第5話「どうせ暇なんでしょ?」
「おはよう。由紀ちゃん」
由紀はゆんの背中に背負ってる竿ケースを見た。
「ゆん、学校帰りにいくんだ」
ゆんはニコリと笑みを見せて、
「うん。昨日買った仕掛けを試すんだ。昨日からワクワクして眠れなかったし」
「ふーん。それじゃ私も帰ってから行こうかな〜」
由紀が両手で後ろの後頭部をおさえながら、言った。
「じゃあ行こうよ。今夜!由紀ちゃん、どうせ暇なんでしょ」
「まあ、暇っちゃ暇だけど。……、そう言われると腹が立つなぁ〜」
由紀が頭を右手でかきながら、「ジトー」っていう目でゆんを見る。
ゆんは由紀の腕に手を置き、にぎにぎしながら、笑みを浮かべる。
「冗談だよ〜。由紀ちゃん、そんなにキレないでよ〜」
「ふーんだ」
ゆんは由紀の後ろに回り、肩を揉む。
「まあまあ、ピンクのワームもう1個あげるから」
「もう、仕方ないな〜」
にやける笑顔になる由紀、ゆんは口を押さえながら、
「ちょろい女だぜ」
「うん?なんか言った?ちょろいとか聞こえたんだけど」
「な、なんでもありません。気にしないで」
慌てるように、ゆんは手を小さく振り、由紀をなだめた。
_______
学校の最後の予鈴が鳴る。
ゆんが机を大きく叩いた。教室中にバンと言う音が響きわたる。
教室にいる30人の目線は、ゆんの顔に向かった。
「……、ごめんなさい。なんでもないです」
ゆんが顔を真っ赤にしながら、下をうつむいた。
ざわざわと下校が始まって、部活行く生徒組と帰宅部組と別れていった。
当然、私たちは帰宅部組だ。
「ゆん、さっきのはなんなの?びっくりしたんだけど」
「ちょっとテンション上がっちゃって。もうすぐ海に行けるって思ったら気分が舞い上がっちゃった」
「ふーん。分からんことではないけど」
由紀は両手を頭に置きながら、下唇を出しながら言った。
ゆんはさっきの事を思い出したのか、耳まで真っ赤になっている。口周りもむにゃむにゃとさせている。
「暗くなってから集合だね。今日の20時には満潮になるみたいだから、今日こそ大物、いや、1匹は釣ろうね。ゆん」
由紀は片目をピクピクとつむりながら、ウインクをする。
「……、由紀ちゃん、ウインク出来てないね。だけど、大物もだけど、初の魚釣るんだ!! 」
ゆんは両手の拳を上にかかげる。由紀にニコリと笑みを見せた。
「それじゃ、前回のファミマ集合しようか。今回はちゃんと準備してくるんだぞ。時間は19時ぐらいかな」
「わかったよ。由紀ちゃんこそ遅れないでね。時間指定してくるわりに、遅刻しちゃダメだよ」
「遅刻したら、ファミチキ奢ってあげるよ。大丈夫ちゃんと来るから! 」
「本当だね。わかった! それじゃファミマで会おうね。由紀ちゃん」
由紀はゆんに手を振りながら、ゆんと別れた。
その時、ゆんも手を振ってくれた。
電車から降りると、自宅への道のりを早足で歩く。
次第に足取りが軽くなってくる。拳をぎゅっと由紀は握った。
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