第26話「バイト後、釣り行こうかな(気分転換に良いですね)」
休憩が終わり、作業が開始された。悠とゆんは黙々と進めていく中、由紀は「うーん」と背伸びをする。
「首が凝ってきた。やっぱり慣れない事はするもんじゃないわね」
「まあ慣れたら楽しいよ」
ゆんはニコリと笑いながら言ってくる。やはり人間には得意不得意があるのだろうか。
「釣りだったら喜んでするんだけどな」
由紀は「はー」とため息を漏らした。
時計がカチカチと進む中、もう既に15時になっていた。
「もう時間だね。ありがとうね。二人とも助かったよ」
悠はパチンと手を叩き、由紀とゆんに言った。
「もうこんな時間なの?集中してたら早いね」
ゆんは目を見開きながら言う。由紀は軽い笑みを浮かべながら、ゆんを見る。お互い時間が経つのが早かったみたいだ。
悠は「ちょっと待ってて」と二人に告げると、奥の部屋に再び入っていく。すぐに奥の部屋から戻ってくると、二つの封筒を持っていた。
悠は手に持っていた封筒を由紀とゆんに手渡した。そう言えばいくらくれるのか聞いてなかったけど、いくらだろう。少なかったら抗議してやろう。
由紀は封筒の中身を確認していると、ゆんは悠にぺこりと頭を下げる。
「今日はありがとうね。楽しかったよ。悠ちゃん、またバイトがあれば誘ってよ」
ゆんはニコリと悠に笑みを浮かべていた。
「まさか喜ばれるとは思わなかったよ。そうね。それじゃ頼める時にはお願いね」
悠もぺこりと頭を下げながら言った。
「やったわ!六千円も入ってたわ」
由紀は封筒から二枚の札束を出し、上に掲げた。現金が自分のモノになったことで次第に口がにやけてしまう。
それを身近で見ていた悠とゆんは「ははは」と笑っていた。
初バイトが終わってからの夕焼け時。由紀はもう家に帰っていた。
かーかーとカラスの声が聞こえながらも、もうすぐメバルの時期が終わりを察するように暖かい風が外で吹いていた。
由紀は二階の自室にある勉強机の椅子に座っている。
「ああ、今日は疲れたな。でもゆん達と一緒にしたバイト、楽しかったな」
そんなバイトの感想をボソリと、由紀以外誰もいない自室に独り言を言う。
由紀は顔の頬を勉強机に置くと、左頬から冷んやりとする机の温度が伝わってくる。
由紀は「ひんやりする……」と呟きながらも、じっとある方向に目がいってしまう。目に写ってるのは、いつもの道具、竿が置いてあるスペースだった。
「そうだ、今日軽くご飯食べたら行こうかな。ゆんも誘ってみてもいいかも。どうせ暇してるだろうし」
由紀は左頬を机に押し付けながらも、右手でポケットに入っているスマホを取り出す。
「Siri《しり》、ラインを開いて」
スマホにそう呟くと、ライン画面がスマホ上に表示された。ゆんにお誘いメールを送ってから数分後、返事が来た。
『ごめん、今日は無理!親と一緒にご飯行くことに……、また誘ってよ。由紀ちゃん!』
「マジか……」
由紀は思ってもみなかったゆんの返事に、由紀の口からため息が出る。『了解』とだけ返信をしてから、スマホを顔の目の前に置いた。
「うーん。どうしよう。一人で行ってもいいんだけど、今日は誰かと一緒に行きたい気分だしな」
相変わらず、左頬を机に置きながら、考え込む。
「よし、悠にも聞いてみるか。忙しいと思うけど、来てくれるかな?もしかするとまだ接客の仕事中かもしれないけど」
由紀は期待はしてないけれど、悠のラインにもメールを送る。意外にもすぐに既読が付き、返事はすぐに来た。ゆんの返信よりも早く。
『由紀ちゃん!元気だね。いいよ。どこ集合?』
「マジで!」
由紀は机から顔を上げると、由紀のスマホに送られてきた悠のメールを簡単に返す。
『わかった!それじゃファミマで!』
『おっけー』
その返事が返ってきたのもすぐの事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます