐車場の付近に着いて、駐車場にゆんの姿が見えた。
「待ってたよ。由紀ちゃん!」
「ゆん、相変わらず早いね。何時に来たのさ?」
「うーん?一時間前かな?」
「早すぎる!」
ゆんは首を傾けて、頭に?マークをつけながら言う。
「当たり前じゃないの。だけど、由紀ちゃんが時間通りに来たことに私はびっくりしているよ」
「……ありがとう。べ、別に当たり前のことだから喜んでもないんだからね」
由紀はプイと顔を背け、耳を赤くした。
ゆんはプププと笑いながら、
「由紀ちゃんってわかりやすいね。色々と」
口に手を当てて由紀を見ていた。
なんだか納得はいかないけれど、ゆんに言われるからにはわかりやすいのだろう。由紀は髪をぽりぽりと掻く。うーん。表情に出ていたのだろうか?
ただこの前の件以降、ゆんの用事には遅刻はしないように決めたんだ。
ゆんのために早めに起きたし、早めにご飯も食べたし。段取りも早めに……。驚かれたことはびっくりだったけどね。
由紀はゆんに聞こえないようにボソリと呟く。
「私は決めたことには絶対に守るんだからね」
由紀はゆんを見てニコリと笑った。ゆんも同じように笑顔を返してくれた。
「おーい。二人とも待った?」
聞き慣れた声がした。悠の声だ。
「今日はありがとうね。さあ、さあ、中に入ってよ」
店内に入るように促す悠。そう言っているので、由紀とゆんはそれに従う。
「今日はどんな事やればいいの?最初だし戦力にはならないと思うけど」
由紀が悠に聞く。悠は「大丈夫だよ。簡単簡単」と言いながら、何も教えてくれない。
連れてこられたのは商品が置いてある店内を過ぎて、奥の部屋に入った作業場だった。
そこには悠のお父さんが商品に値札を貼りながら黙々と作業していた。
「パ……、お父さん、来てくれたよ。この前の同級生由紀とゆんだよ」
悠のお父さんは椅子から立ち上がり、由紀とゆんの顔を見る。
「おはよう!よく来たね。ゆんちゃんは初めましてかな。荷物は隅のところに置いてくれれば良いからね」
悠のお父さんはニコリと微笑むと悠の方向に顔を向ける。
「それじゃ悠ちゃん、詳しい説明はお願いね」
せかせかと作業していた商品を机に置き、悠のお父さんは店内に入っていった。
「まるで台風みたいだね。相変わらず店主は忙しいみたいだね」
由紀は頭を掻きながら、「ははは」と苦笑いしながら言った。
悠は「まあまあ」と促すように、
「メーカーさんが商品を安く売ってくれるって言うものだから仕入れすぎたんだって。だから今回セールって事で売るって言ってたよ」
悠の話を「ふーん」と聞きながら、由紀とゆんは部屋の隅に荷物を置く。
悠は続けて、
「だから今回は商品の値札貼りをやって欲しいんだ。量は多いけど、私も手伝うからさ」
「貼るだけならば簡単そうだ。げ、本当に量があるね。針やワームなどの細かいものまで」
由紀は「はー」とため息を吐きながら、商品を触りながら言う。
ゆんはすでに値札貼りをペタペタと貼っている。
悠は目を見開き、驚いた。
「おー。凄いね。ゆんちゃん、丁寧っていうか、細かいところまで他とずれてないね」
ゆんは悠に褒められて「えへへ」とニヤニヤ顔だ。
「いつも料理で細かいところまで魚の骨を取ったりするからなのかな?だけど、褒められると照れるね〜」
悠は由紀にも「さあさあ」と促しながら、椅子に座らせた。
「さあ二人とも頑張ってくれたら報酬ははずむらしいからね。由紀ちゃん、ゆんちゃん頑張って。分からないところがあればすぐ私に聞いてね」
悠も椅子に座ると慣れた手つきで作業を進めていく。
由紀はボソリと「さて頑張りますか」と呟いた。商品を手に取ると悠とゆんと同じように慣れない手つきで作業を進めていった。
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